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会社に新しい中古パソコンを支給してもらってから仕事の効率が-2.55倍上がった件

一月中旬、会社で使っていたパソコンはついにぶっ壊れた。

驚くことではなかった。俺が入社前から使われてきたパソコンで、当時は日本人の上司に使われていて、OSはまたXPだった。その上司が辞職して日本に戻ったので、「アクズメ君、日本語達者だろ?このパソコンはOS言語が日本語だから君が使ってよ」と押し付けられた。ウェー。日本語が達者でも、見慣れないExcelの用語などで当初は結構苦戦していた。

それにしても、酷いコンピュータだった。保証期間が2011年にとっくに切れたので10年前以上の物だと思われる。それに相応の反応の遅さ。Excelのファイルをクリックして、20秒待ちます。そしたらファイルは開きません、アプリは何らかのトラブルで中止してしまいました。この問題をMicrosoftに報告しますか?報告したところでMicrosoftが何とかしてくれた覚えがない。ファイルを開ける度に1/3の確率でアプリが中止するので俺の仕事は運ゲー要素が加われた。まあ十年物だしね。人間で例えるなら100歳超えのよぼよぼじじいだ。

しばらく使って、定期的に起こるトラブル(前触れもなく再起動したり。書類作成中ならもちろんファイルが電子の海に消える)。にも慣れてしまった頃のある日、パソコンが全く起動しなくなった。

なん10回もCtrl+Alt+Dleteタップしたり、電源ボタンを長押ししたり、ケーブルを挿しなおししたりしても一向Windowsにたどり着ける様子がない、お手上げだ。「パソコンおよびそれに準じる電子端末の申し込みあるいは修理要請の書類」を提出して、修理の許可が下った。

「うっは、10年前のコンピュータとかマジウケるw!保証期間が2011年にとっくに切れてるし!」

と業者に言われるた。

「こりゃHDが完全に逝かれてますわ。修理するより新しいのを買ったほうがお得だけど」
「決めるのは俺ではありません」
「りょー、じゃあこちらから本社に相談にするから」
「お願いします」

それからノーパソコンの日々が始まった。自分の仕事はそれほどパソコンに依存するものではないのである程度はペーパーとペンのアナログ作業(ジョーン・ウィックのアサシン組織本部みたいな感じ)でやって、どうしてもパソコンが要る場合は頭下げて後輩のを使わせてもらう。

そして一週間、二週間、一ヶ月が過ぎた。ノーパソコンワークが依然続いている。あれもしかして?これからずっとパソコンがこないのでは?自分が組長なのに?なめられてる?いじめらてる?恥辱だ……堪えられん。明日はマチェーテとガソリンをもって出社し、チェスト関ヶ原……

「組長さん、あなたに電話です」
「あっはい」

マチェーテを振り回し同僚をマサカーする妄想を中断し、受話器を取る。

「もしもし」
『もしもし、組長さん?』

ハン君だ。俺の後輩だが若くて有能ゆえに日本で一年の研修を経て本社に転勤した彼は位階が俺より上だ。

『待たせちゃったね!今日は新しいパソコンそっちに送ったから明日着くと思うよ!』
「そうか、わかった。ありがとう」

よかった、これでオフィスマサカーはぜずに済んだ。平和が一番。Love and peace。しかし新しいパソコンね、過度な期待が禁物だが、少なくとも前の10年物よりはマシだろう。

そして翌日、机の上にダンボールがあった。中にノートパソコンの本体だけが入っていた。マウスも電源ケーブルも無かった。広げてみると、キーポードが埃まみれで、モニターに水か飲み物が乾いた跡がある。明らかに誰かのお古だ。しかも掃除すらしていない。

俺ってなめられてる?いじめらてる?恥辱だ……堪えられん。明日はマチェーテとガソリンをもって出社し、チェスト関ヶ原……。いや落ち着け、深呼吸。スゥー……ハァー……マウスがなくてもノートパソコンにはタッチパッドがあるし、電源ケーブルなくてもバッテリーの容量でしばらく使えるはずだ。とりあえずこの件をハン君に知らせた。

『マウスと電源を箱に入れるの忘れちゃった!ゴメンネ!』

この野郎。とりあえずバッテリーが効いているうちに業務を消化しよう。俺は指でタッチパネルに触れた。反応がない。マウスの矢印がモニターの中央から動かない。壊れている。

「ンンッ!」

湧き上がる衝動を抑えて、隣席のすでに退社した後輩のマウスを拝借してUSB穴に挿した。OK、USB穴まで壊れていないようだ。会社のサーバーにつなげて、Excelファイルをクリック。30秒が経過、そしたらファイルは開きません。アプリが中止してしまいました。

「ンンンンッッッ!」

湧き上がる衝動を抑える。インストラクション・ワン思い出せ、1回でファイルを開けぬのなら、1000回クリックするのだ。幸い3回目でファイルが開いた。報告書を完成ためにデータベースから数値を照合する必要があるためデータベースにログイン……ログインできないぞ?なんじゃこりゃ?

アプリケーションのコンボネーントで、ハンドルされていない例外が発生しました。[続行]をクリックすると、アプリケーションはこのエラーを無視しTげ続行しようとBRABRABRABRA……難しい言葉が並んでるけど要は使えねえってことだな?スクリーンショットしてハン君に送った。

『これはよくわかんねえな。もう退社したから明日リモート操作で見てみるよ』

「ぬんんんん……」

俺はパソコンを閉めて、机の上で台型を組んで、割と真剣でオフィスマサカーを考えた。

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