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【#15 冷や汗】『サターンリターン』、と食べることについて。

食事のときだけは許されているつもりなのかもしれない。
何に許されることを望んでいるのか。
誰かにLINEを返すことに、エクセル表を仕上げることに。

「あ、すいません、飯食ってました、、、」
と添えれば大目に見てくれることをいつのまにか覚えた。

消費カロリーをゆうに超える摂取カロリー。
それは、日常のなかの言い訳の数。

『サターンリターン』。
鳥飼茜の最新作の単行本が発売された。
物語は、ある男の自殺からはじまる。
それは主人公の女性にとっては決定的な”喪失”であった。
彼の死のまわりを巡ることで主人公は自身の”成熟"(出産や、作家としての自己実現)を見つめ直そうとする。

「作品における食事を描くシーンの重要性」たるものは(主に坂元裕二ドラマをめぐって)主張されてきた。

作中、主人公はまるで”喪失”を埋めあわせるかのように料理をつくり食べる。
その食べ方は主人公の心を生々しいほどに映す。

夫のためにではなく彼女自身のために食事するときは表情が生きる。
天むすを一口で頬張るし、お好み焼きの切り方に関して揚々と語る。

食べている表情は雄弁だ。
そういえば最近買ったTシャツも、

食べてた。
ステラ・ドネリーとジャーナルスタンダードのコラボT シャツ。

そういえば最近惹かれたプロモーションビデオも、

食べてた。
BiSH アユニDソロプロジェクトのプロモーションビデオ。

できれば許して欲しい。食べているときくらい。
解放されたい。自分に正直にいたい。
食べたい時に食べたいものを食べていたい。

でも、冷や汗かいてでも食事しなければいけないときがある、きっと。
『サターンリターン』の話。
未成熟な夫(セックスしても手コキでイキたがる)との食事で主人公の表情は冷たかった。

作中で、ある女性は言う

専業主婦って羨ましいだけだったけど結構強靭だね〜 で、主婦がやってそなこと真似しようと思い〜 とりあえず手作りのジャムやってみたじゃん。 ぐつぐつ煮込んでるうちに段々、時、忘れるっていうか…狂気?主婦的ハイに陥る的なね?あー私…明日も明後日もこうしてジャム煮続ける毎日なら、それでももういいかなーって。



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