アボカドのツナマヨ焼き
事情はこうだ。数日前、支配者宛に宅配便が届いた。
中身は大きなアボカド、全部8個だ。ともに仏法を修めていた仲間からお得な価額で買ったようだ。支配者の友人には農業従事者が多く、旬になると色んな果物が有償で届くのだ。
しかし困ったぜ。この支配領ではアボカドが食卓に出た回数は片手の指で数える。しかもどれも俺がやけくそにミキサーにかけて作った紛い物のワカモレだ。支配者は一回もアボカドを料理したことがない。なんたる衝動買い!なんたる無責任か!
幸いなことに、俺はSNSに介してMEXICOに生きる男たちをたくさん知っている。彼らならアボカド料理に詳しいに間違いない。さっそくHELPのメッセージを残した。
メキシコの男たちは情に厚く、たくさんのアドバイスをもらった。中には最強と名乗る奴がいた。
なるほど、これなら簡単そうだ。ちょうど支配領に素材も揃っているし、やってみよう。本当に最強かどうか試してやる。
材料です。
アボカドをソイヤッ!と半分に切って種と種の周りにある膜を取る。
ツナ、マヨネーズ、コリアンダー少々を……
「負いちょっと待てぇー!」
なんだよエンジェル、いきなり大声だしやがって。また俺がなんかやらかしたか?
「喧しいわ!アクズメさんてめえ!とち狂ったか!?」
至って正気だ。
「だったらなんでツナにラードをかけるんだよ!?」
お前、俺のイマジナリーフレンドのくせに日本人みたいな反応するな。いいか、俺の国ではこれがマヨネーズだ。
「なっ、バカな!?私が知っているマヨネーズもっとこう、生まれたてのアヒルみたいに黄色がかかっていて」
はーん、さてはKill-Pをマヨネーズの基準だと思っている、ティピカル日本人の考え方だ。マヨネーズは世界に行きわたったソースだから各地でブレンドされたのもごく自然なことだ。台湾では卵黄の比率が少ないので、ソーメンみたいな乳白色のマヨネーズがメイジャーだぜ。
「そうだったのか……とち狂ったとか言ってすまなかった。で、味は?」
甘いよ、とにかく甘くて油っぽい。Kill-Pを知ってから、自分の国のマヨネーズはいかにまずいか痛感したぜ。
「じゃあさ、なんでKill-Pを使わないんだ?」
エンジェルてめェーッ!イヤーッ!
「グワーッ!?なにをするんだァ!?」
Kill-Pとか、日本の輸入品を扱うデパートのお高いスーパー(そちらの成城石井レベル)でしか手に入らないだろうがァボケェー!
「あっ(察し)、ごめん。地雷を踏んでしまった……」
分かればよろしい。とにかく俺はこうして有りものでしのぐしかねえんだよ。さあ、料理の続きだ。
ツナとマヨネーズとコリアンダーを混ぜたものをアボカドの種穴に詰める。
チーズをかける。
焼く。焦げ目がついたらってどれぐらいかかるんだ?とりあえず10分で様子を見よう。
できた。これぐらいで十分だろう。食べてみよ。
もにゅ……もぐ……うん、驚くほど虚無な味だ。アボカドは味がほとんどない。チーズとツナが旨いけど、アボカドと組み合わせてなんかのアドバンテージを得たかというと、まったくないと思う。ツナとチーズだけで食べたい。と俺が内心に酷評している間、隣に座っている支配者が「旨い!旨い!」と煉獄さんばりに絶賛しながらもう半分のアボカドを平らげた。頑張って未知に挑む甲斐があったぜ。支配者は俺が解凍しただけの冷凍焼きうどんでも「旨い!旨い!」と褒めたおすから信憑性が低いがな。
完食。アボカド半分じゃ育ち盛りの僕は満腹できないので追加でスバゲッティを食べるよ。
で今思い出したけど、アボカドに胡椒をかけるの忘れたわ。クッソタレ(食事の記事でクソとかいうな)!リベンジだ!今度はKill-Pのマヨネーズをなんとか用意してやる!
AVOKADO……one gone、seven to go……
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