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応援する恐竜、ガンバレックス

ガンバレックスは人間が大好きなティラノサウルスの女の子です。今日も落ち込んでいる人を見つけ出して、励まします。

今日彼女が注目したのはここ、どこかの学校です。今日はちょうど運動会が開かれてとても賑わっています。

グラウンドでは100メートル競走が始まります。スタートラインにいかにも脚力に自信がありそうな選手たちが並んでいるなか、一人だけ、太った男の子が居ました。

男の子の名前はヒカル。身長165cm体重92㎏、BMI数値は中度の肥満に該当する彼はとても足が早いようには見えないにもかかわらず100メートル競走に出場したのはなぜでしょうか?

「はぁー」

ヒカルのため息には悲哀と諦観がこもっていました。彼はクラスでよくいじられています。100メート競走に出場させられたのも、贅肉を揺らしなが最後にゴールする彼を見て面白がりたいんがために、多数決の暴力で彼が押し出されました。

(早く帰ってゲームしたいなぁ)

ヒカルはなるべく楽しいことを考えて心をポジティブにする。理由もなく股間を蹴られたり、ズボンを脱がされたり、恥ずかしい写真を撮られて拡散されたり、様々屈辱を受けて来た自分にとって競走で最下位になるぐらいどうでことないと、ヒカルは自分に言い聞かせました。そういう考え方がさらに自分を追い込んでいることを、彼はまた気づいていません。

しかしガンバレックスは違う。人より遥かに鋭敏な爬虫類感覚器官は少年の思考パルスを読み取り、瞬時にヒカルの本心を理解しました。こうなればじっとしていられません。校舎の裏に姿を隠していたガンバレックスは躍り出し、グラウンドに駆け込みます!

「ROAAAAAAAARR!!!」

ガンバレックスは口を大きく開き、ジェットエンジンじみた叫び声をあげます!突如に現れた身長5メートル、体長10メートルのチアリーディングスーツを着た最上級捕食者エイペックス・プレデターに人々は驚いて身動きとれません!

「フレー! フレー! ヒ・カ・ル・くん!
 がんばれ! がんばれ! ヒカル!
 KA・GA・YA・KE・HI・KA・RU!」

巨大な身体に不釣り合いの小さい前肢でポンポンを振りながら、ガンバレックスはチアリーディングを始めました。ドーン、ドーン、ドーン、ガンバレックスの足が地面を踏むたびにグラウンド全体が揺れます。

「きょ、恐竜の方!グラウンド内での応援行為はおひかえぐわぁ!」

勇敢な教員はガンバレックスに立ち向かいましたが、丸太のような尻尾に撥ね飛ばされて、動かなくなりました。ガンバレックスはチアリーディングを続行、校内は騒然、人々は逃げ惑います。そんな中でヒカルは別の意味で驚いていました。

(えっ?どゆこと?あのティラノサウルスが?応援している?僕を?)

理由はわからないが、そのティラノサウルスは自分の味方であると、そんな気がしました。

(なんも分らん……分らんけど、テンション上がってきた!ていうかなんで恐竜が応援すんだよ?どうやって服を着れたんだよ?あの小さい手で?)

ガンバレックスのエールが涼しい風のようにヒカルの心のモヤモヤを吹き払って、爽やかな気持ちになりました。

同時にガンバレックスのチアリーディングも佳境に入ります。右前肢を円を描くように振り回し、最後に前に突き出します。

「ヒカルぅぅぅ〜 GO FIGHT!」
「おう!任せろ!」

ヒカルは気合いが入りました。バァン!混乱の中でが審判がスターターピストルのトリガーを引き、ヒカルが走り出します。ほかの選手は既に逃げたので走者は彼一人しかいませんが、ヒカルは一生懸命走りました。彼は100メートルを15.83秒でゴールし、生涯最速の記録を残しました。

100メートルを走りきったヒカルは止まらず、そのまま表彰台の方へ向かいます。そこで台の裏に隠れている青ざめた表情の校長先生を見つけました。

「きみぃ、何をしている!?早く避難を」
「うるせぇこのいじめ黙認無能教員じじい!」

ヒカルは校長を殴り倒し、箱から100メート競走に金メダルを取り出して自分の首にかけると、ヒカルはガンバレックスの方へ向かいました。

「わっ、恐竜さん、近くで見るすげー大きい......」

迫力のあるガンバレックスの体格に圧倒されそうになりながら、ヒカルは勇気を絞って話かけました。

「あの、恐竜さん、応援してくれてありがとう!おかげで優勝できた!」
「おめでとう、ヒカルくん!わたしは応援しただけで、ヒカルくんは自分の意志で栄光を手にしたの。すごいね!」
「へへっ、そうかな......そうかも」
「では料金をいただきますね」
「へ?」

ガンバレックスはの大きな口がヒカルの上半身を含みました。鋭い牙が肋骨を砕き、絶命させました。ガンバレックスは頭を上に向けてヒカルを飲み込み、咀嚼し、飲み込みました。

「あぁ、脂が乗っていておいしい!応援した後のお肉はやっぱ最高だね!」

ガンバレックスは満足して、学校から去りました。

ガンバレックスは人間が大好きなティラノサウルスの女の子です。落ち込んでいる人を応援します。しかしその応援は無償ではありません。

あなたがもしが悲しい顔をしたら、ガンバレックスが応援しに行くかもしれません。

(終わり)



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