#NGLT エントリー作品紹介所兼闘技場

ようこそ。私はnote剣闘文学の第一人者、エンペラー・グレイウォーターである。ここは私が主催した剣闘文学トーナメント、縮めて#NGLTに応募した作品を紹介していく。そして一組の作品が揃ったと同時に、戦ってもらう。敗者はすべてを失い、勝者には次の試合が待っている。最後まで生き残った者だけが栄光と5500円を手に入れる。ではまず、Aグループから見て行こう

Aグループ:

私が認めたnote随一の日本語使い、十三殿が送り込んだ、怒れた狂った科学者とその恋人の死体をアムールトラと繋ぎ合わせた恐ろしい生体兵器、悪夢のコンビだ。読んでいるうちにシントの静かなる殺意がまるで長虫が脊髄を蝕むような痒さと不快を感じた。とても恐ろしい。「お前はクズだからお前に関わるすべてが無価値のゴミ」の価値観を見事に表現。暴力こそ少ないが、結構えぐいやり方を披露してくれた。倫理を重んじる私がなかなか書けない内容だ。十三氏は無断で唐揚げにレモン汁をかけない人格者であることを知っている。

滅んだ世界、最後の生き残りダマル・ガと滅びをもたらしたサ・ラク。二人の最後の戦いが始まる。どっちが勝っても世界は救えない。とてもSAD。神々しく美しい黙示録的光景描写、映画のクライマックスか、ファンタジーRPGの冒頭みたいだ。二人はもともと仲良しだったところはさらに私をSADに誘った。

さて、両作品が揃ったところで、戦ってもらうぞ。両者構えて……はじめッッ!!!

「アアアー!!!異形のシータがサ・ラクに飛びかかる!サ・ラクが剣を振る機会すら与えられず倒された!シータは……アイエエエ!?獣の臂力で虎足をサ・ラクの腹部にめり込んで……切り裂いたあああー!!!内臓が飛び散る!捕食本能が刺激されてシータは無残に切り裂かれたサ・ラクに顔を覆った鉄マスクで叩きつける!叩きつける!なんたる猟奇的光景か!コロシアム内では自動生成観客はすでに何人が吐いた!私も気を抜けたら……ぐぷ……吐きそうだ!もういい、判決を下すぞ!」

(勝負する際にこういうショートストーリーを追加する予定です。嫌でしたら申してください。削除します)

Aグループの勝者、踊る人虎とヒヤシンス、或いはテセウスの祈り、若くは追悼の怪物です。おめでとうございます。

両作品とも、文章がよく練り上がっている。日本語ネイティブではない私にはとても到達できない境地だ。でも残念ながら私が求める「自分よりひどい目に遭った人を見て明日に生きる勇気が湧く」の剣闘とは少々違った。十三氏の作品の勝因は、描写が緻密で想像しやすいでありつつもテンポがよく、脳のプレッシャーが少ない。対して寂滅のエシュトザガンは初っ端から用語のラッシュで、理解するまでに結構の脳力を使った。

 次はBグループだ。早く次の剣闘士でないかね?

 喜ばしいことだ。今日は目を開けると、新たに三人の剣闘士が集まってくれた。では順に紹介していこう。

Bグループ:

初の非小説参加作品だ。「読まれている!」という事実は私を大いに喜ばせた。無条件勝利させたいところだがそうはいかない。正直私の脳内ローマ像はかなりいい加減なもの、ほとんどのイメージはドラマのスパルタガスから来ている。共和と帝政の差もよくわからない(勉強しろってんだ)。いつも「こんな描写で合ってるか?」「その時はこんな技術あったのか?」「ローマ人は何を食べていたんだ?」と悩んでしまう。その中でアイドル=グラディエーター説を立証してくれて、剣闘小説を正面的なコメントをしてくれてとても心強い。無条件勝利させたい。やはりだめか。

呪われた魔剣使いと若い鍵師が陰気な邸宅を冒険。悪魔城、あるいはD&Dを想起させる(適当に言っている、彼はD&Dを経験したことがない)。ピッキング描写が丁寧で私は作者の身を案じた。魔剣の設定はかっこよくて中二心をくすぐる。そして剣闘シーン。作者が得意なバトルアクションが冴えわたる。やられてから反撃して逆転勝ちってのも熱い。

ここでまた二つの作品が揃った。いよいよ剣闘が始める。

「オニーサン、相手はなんか学者みたいなひょろひょろ野郎みたいだ。こりゃ楽勝だね!」「……」「どうしたんだ?顔色が悪いぞ」「ドゥプ」ニールは口から黒い粘っこい液体を吐き出した。「ヒャッ、オオオニーサン大丈夫か!?吐血してる場合じゃないよ!」「すまねえ、活動限界がきたようだ」「えーっ!?そんな」「武運は我々にあらずってことだ。生きていりゃこんあことも、あるさ」

Bグループの勝者、剣闘小説論:その発生。おめでとうございます。

不正は一切ない。剣士と鍵師と不夜城の主は読み物として面白さの申し分ない。しかし剣闘小説論はエッセイと論文としても十分読みごたえがある。だた一人の男の脳内妄想に過ぎなかったアイドル剣闘士説を歴史的見解から剣闘士とアイドルの関連せいを繋げてくれた。とても有り難い。私の剣闘小説マガジンに載せたいぐらいだ。

すでに二組の勝利者が出たところ、次のエントリー者を迎えよう。

白と黒、流麗と武骨、女性と男性、虚空と大地。狼の霜が降りしきる中、対照的な二体の機神の戦いが始まる。まるで黙示録、あるいは創世記めいた莊嚴で壮絶な戦いであった。これはタイダラ氏の体表作品『白磁のアイアンメイデン』の、その昔のことを描いたが、本篇を読まなくても大丈夫。画面を想像しやすい。黒い巨神のビジュアル描写がマジンガーやBIG-Oなどの重ロボットを想起させる。大好きだ。早く本編で見たいぜ。

魅々子を知っているか?彼女は鉄仮面を被ったお菓子職人。愛する先輩が望むお菓子を作るためならどんな困難も乗り越えられる愛の戦士さ。ついでに怪異とも戦う。電楽サロンさんが書く暴力は理不尽で、急で、道路を渡ったら急に暴走がトラックに撥ねられたような恐ろしさがある。そしてとんでもないことやり遂げながら、魅々子の行動原理は一本通している。先輩に自作お菓子を食べさせ、喜ぶ顔を見ることだ。そんな彼女はとても魅力的でつい応援してしまう。

紹介が終わりました。戦いの時間です。

「黒い巨人がゆっくりと足をあげてぇーー、下ろした!人間が虫を踏みつぶすように、巨大な足が魅々子潰し……ていない!なんと魅々子は耐えた!空を支えるアトラス神の如く巨人のストンプを受け止めた!ライダースーツに覆われた腿の筋肉が爆発的に膨れ上がっている!こんどは背中の筋肉が火山の如く隆起!魅々子は踏み込んで、巨人の足を……押し返したァァァ!なんたるパワー!これが愛の力か!?片足飛びして後ろに下がる黒巨人に変わって白い巨人が進み出る。右足を大きく後ろに引く、蹴り出す!サッカーボールキック!ハイヒールを模した足の先端が魅々子を捉えた!魅々子は高く飛蹴り上げられたァァァ!キャノンボールの勢いで空を飛んでゆく!リングアウト!魅々子よ、神々を相手によくぞ人間の力を見せつけた、無事を祈る!」

Cグループの勝者、『白と黒』です。おめでとうございます。

巨大ロボット同士の己を顧みぬ、神話詩編的な戦い。そして殺人事件に乱入して巨大カマキリと戦ういかれた愛の戦士。どっちの剣闘感が強いというと、個人的は前者か。魅々子はキャラとしては魅力的だが、ストーリーはこう、強引すぎた感じがするね。このノリも魅々子の魅力のひとつではあるけど。

締め切り近づきつつある。この寂れようからみると次は最後グループになりそうだ。いよいよこの男が満を持して登場。

Dグループ:

剣闘ならぬ、県闘!こういう作品を待っていた。個性的なキャラが面白い戦闘を繰り広げる。バトル物の王道だ。シンプルで強い。「殺死愛夢」はかなり気に入った。タイトルと本文に剣闘の二文字が入らなかったためルール違反なのでは?と思ったところ、ちゃんとベッター画面に書いてあるのでセーフだった。

ギリギリ間に合った剣闘士、魚売りの登場だ!海の力を駆使し、ネオサヌキ暴政に挑みかかる。正統派剣闘小説。奇想天外異能バトル!美女と美女の顔が近い!スーパー戦隊劇場版のシークエンスを踏襲した展開。映画丸一本を見たような満足感だ。

『なんとなんとォー!Dグループ試合は正統派剣闘小説対正統派剣闘小説の対戦カードになった!しかも両者は奇にも香川を相手に戦っていた!これは期待できそうだぞ!宮崎はファイティングポースを取り、ディープブルーは得物のマヒマヒ大剣を構えて睨み合って、互いの出方を伺っている……長崎が先に動いた!左右にステップ踏みながらディープブルーに接近、オレンジ色に光る拳で連打を繰り出す!ディープブルーは幅が広いマヒマヒを盾代わりに防御!長崎の拳は輝きが増し、連打速度がさらにあがる!マヒマヒは身が潰されていく!おお!長崎は身体を大きく回転し、必殺のマンゴー拳フックを決めに行く!ディープブルーもまた一瞬の隙を付けてマヒマヒを振りかざす!SPLASH!マヒマヒ炸裂してなめろうとなってしまった!丸腰になったディープブルー!胸元から何かを取り出した、あれはどんぶりか!?長崎もまたスポーツパンツから唐辛子、醤油、ココナツオイルを取り出した!ディープブルーはまた空中も舞っているなめろうを丼でキャッチして、長崎に差し出す。長崎が調味料をふりかける。一体何が起こっているっていうんだ!?』
「マンゴーで漬け込んだマヒマヒのボッキだ。お召し上がれ」
「……旨い!旨いわ!まさかマンゴーとマヒマヒがこんなに合うだなんて」
「同じく熱帯の仲間だからな」
「ご馳走様。私の負けでいいわ」
『ボキを完食して満足したディープブルーは長崎と握手を交わして退場した!長崎の勝利ィィィー!』

Dグループの勝者、『グラディエーター ~戦国群雄伝~』です。おめでとうございます。

両作品とも正当派の剣闘小説だった。個人は非常に気に入った。他の風変わった作品と戦ったら両方勝ち抜いただろう。魚売りはストーリーも、アクションも、心理描写も申し分ないが、最後の巨大戦のくだりはちょいと雑が気がする。特撮ありありではあるけど。

以上が第一回剣闘文学トーナメントにエントリーした8作品でした。参加してくれてありがとうございます。勝ち抜いた四作品は次の試合が待っています。もうしばらくお待ちください。

「我こそが百戦百勝し、皇帝から永遠の若さを授かられた剣闘士なり!我の相手はどこだ!」
 自動生成観客が去ったアリーナに、真鍮兜、革胸当て、グラディウスとバックラーを装備した、テンプレ剣闘士の格好した男が両手を広げて叫んだ。彼の声がアリーナ内に木霊する。
「む、おかしいぞ……もし、そこの者よ。ここは剣闘文学トーナメントの会場で間違いないな?」
 男はさっきの試合で散らばったなめろうを掃除している清掃係に声をかけた。
「あぁん?ああそうだけと」面倒くさそうに返答する清掃係。
「ならよかった。さっそく試合を……」
「あんた、文盲か?」
「なんだと?」剣闘士は腰に提げている剣の柄を握った。「無礼者。同じ奴隷でも、俺は剣闘士だ。貴様らのような下働きとは地位が根本的に違う。質問に答えろ」
「なぁに偉そうなことを言ってやがる。そっちこそ、剣闘王(スターライトクイーン)エンペラー・グレイウォーターの御前だぞおまえ」
 さよう、彼の側近奴隷であるヤーが肩の怪我で多くの業務を免除された今、剣闘王が掃除をやらなくてはならない。
「剣闘王、きみが?」剣闘士はまた半信半疑の模様。
「で、そこに貼ってある公告を読めないか?」
 グレイウォーターが指さす方向に、掛かっている粘土板はこう買うてあった。
「なんと!?」
「読めるんだな。じゃご退場願うか」
「むむ……」

というわけで締め切りを間違えたうっかりさんがいました。優勝を狙える内容だったのに存念です。

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