炒飯神太郎⑤

炒飯神太郎の成長速度は仔犬並に早く、たったの一年間で身長178cm体重69kgの細マッチョ青年になりました。そしていよいよ旅立ちの日が来ました。

「御爺様、御婆様。短い間ですが、お世話になりました。このご恩は一生忘れません」
「いいんだよ。こっちこそ、お米たくさん頂けて有難いぐらいだ」

とおばあさんは言った。炒飯神太郎と暮らしていたこの一年は澱粉の摂取が増えて、彼女の体重は10キロ増えました。

「リベンジマッチ、頑張ってよ!神太郎!」おじいさんはガッツポースを取って見せた。「ヤバくなったらまた赤ちゃんに変身して、川に流れてきてよ!そしたらまた一年間お米に困らない生活ができる!」
「……そうならないと願うばかりです」

苦笑する炒飯神太郎。中華鍋を背負い、刀の代わりにおたまを腰に差し、さらに昨晩に炊いたごはんとチャーハンに使う具材を詰めたとか弁二つを棒を通して担いあげ、太郎は上流へと歩き出しました。

「はぁ……”家庭”って感じだったね。この一年」
「柄でもないこというじゃないよおじいさん」

感極まって、目を潤わせながた溜息するおじいさんをおばあさんは肘で小突きました。

「でも不思議なやつだ。あたしらが半生をかけて死に狂いに鍛錬してようやく掌握した功夫を、たった一年で己のモノにするとはな。最近の若者は少しできるようなったらすぐ神と自称したり呼ばれたるするが、神太郎の神の字からはモノホンとしか言わざるを得ない」
「神的に美味かったもんね、神太郎のチャーハン。どこかで店やってくれないもんかね」
「ない物をねだってもしょうがない。気持ち切り替わるんだおじいさん。あたしこれまで通り川に洗濯しにいく。じいさんは食料集めたのむわ」
「任せなさい!虫プロテインを生かした料理をいくつか神太郎と考案したんだ!」
「ってわけで今日から虫プロテインメインの生活に逆戻りか。神太郎、負けてまた流れてくれないかな……」
「なんてこと言うんだおばあさん!いいかね?100gの鶏むね肉に対して、同じ重量の昆虫に含まれるタンパク質はなんと……」
「洗濯いってきまーす」

(続く)

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