炒飯神太郎⑥

9世紀の日本がとても危険な場所です。平安の治世の最中というものの、文明がまた行きわたっいてない場所が多く、町から離れると、そこは野蛮の世界。追い剝ぎ、盗賊、サイコパス犯罪者、肉食獣、そして人ならざる物は常に旅人を狙っています。

おばあさんとおじいさんと別れを告げてから2時間後。炒飯神太郎は包囲されていました。

「よぉ赤い膚の兄ちゃん。大きい弁当2つ持ってどこへ急いでんだい?ウーバーイーツなのかい?」
「その弁当にうまいもんいっぱい詰まってんだろ?おれは鼻が利くんだ。1キロ離れたとこからうまそうな匂いがプンプンしてたぜ」
「ねぇ食いもん分けてくれよお兄ちゃんよぉ~兄弟たちが腹を空かせてるんだぜ~?頼むよぉ~?」
「大丈夫だって持ち逃げ一回ぐらいでUberは気づかないって」

平均年齢15歳。バッチだらけのみずぼらしい服。鎌や斧、ハンマー、脱穀棒などの工具で武装したの不良少年の集団です。実際にやり合ったら炒飯神太郎の相手ではありません。しかし炒飯神太郎は暴力手段を取りませんでした。

「御仁方。ここで会えたのも何らかの縁。どうせ食うなら、白米よりもっと旨いもんをご馳走しようではないか」
「あ?」
「なに言ってんよ?」
「白米より旨いもんがこの世にあるというのか?!」

困惑する少年たちの前で、炒飯神太郎は石を積み、薪を集めて臨時の調理場をセットしました。中華鍋にラードを入れて、卵、にんいく、葱を炒める。卵が半熟になったところ昨日炊いた米を投入。塩と胡椒。おたまで米の塊をほぐすように叩きながら炒める。

じゃぁぁぁ……じゃぁぁぁ……鍋の中で翻すチャーハンを、少年たちは涎を垂らしながら視線が釘付けになっていました。

「出来た。召しあがりなさいグッド・エプタイト
「わっ」
「めちゃくちゃいい匂い……」
「米を炒めるなんて、やちゃっていいのかよ!」
「おれァもう我慢できないッ!!」

「「「「いただきます!!!」」」」

少年たちは熱さに構わず、手で直接チャーハンを掴んで口に入れました。

「熱ッッ!旨ッッ!」
「口内粘膜が焼けるけど手が止まらないッ!」
「おやじ、おふくろ、ごめんよ!あやじとおふくろが一所懸命に耕している畑を、どうせ収穫は99.99%領主に取られるからやりがいがなくて手伝いもしないで悪友と山賊行為に走った俺が今知らない人の料理を奢られている……!しかもクソ旨い!ごめんよ!」
「むしゃむしゃ……おい!メシ中はしみったれた話禁止!そしてクソとか言うなメシ中によぉ~!」

肉塊に群がるサメのようにチャーハンを貪る少年たち。そして炒飯神太郎は次の行動をとりました。

(仕上がったな。久しぶりにだが……やってみるか)

炒飯神太郎はこめかみに指を当てて、精神を集中しました。

チャーネットに接続可能な生体端末を検知
Char-Fiテザリング起動
チャーネットに強制接続開始
チャーネットに強制接続成功
チャーハン神を称えよう

すると少年たちは一斉に動きが止まりました。目からハイライトが消えて、口周りに米粒がついたまま直立しました。

「よし。繋がった。では諸君には、今から私の犬になってもらう!」

いきなりとんでもないことを宣言する炒飯神太郎!そして少年たちは。

「押忍ッ!喜んで炒飯神太郎様の犬になりますッ!」
「何なりと命令してください炒飯神太郎様ッ!」
「ワンワンワンワン!」
「犬でも有能の犬だと証明してみせますッ!」

米も碌に口にしていなかった少年たちに未知の料理と同然のチャーハンを振舞い、その美味しさに気を取られてして心の警戒が下がった隙にチャーネットを強制接続して己の僕にする。おばあさんの時はおばあさんが地球上TOP50に入る強者なので不発に終わったが、不良相手なら造作もない。炒飯神太郎の恐るべき精神コントロールプロセスである!

(続く)

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