カードをめぐれ

 どうも、灰汁詰めです。 僕は日本が好きで、日本語を学び、日本の会社で働き、今に至っては日本語で小説を書いたりしている。
 
 僕は日本に遊びに行くとこを考えていない時ない、だが日本で働くことは無理だと思っている。最近、会社の新しい策略がその思いをいっそう強くした。
 
 一月下旬のことだ。朝の会議で所長から2箱の名刺サイズのカードを渡された。一番上のカードだけが赤色で、"訪問済"とプリントされている。

 「(支)社長からの新しい指令だ。今日から皆にやってもらう」

 「えっそれはつまりどういう」「またなんか始めた」「仕事を増やすなよ…」会議室が騒然とした。

 「説明からよく聞いてくれ」所長が名刺カードをカードボックスに垂直に立たせると、赤いカードを一番後ろに移した。

 「この空白のカードに、自分が担当している既存の得意先の店名を書くんだ。訪問済の得意先のカードは赤色訪問済のカードの後ろに置く」
 
 所長が空白のカードを一枚取り、赤いカードの後ろに置いた。

 「訪問済のカードは社長と私が随時にチェックする。なるべく早く半数以上のカードを"訪問済"の後ろに置くことを進める。以上だ。皆は確実に遂行するように。何が問題があるか?」

 「さすが社長は暇ですね!また面白いこと考えやがる!」「こんなことして意味ある?」「仕事増やすなよ…」社員たちさっきより騒ぎだした。僕はアプリのアイコンをタッブしてゲームを起動した。会議よりAP消費するほうが有意義と思ったからだ。

 「こっちらの得意先が400軒もありますよ?それを全部書けっていうの?」発言したのは先輩の女性社員だった。
 
 「もちろんだ」「ただでさえ営業で忙しいのに、いつ書けばいいですか?残業ですか?前に言っていた残業撲滅と矛盾しているのでは?」
 「時間とかレモンみたいに絞れば何とかなるだろう。そもそも、なんで社長がこんな指示出したと思う?お前らが無計画に新規訪問で訪問件数が増えてばかりで、既存得意先を疎かにして売上が下がる一方だからだ」「そんことした覚えがないんですけど」

 「誰もあんたのことだ言ってないさ」主任が言った。「この中の誰かがやらかして俺たちまで連座法食らったわけだ。その誰かさんは心当たりがあるがな」と言いつつスキンヘッドの社員を見つめた。

 「ファック、おれを見てんじゃねえぞ」「ならおめえのブサイク顔を見なければならない俺の気持ちを考えたことがあるのか?」「てめえが勝手に見たんだろうが!誰がブサイクだファック野郎!」「ハハハハ!」この職場では日本人社員以外、上下関係が緩く、加えて2人は元から友人であるため、こういうコミュニケーションができただろう。

 「せっかく今年は先入観を捨てて色んな業種に開拓すると決めたのになぁ」「面倒といったらたまらない…」「まあ、そう喚かいでよ」僕は目がスマホにとどまりながら言った。言っておきますが僕は年功はこの営業所では上から数えて五番目なので先輩ツラする資格は十分にある。「意外と効果があるかもしれないじゃん?もしかし半年後既存得意先の売上が150%上がるかもしれないだろ?」

 「さすが売上最下位さんの言うことが説得力ありまねぇ!」「そりゃあんた得意先が少ないだろう!」と皆が突っ込みいれる中、所長が厳つい表情で僕に言った。「さっきから何を見てるんだお前?」「あー、LINEから注文のメッセージが来まして、返事しているところです」僕は適当に言いふらした「ただいま終わりました、ハイ」「会議中だぞ。何回いえばわかるんだ」「すいませーん」

 「ハァ……仕事が増えることがみんなが嫌がるのはわかる。でもこのやり方は日本本社で何年もやってきた、信頼と実績システムだ。唯一の違いは日本ではパソコン、諸君は手書きでやってもらうだけだ。来週からカードを作成し、しっかり既存管理を徹するように。以上だ!」

 こうして毎日カードをめぐり、束から特定の数枚を探しだす日々が始まった

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