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ヘッドスキン

人の頭を触るのが好きです。もっと正確に言うと、頭皮を触るのが好きです。

七歳の頃、若くして頭頂部が見事に禿げた親戚のおじさんの頭を触ってから、その滑らかな触り心地、皮脂のにおい、光沢が私を頭皮の虜にしました。私は隙あらばおじさんの頭を触っていました。おじさんはそれが嫌がって、頭を触れるのを禁止した。彼は自分の頭を屈辱だと思っていたようです。

親戚のおじさんがだめなら別のおじさんを探すしかない。私は子供という立場を上手く利用して髪の毛が寂しいおじさんに話しかけて頭皮チャンスを狙っていました。地元では頭なでなで小僧とも呼ばれていました。

しかし成長につれて私の体が大きくなってかわいさを失い、おじさん達が私を見る目が変わって頭を触らせてくれなくなった。頭なでなで小僧としての活動期間はわずか三年で終わりました。

私は飢えました。気づくとブルース・ウィリスとドウェイン・ジョンソンと
ジェイソン・ステイサムの映画ばかり観ていた。ただのガールズラブだけではもはや満足できなくなったが最後ふたなりに性欲を向けるようになった百合好きのように、私はスポーツ刈りに守備範囲を広げようとした。野球部の子と友達になって、頭を触らせるよう懇願した。スキンヘッドほどではないが、たわしのような短くて固い髪による抵抗感もなかなか面白かった。けどしばらくして野球部の子が私の意図に気づいて警戒されるようになった。

また飢えの日々が始まりました。床屋のおばさんにスキンヘッドにしてくれと頼んだが、自分の頭を触ってもやはり駄目だった。感触はばっちりだが、自分の頭だど光沢とにおいがわからない。頭皮を1/3でしか楽しめない。やはり他人の頭皮じゃないと駄目なんだ!

こんな私が美容師を目指すのも合理的だった。お小遣いでダミーヘッドとウィックを買って家で練習して、高校生になると近所の美容院でバイトして、卒業したらすぐ専門学校に入った。二年をかけて美容師の技術を身につけて、免許を手に入れた。

専門学校を出た私はまず出家して、剃髪係として寺院に入った。頭皮に魅了された私にとって極めて合理的な選択です。お坊さんは頻繫に髪の毛を剃るので私の技術が大活躍しました。兄弟弟子たちの間も評判がよく、皆が私に頼んできます。日夜スキンヘッドに囲まれて、スキンヘッドに触れて、涅槃にいるような心地でした。

そんな世俗の煩悩にまみれた私の心を、住職は気づかないはずがなかった。ある日の朝課のあと、私は住職に呼び止められました。

「納糸(のうし、私の法名)よ、うぬのカミソリ捌きは文殊菩薩の剣のように鋭く、うぬの頭皮マッサージは救済をもたらす千手観音の手のようであった。しかし、まことに残念ではあるが、解脱を求めるところか、うぬが修業の場を己の欲を満たすために利用していた、違わぬか?これ以上うぬをここに留めさせるわけにはいかぬ。今日をもってうぬを破門とする」

住職に礼をしたあと、私は速やかに荷物をまとめて世俗にふさわしい服に着替えた。私は訝しむ兄弟弟子に説明せず振り向きもせず仏門を出た。さらばだ愛しいスキンヘッド達。もし今振り向いたら、私が悪鬼羅刹と化して住職の首をカミ剃りで切り裂くかもしれない。

納糸としての私の活動期間はわずか一年でした。

(続く)

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