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iCAREのCEO室って何をやっているの? [前編]〜健康データの専門家として〜

前書き

『CEO室』って何をやる部署なのでしょうか。

以前のnoteで社内の他部門から「(CEO室は)何をやっているかわからない」と思われている旨を書きましたが、実際のところ、自分たちでも「何をやる部署か」と聞かれたときに、解像度を上げて言語化できない……というのが本音です。

そんな、チームの理想像が具体化しにくい部署ランキング一位(私調べ)のCEO室について、今回は『FRC』の視点で捉え直してみよう、というのが今回のnoteです。

FRC(ファイブリングス・チャレンジ)とは

こちらのリリースで社外にも公開されていますが、FRC(ファイブリングス・チャレンジ)とは、iCAREの制度のひとつです。

目的と概要
「ファイブリングス・チャレンジ」はチームと事業が持続的に成長するために、週2時間を使って社員それぞれが主体性を持って「働くひとの健康創り」のための企画を立案し、チャレンジできる、iCAREの新しい人事制度です。


方針・ルール
・Carelyファイブリングスに規定された5つのリングから、部署やチームごとに課題となっているものや実現したいものを選択(複数選択あり)
・チーム単位で取り組み、就業時間のうち週2時間を使って企画立案(期間は自由設定)
・毎週のチームミーティングで成果に対するウィンセッションを実施
・人事制度として実施するが、健康創りの内容によって社員が不公平な扱いを受けることはない

引用元:https://www.icare.jpn.com/news/20220208/
iCARE、新たな人事制度を開始。
週2時間を“働くひとの健康創り”に使う
「ファイブリングス・チャレンジ」

上記に登場する「Carelyファイブリングス」とは、iCAREが提唱するカンパニーケアのフレームワークです。解説は以下の記事を参照ください。

FRCとは「健康と事業成長をリンクさせるフレームワークに沿う形で、それぞれの部署やチームの課題にチャレンジし、チームの成長と成果をもたらすための活動」となります。

前置きが長くなりましたが、ここから本題です。ここからはインタビュー形式でお送りしていきます。


iCAREのCEO室は『健康データを活用し、価値を創出する組織』

──じゃあ早速なんですけれども、今日はCEO室のFRC活動について、3Q(2〜4月)にやってこられた内容を聞かせていただきたいと思います。
まず、組織の中におけるCEO室の役割と、各々がどんなことをやってらっしゃるのかを、自己紹介がてら教えてください。

小川「FRCで取り組んでる課題は……そこがすごく説明しづらいところがCEO室の課題である、というところなんですけど。」

──CEO室は何かってことですか?

小川「『CEO室とは』、かなり本質的にすごく大事なところ。CEO室は、いわゆる社長室、社長直下の部隊。他の会社だと社長室や社長付って、どういうイメージなんですかね。」

── 例えば、経営企画みたいな?

小川「私個人と始まった経緯、経緯含めた立ち位置はそうなんですが。CEO室は、緊急ではないんだけれども、重要な仕事というものを担う、または支援する、という始まりがあって。iCAREにとって『緊急ではないが、とてつもなく重要な仕事』というのが『健康データを取り扱って、何らかのお客さんにとって役立つものでもあり、世の中にとっても役立つものを出す』ということで。それがスタートですね。キーワードは『健康データの活用』かな。」

──今ちょっとチラッと調べたら、『社長室とは、社長業に集中し、経営戦略方針の策定を行う場』と。

小川「たぶんそんな感じで『社長が社長業に集中するための組織』みたいなイメージなんですけど、僕らは、そんなことは一切考えてないです。」(笑)

──なるほど。皆さんは何かしら『健康データの活用』の業務に従事されてると思うんですけど、3人で特徴はあるんですか?

このインタビューが実施された時点のCEO室メンバーは3名です。

小川:マーケティング領域のスペシャリスト
福本:データ分析領域のスペシャリスト
若松:データ分析領域のスペシャリスト

小川「まず、僕、小川の方は、直接データそのものを扱うというスペシャリティというよりは、そのデータをお客さんの中でどのように活用してもらえればいいのか、だったりとか。
あるいは、そもそもどんなデータを見たらいいかわからないっていう人たちが、世の中に多くいらっしゃる。特に健康データっていうのは、今まで取り扱ってこなかった分野、取り扱いづらかった分野なので、『いやいや、実は健康データにはこういった活用策があるんですよ』とか『あなたの会社にとってはこれぐらい重要なものなんですよ』っていうことをマーケティングの観点から伝える、知ってもらう、という意味でマーケティングのプロフェッショナルとしてそこに固まっている。それが小川です。実際にそのデータというものをどう取り扱っていこうとか、実務的な話のところにすると、ここ2人。」

福本「 自分というかデータ分析のチームとしてはってことになるかもしれないですけど──
まず健在化しているニーズというか、『こういうレポートを作ってくれ』『こういうデータ出してくれ』という要望・依頼に対する受け皿の役割というのが半分あって、残りの半分はまだ活用方法自体も分かってないようなデータを色々触って、そこから新しい価値を生み出せないかと検証したり、実際に(顧客へ分析結果を)出してみてテストしたり、実装をつなげたりっていうところを目指している……のかなとは思ってますね。」

──福本さん自身のスペシャリティというか強いところってことです?

福本「そうですね。逆に言うと医学的なこととかっていうのは詳しくなくて、どちらかというと、他の領域での発想とかを持ち込む──例えば少しマーケティング寄りのデータ分析の仕方などを医学的なデータ分析の仕方と少しミックスさせて、新しい視点を生み出せたらいいのかなというふうには思ってやってますね。」

──今2つ業務の内容を教えていただきましたが、前者の”要望・依頼”というのは、お客様から直接なのか、社内のものなのか、どちらがメインですか?

福本「割合としては圧倒的に社内ではあるんですね。社内では間接的に、CSから挙がったその要望を僕らが実際に分析するということが多いですけど、実際にお客様と直接的にやりとりさせていただく機会も、1クオーターに2〜3案件ぐらいあるって感じです。CEO室全体では6件ぐらいですね。」

──続いて若松さんです。

若松「僕がやってるのは何だろう……。無理やりまとめようとすると『データに関わる何でも屋』って言い回しになると思うんですけど。本当に、何をやってるんだっけ……。自分でもパッと一言で言えないぐらいに色々なことをやっています。どちらかというと、(分析そのものより)エンジニアリング寄りの業務や、データ整備などの方が体感として多い感じがしますね。ほかにはデータ分析まわりの業務フローの整理とか、業務で使うツールの整備とか……。あとは、魔神をやってるアレ(※)とか。」

──若松さんの業務全体では、開発のPdMに近い役割なのかな。

若松「PdMとは違うんですよ。SREの方が近いような気がします。『データに関わる悩みごとを解決する』という立ち回りをしてる感じです。」

※「〇〇魔神」とは、なんらかのスキルレベルが高く、ほかの社員を支援できる水準にあることを示す二つ名。若松は『スプシ魔神』を自称し、Googleスプレッドシートを利用する際の困りごとを解決するよう支援している。詳しくは拙著note『中二病じみた二つ名を名乗ったら社内でのプレゼンスが挙がった』を参照されたい。

CEO室のFRC活動について

──なるほど。では、そんな魔神の若松さんがリーダーを務めている、CEO室のFRCについて聞いていきたいと思います。主な活動は2つであると事前に聞いているのですが、それらをやると決めるに至った経緯や、実際に何をやったかについてを教えてください。

若松「やると決めたことのひとつは『勝手にリサーチ、勝手に解決隊』という名前の活動です。色々(CEO室の)課題の洗い出しをやって、みんなで何の活動をしようかと話していたときに、小川さんから出たアイデアです。」

──ちなみに前Qは何をやってたんですか?

若松「今、勉強会を隔週ぐらいでやってますけど、あれは前QからFRCとしてやってたんですよ。CEO室のFRCって大きく2つの活動で、その勉強会と『勝手にリサーチ、勝手に解決隊』という活動。

──勉強会のきっかけは、CEO室が何をやる部署かっていうのを、社内にアピールするというか、認知を上げるため?

小川「実は勉強会を(社内の他部門に)見せ出したのは途中からなんですよ。CEO室の中でやり始めて、途中から別にこれもみんなに見てもらっていいんじゃないっていう。勉強会を始めた最初のきっかけは、多分福本さんが言い始めたところかな。」

福本「最初は若松さんが入社された時に、どういうことをやりたいですかみたいな話をしてて、いろいろ勉強とか新しいことを学ぶことが好きだったみたいな話をされていて、勉強会やりましょうかみたいな話になったんじゃないかと思ってます。」

小川「単なる勉強会というよりは、背景はもう少し長いの。CEO室内でいろんなことを話し合う機会、そういう貴重な場にもなってるのかなって気はします。」

──コミュニケーション施策でもあり、ナレッジの共有でもあり。

健康データの専門家として

小川「健康データというものを扱う、一番専門的で先進的で深掘りできるチームが僕たち。ただ、課題感としてあったのが『医学・医療、産業保健・公衆衛生という分野に関しての専門家って山田洋太しかいません』。だからCEOしかいないです。僕たち自身はそこについて特別なにか知ってるわけじゃない、バックグラウンドがあるわけではない。そういうときに、もちろんそれは知るべきだよねっていうところがあって、データ的な観点から、統計的な観点から、マーケティング的な観点から、産業保健のっていうもの。
例えば具体的に言うと、ストレスチェックの質問票ってどういうふうに作られたのか。どういう経緯を辿って今の質問票に至ってるのかを、知ってるか知らないか。その話を直接言わないにしても、お客さんにデータを、「今回ストレスチェックを分析したレポートとして、こういう結果が分かりましたよ」って解説するときには、深みが全然変わってくる。説得力が全然変わってくる。っていうところがまさにCEO室が存在してる意味だろう──という意味で、この勉強会ってずっと続いてて。
だったら、その結果を見せるだけじゃなくて、学んでる様子そのものをみんなに見てもらった方が、専門性がより伝わるよねっていう意味合いもあって、途中から公開しました。」

──個々が持ってた自分の専門性をシェアするじゃなくて、ちゃんと今のiCAREのCEO室というか、山田洋太の専門性をみんなが、自分の専門性を持ちながら勉強して獲得していくっていう、自分も勉強するっていう勉強会だったんですね。

小川「そういうことをやってることを言ったら、山田洋太も知らないことをやってる。実は、一番楽しみにしてるのは洋太さんなの。参加するだけで発表はしないけど、一番楽しみにしてる。全ての予定を解除して、この予定に合わせて。」

──面白いですね。準備には結構時間がかかってるんですか?

若松「いや、まちまちな気がします。でも、当番で分担回ってくるのが月1回くらいだからと思って、多少時間がかかっても気にしていないですね。準備に8時間くらいかかっちゃったときもあったかな。」

小川「発表30分に対して、僕もそれぐらいかな。何のテーマを話すかが決まった後で、関連する論文を探してとか含めて。自分なりに解釈して、ちょっと資料に残して……6時間はミニマムでかかってるか。8時間くらいかけてる気がする。」

──テーマは持ち寄りなんですか?

福本「一応コンテキストみたいなのは大切にしつつ、自分でやりたいことを選んでいます。前回の流れとかを無視して、毎回好きにテーマを選ぶと、もうしちゃかめっちゃかになってくる。関連性がなくなっちゃう。深めることができないというか、一応その関連性を持たせることで、できれば実際の仕事にも役立つようにしっかりと、役に立つレベルの知識を得たいっていうのがありますね。」

産業保健の"学びにくさ"

──対象を社員全員に広げてみて、何か反応ありました?

小川「まずね、思ったより参加者が多いことに僕たちがびっくりした。僕は思ったけど、どうすか。本当に2、3人くらいしか来ないと思ってた(笑)」
若松「その感覚に比べたら、確かに多いですね(笑)。実際の参加者は、平均すると十人前後かな。」
小川「本当に色々な部門から参加してるんですけど、営業はなかなか時間が合わないとかありますね。ほかには『僕なんかが参加していいんでしょうか』っていう意見も。」

──そんな謙虚なこと言う人いるんだ。

小川「言ってくるので『おもてなしはしないけど、参加していいよ』って言ってる(笑)」
福本「みんな勉強したいっていう思いは、実はあるのかもしれないですね。」
小川「いや、ありますよ。ある程度専門性が意味を成す業界であって、知らないのは(業務を行う上で困るし)。この勉強会を始めて、僕なりに『やっぱりな』って思ったのが『書籍で情報を得られない』ことなんですよ。」

──産業保健領域の情報が?

小川「ある話を深掘りしてみたいなと思ったときに、そのぴったりのテーマに関する書籍が見つからなかったり、すごく浅い内容止まりだったり。で、参考文献や論文まで入り込んで探さないと、わからない。」

福本「POS(※)の話とか?」

小川「POSはもうね、明らかだよね。書籍化なんてされてなくて、(自分たちが調べた成果について)書籍化を狙った方がいいんじゃないかっていうぐらい。」
若松「書籍で調べようとしたら、洋書しかない気がするんですよね。」
小川「ないと思うんだよね。」

POSとは「知覚された組織的支援(Perceived Organizational Support)」のこと。Eisenberger, Hungtington, Hutchison ほか(1986)により提唱された概念で「組織による従業員への支援について、彼ら・彼女らが抱く全般的な信念」とされる。(参考: Japanese Journal of Administrative Science Volume 27, No.1, 2014, 13-34, Yuki.Sato)

同じものを目指すなかでセレンディピティが生まれる

──そもそもこれを知りたいなって思ったのは、業務の中で今こういうのが必要とされてるということでしょうか?

小川「そこは面白い話があって。POSそのものの話を出す前に、まず福本さんが……『健康報酬』でしたっけ?」

福本「『健康報酬』と言ってました。独自概念で、健康報酬という考え方が産業保健では指標として使えるんじゃないかと。安定報酬とか尊重報酬とかいろいろあると思うんですけど、それの健康版、産業保健サービス版っていうかな。要するに、(ある企業のなかで)働くことでそういったメリットをいろいろ表現することができたら、その企業の産業保健サービスの充実度を測ることができる。企業ではたらく保健師の方たちにとっても、自分たちの仕事の一つのものさしにもなるし、企業にとっては離職防止(のための指標)になるかなって考えてたところですね。そういう話をしてたら、洋太さんが『それって小川さんが言ってたPOSじゃん』っていうふうに言われて。」

小川「福本さんと同じタイミングで、僕がメンタルヘルスとかワークエンゲージメントとかの関係性の話をしてたときに『健康経営文脈の中で、その話ってどうなってんの?』と聞かれて。今は、生産性の文脈でワークエンゲージメントってよく語られるんだけど、そっちじゃなくて、ウェルビーイング的な視点から取り上げた指標として、POSというものが、『知覚された組織的支援』というものが話に挙がってますよ、意外に前から研究はあるらしいですけどね。──っていう共有を(洋太さんに)したのと、タイミングがぴったり合っちゃって。

iCAREが考える健康経営というか、考え方の視点で、今まではやはり企業視点・管理者側視点で、管理者が従業員に何をするか・何を与えるかっていう考え方だったけど、そうじゃなくて。ウェルビーイング的な考え方なんですけど、従業員視点で会社から何かを得られているか。会社から支援してもらっていることによって、自分の健康が満たされている・ウェルビーイングになっているか、従業員視点でどう思っているか。そこがiCAREが今も大事にしてる考え方で、それを指標化できそうだねって話だったのが、勉強会の流れの中でも出てきて、じゃあちょっとそのPOSの話も勉強会で取り上げてみよう、と。どういう概念でどういうふうに計測するか、と福本さんの回で取り上げましたよね。」

POSに関する勉強会の資料よりスライドを抜粋した。引用元文献はJapanese Journal of Administrative Science Volume 27, No.1, 2014, 13-34 の図1および図2である。

小川「ある種のセレンディピティが出ていて、それを目指していたわけじゃないんだけど、健康データというものに僕たちは真剣に取り組むんだっていう──。でもまっっったく緊急じゃないんですよ。緊急じゃない。誰にも要請されてないし、独自企画だから。私たちの(目の前の)仕事そのものにも何にも関係ないのよ。なんだけど、企業が従業員の健康を作るということって、僕たちがずっと抱えてる一個大きな命題で「『企業が従業員の健康を作る』というのは、企業側にとってどういうメリットがあるのか」っていうのを出したい。だけど、今世の中的に言われてるのは、生産性が上がるとか、株価とかの企業価値が上がるとかって。これをやれば生産性が上がるんだよ。株価が上がるんだよ。でもそれで従業員が健康になるわけない、健康になろうと思うわけないよね。じゃあ、従業員視点で「うちの会社は従業員の健康に気を使ってくれてるな」とどれくらい実感してもらえているのか?みたいな話って必要だよね、と薄々感じてるのを共通認識にしてたから。こういう、偶然的に同じものを見ていた、と。それが世の中にすでに一種の研究として存在していたりした。でも、まだ書籍になってないレベルを深掘りしているし、そこからまた色々広がっていってる。──っていうのがこの勉強会で起きてる成果というか。」

──データを見ている人たちだからつながるのかもしれないですね。ならではだなと聞いてて思います。

福本「面白いことに、一番最初に若松さんが発表していただいた、サーベイの質問票の作り方(※)。信頼性とか妥当性とか。これが実はPOSをキャッチしたのともすごく関係している。」
(※筆者注:初回の勉強会で取り上げた『調査研究における質問紙の作成過程と適用上の諸問題』の内容を指している。)

小川「最初にこれを聞いてたから、その後の話も色々やりやすかったというか。」
福本「そうですね。一見だから、バラバラのテーマがつながってるようにつながってるっていうのがありますよね。」
小川「僕もこの若松さんが最初に聞いた質問紙検査の話とか、信頼性・妥当性っていうのがどういうものなのかっていうのを知らなかったら、他の取り上げてるテーマの話とかって読み解けなかった。点と点が点になって、そろそろ面積になりだそうとしてる。」


前編にあたる『健康データの勉強会』に関する記事はここまでです。
次回は後編として『勝手にリサーチ、勝手に解決隊』の内容をお届けします。


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