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STORIES OF ZUCOUME LAND : 失った信用

 ヒュウウウー……死の風が地を舐め、砂塵を巻き起こす。正午なのに、太陽光が砂嵐に阻まれて、夕方の暗さだ。

 ここはズガウムランド、土地の面積は95%砂漠に覆われているが、わずか5%のオアシスには高度な文明が築かれており、屈強な男とタフの女たちが行き交い、24時間営業の酒場ではホットなベイブたちがビールとチキンウィングを絶え間なく運んでくれる。客たちはチキンウィングを貪りながら自分の冒険譚を叫ぶように交わし、あるものはポールダンスを踊っているベイブを一心に見つめている。飽食した者たちは次に向かうのはヒーロームービーだけが日本より早く上映する映画館や高性能ゲーミングPCが備えたネットカフェだ。それらの娯楽に興味ないストイックな者は銃弾の補充と武器の手入れを済ませ、また馬に跨り去っていく……旅行者の第二の故郷、ここはそう呼ばれた、10日まえまでは。

 最初は創造主であるアクズメのクレジットカードが盗用されたという知らせが入り、銀行が素早くカードの権限を停止したが、新しいカードを発行するには一週間がかかり、その間、ニンジャスレイヤープラス、ダイハードテイルズ日報、Netflixなどがクレジットカードの自動支払いが効かなくなったせいで、見れなくなってしまった。外の世界からのイマジネーシヨンの風が途切れ、泉が枯れ、植物が潤いを失い、砂漠化が一気に進んだ。旅行者が来なくなり、町人が去っていった。

「嗚呼……なんで……こうなってしまったのか……」

 ボロ布を纏った男が砂嵐によって半分埋もれた町を眺めて嘆いた。彼の名はアクズメ、さっき言った通りこの世界の創造主だ。創造主と言っても、世界を干渉する事はできない。つまりドラゴンボールの地球神みたいなポジションだ。
 
 彼は30代前後のはずだが、やつれた顔、窪んだ頬、砂にまみれた髪の毛、水分も十分に取れず乾いた皮膚で彼は実年齢の倍に見える。

 彼の目は絶望に満ちた。一つの支払い手段が失っただけで、娯楽が半減した彼の感性の飢えて、死にかかっている。もしこのままクレジットカードが届いてこなかったら、あと2日で、世界が完全に砂に埋れて消滅するだろう。ザァー……風で巻き起こし砂塵がアクズメに降りかかる。

「Shit!目に入って……!んん?」目を擦るアクズメは視界の端に何かがあると気づいた。空だ、黄色い光っている何かが、昼間の流星めいて光の尾を描きながら落ってきている。

「あれは……まさか!」

 アクズメは走った。もしあれが思った通りの物なら、またこの世界を滅びから助ける術がある。彼は力を振り絞って、柔らかい砂に躓きながら流星の方向に向った、ゆえに足元に気をつけなかった。

「うぉぉふっ!」右足が踏み外して、彼はボウル状に空いた窪みに転げ落ちた。窪みの中央底に鎮座する捕食者が砂に伝わる振動を感じ取り、姿を現した。

「ガギギギーッ!」

 キチン質の甲殻に覆われる二本の鍬状の顎を持ったダイアントライオンだ!顎だけでも2メートルがある。アクズメはアントライオンの実物みたことないためか砂から漏出している頭部がアントライオンよりクワガタ虫に近い!頭部以下の体はどうなってるか想像もつかないぜ!

「SPIT!SPIT!」「くそっ、こんな時に……!」ダイアントライオンが器用に二本の顎を動かして砂をはね上げてアクズメに掛ける。アクズメが斜面にしがみつくが、柔らかい砂の表面が重量によって崩れ、徐々に蟻地獄の中心に落ちっていく。スリルのために自分で作った危険生物に殺される、これも因果応報なのか!ダイアントライオンの顎がアクズメを掴みかかる!だが!

 ヒューン、風切り音と共に、細い物体が降りて、ダイアントライオンの頭部に刺さった。

「ゴアアア!?」「これは!?」

 アクズメは目を見開いた。細い物体、つまり矢に付いた矢羽は金属の光沢を帯びた暗い紺色、バシリスクの羽だ。こんな贅沢の矢羽を使う者は一人しか知らない。

 ヒュン、ヒュッヒュン。さらに矢が飛来し、ダイアントライオンの頭部に刺さった。「ギィイイ-ッ!」虫は断末魔めいた声を上げ、倒れた。その顎が死してなおびくびく動いている。

 「情けないね、きみは!」

 窪みの縁に、シュマグとゴーグルで顔を覆い隠し、弓を構えている男が立って、尊大にアクズメを眺めている。

「エルフの王子!」「ああ、わたしだ」

 アクズメは叫んだ。男はシュマグをずらし、オランド・ブルーム似のイケメン顔を露出した。ヒュン、エルフの王子はもう一本ローブ付きの矢をアクズメの足元に射った。アクズメはそれを掴んで窪みを登った。

「わたしがいない間にこんなことになってしまったとはな」王子はダイアントライオンに手をかざすと、虫に刺さっていた矢がテレポートし彼の手に戻った。この魔法によって彼は射手の弱点であるアウト・オフ・アモーを克服し、1万人のウルクの軍隊を一人で退けた。因みに彼は魔力エネルギーを実体化してマジック・アローを撃つこともできる。まじチート。

「なんであんたはここにいる?白い船を乗って遥か彼方に行ったじゃなかったのか?」「放浪が性に合うのさ。それより先に急ごう」「……だめだ、徒歩ではとても間に合わない……」「だからこのベイベを連れてきたのさ」

 エルフの王子が指さした先にはサイドカー付きのバイクがあった。

「用意周到だな……」アクズメはそういながらサイドカーに入った。エルフはただで人助けとは思えないが、今は緊急事態だ。

「昔を思い出すな!」エルフの王子がシュマグとコーグルを戻し、ハンドルを回しエンジンをかけた。「レッツ、ロールアウト!」

 二人は流星が落ちる方向に向かって、砂嵐の中を走った。

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 二人はバイクに乗り、ズガウムランドの中心地点にきた。途中でオオスコルビオン、デザードサラマンダー、ウィングガラガラヘビなど凶悪な獣と出会ったが、情け容赦ないエルフの弓矢によって全部仕留めた。

「ここら辺のはずだが……」アクズメは頭をキョロキョロ回して目的の者を探そうとした。

「あっちだ」エルフの王子が呆れたように指さしした。その先には何かが金色に輝いている。二人は光の源へ走った。

「ああ……遂に!」アクズメは金色の物体を拾って言った。扁平な長方形の物体、即ちクレジットカードである。

「早く認証を完了して、ニンジャスレイヤープラス再購読しないと……」

「あー、言っちゃ悪いが、きみだけでこの世界を元の姿に戻すのはかなり難しいぞ。わたしはエルフだからわかる」

「じゃあどうすればいいって言うんだ!?来てくれたことは感謝するけど冷やかしは御免だ!」

「一人で背負うなと言っているんだ」

「その通り」

 喉に悪そうなデスボイスと共に、黒い人影がロープを掴んでスイングしながら着地した。周囲にロープを付けるビルや高い植物が無いというのに、不思議!

「ダーヴィ!」

エルフの召喚に応じて、来た

 ダーヴィと呼ばれた男は喉に悪そうなデスボイスで言った。彼はダーク・ザ・ヴィジャランティ。悪魔と人間の間で生まれたハーフデーモンの彼は赤坊の頃、天使の侵攻を受けた際に、彼の両親が彼を次元の扉に飛ばし脱出させた。金持ちの優しい夫婦に拾われた彼は普通の男の子として育ってゆく。12歳のハロウィン、クラスメイトに唆されて町外れのおばあちゃんの家にキャンディをもらいに行った時、おばあちゃんの飼い猫に噛まれて、三日三晩寝込んだあと、体内のデーモン遺伝子が活性化し、その力によって勉強もスポーツも上手くなり、一気にフリークからジョックまで上り詰め、成績首席で中学卒業の祝いに両親に高いレストランに連れて行ってもらい、ロブスター食べたあと、近道を取るため路地に入った三人に強盗が襲う。ダーヴ守るために両親が殺され、途方に暮れた彼は町外れおばあちゃんちに訪れ、そこで自分が悪魔の血を受け付いていることを告げられた。おばあちゃんはダーヴのメンターになり、悪魔の力の使い方とマーシャルアーツを教え込んだ(おばあちゃんは魔女で、魔法で外見を常に20歳前後に維持している)。数年後、成長した少年が夜の町を飛び回り、デーモンパワーで悪党に正義の鉄槌を下す!その名は、ダーク・ザ・ヴィジャランティ!

「イベントで忙しいのではなかったのか?」

「Dude、確かに俺は独立して正式ヴィジャランティになったが、ルーツはお前だ。兄弟の危機に駆けつけて当然だ」

 恐ろしい外見と声に反して、彼は実に真摯であった。ダーヴは前進を覆い隠す闇オーラを常に放出している、そのため他人から黒いマッチョマン輪郭以外に、白く輝く両目だけが彼の表情を表している。スポーンを目以外全部黒塗りすれば想像しやすい。

「ありがとう……本当に……」

「彼だけではないぞ、坊や共!」

「「レディ・ドゥーム!」」

 蒼い魔法陣流と共に現れたのはDoom guyめいたミリタリスーツを着込んだ坊主頭の女だ。スーツから露出死ている腕はメコン川の底に年月をかけて熟成した沈木めいて見事の褐色で、逞しい。皮膚に刻んだルーン・タトゥーが仄かに光っている。まるで魔力の脈動だ。彼女はレディ・ドゥーム、昔はふりふりの衣装で魔法少女やっていたが、さらなる強さを求めて修練を重ねた結果、魔法少女のスタイルに合わなくなり、思いっきり方向転換して今に至った。彼女に関する小説はアクズメが女性を描くのが苦手なせいで未だに陽に当てることなく、イマジナリフレンド化した。因みに彼女は既婚者である。

「久しぶりだね!アクズメくんは相変わらず彼女できなさそうな顔してんな!」

「はい……すみません……」

「ウソッ」レディは信じられないように両掌で口を塞ぐ仕草をした。「冗談のつもりだった。まさか本当に居ないなんて……ごめんね?」

「はい、お気になさらず……」

「休日にゲームと筋トレと記事書く以外やることない人がガールフレンドできるわけないっしょ」

「「「コンビニ店員!」」」

 もう一人、ショートボブの女がどことなく普通に歩いてきた。黒地と緑ふちの胴着がコンビニ店員であることを表している。彼女は手に持っていたアイスコーヒーをアクズメに差し出した。

「お待たせしました。アイスコーヒーミルクなしシロッブ半分アイスったぷりね」

「ありがとう!さっそく……」アクズメはコーヒーをコーヒーを受け取る直前に、コンビニは手を戻した。

「何か忘れていませんか?いまのお客さんは無一文ではないはずですが」

「あっ、すまなかった。これだね」

 アクズメはさっき手に入れたカードをネックレスみたいにコンビニ店員の首からぶら下がっているデバイスに重ね(その間アクズメは店員の胸部を見つめていた)、「Pi」と電子音声が響いた。新しいカートは電子マネーが使えるそうだ。

「ありがとうございます。どうぞお受け取りください」

「ありがたい!じゅーるるるるる……」 わずか15秒で、Sサイズのアイスコーヒーを飲み干た。「リフレッシュ!生き返ったぞ!」そして無造作にコップをポイ捨てした。それを見たエルフの王子は眉根を寄せた。

「それでは皆が揃ったところで、あれをやるぞ!」

「おう」「わかった」「やろう!」「早くしてくださいね」

四人は懐やPOCKETからそれぞれのカードを取り出した。

「まずはわたしからだ!ファンタジーズ!」エルフの王子は緑色のカードを翳すと、緑色のビームがガードから射出され天に衝く!

「ダークネス!」ダーヴィのダークカードよりダークビームが射出が緑色ビームと交差し、エネルギーが渦巻き、円盤状の塊を作る。

「タフネス!」

「インスタントリ」

 続いて、レディ・ドゥームのピンクビームとコンビニ店員青色ビームが加わり、彩った円盤が小さな銀河系めいている。

「最後はおれ!マーネーパワアアアアーー!」

 アクズメは叫び、クレジットカードを高く掲げた。金色のエネルギー流が砂嵐をかき分け、小さな銀河を金色に染め上げていく!何という膨大なエネルギーか!どこからBGMが聞こえる。

 COMBINE OUR POWERS , BE THE HERO , CRASH THE BORING , SAVE THE WORLD......

 特異点が、開かれる!

KRA-TOOOM!!

 
 雷鳴めいた轟音が響き渡り、特異点に集まったエネルギーが人間の形に収束していく。

『メィイイクッ!マーネーー!』

 人型のエネルギー体が雷鳴に劣らない大声で叫んだ。やがてエネルギーの波紋が安定し、その輪郭がはっきり見えてきた。上空にボディビルダーばりに体格のいい男が浮遊している。全身が1ドルに模した白地と青色かかった墨色のボティースーツに覆われ、胸には三角形の上に楕円形の目の模様が重ねた陰謀的シンボルが描いてある。

「成功だな……」エルフの王子が呟いた。

『我が名はキャシズム!』1ドル男は腕を組んで言った。『この領域に存在できるのは300秒だけ。言いたまえ!何を求め我を呼んだのか!』

「キャシズムさん、この領域を……世界を元に戻してくれ!」アクズメは叫ぶように言った。

『任務了解、クレジットリミットを提示せよ』

「きっちり1600ドルだ!」

『充分だ。ハァーッ!』

 KABOOOM!ソニックブームを起こすほどの急加速!キャッシズムは両腕を前に突き出して飛んで行った。

「……本当に大丈夫ですかね?」コンビニ店員が懐疑的だ。

「しかし、ここまでくればもやは彼に頼るしかない」ダーヴィはキャッシズムについて何か知っているようだ。「キャシズムは強大だ、強大すぎるぐらい」

「いい方向に回ってくると祈るしかないね」とレディ・ドゥーム。

「……」エルフの王子は厳めしい表情でキャッシズムが去っていく方向を見た。

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 超音速で飛行するキャシズムがあっという間に町に着いた。半分が砂に埋まっている施設を一瞥しただけで状況を完全に把握した。

『マーネーソーヴスエブリシーング』

 陰謀的シンボルが白く光りだすと、キャシズムが両手を広げて高速回転し始めた。空気が渦巻き、キャシズムを中心に竜巻が生じた!しかし竜巻は建物に傷つけることなく砂だけを吸い取っていく、一体どんな力が作用しているのか!?たちまち建物の一階入り口と舗装路が露わになった。

『ふむ』

 回転を止め、今度は両手に白い光球を作り、映画館に撃ち込んだ。

『NETFLIXと再契約する』

 ドーン!映画館が白い光に包まれて、NETFLIXの赤いネオン看板が再び灯り、ロビーの壁に掛かってあるスクリーンが予告動画を映し出す。ついでにカーベットのコーラ痕も取れてきれいになった。

『Steam情報更新』

 ドーン!ネットカフェに光球を撃ち込む!

『ニンジャスレイヤープラス再講読』

 ドーン!図書館に光球を撃ち込む!

『酒場再構築』

 ドーン! ドーン! ドーン! 白い光球が次々飛ばされ、町が元に、あるいはよりにいい感じになっていく!

『ヌゥンンンン!』キャシズムは両腕を高く掲げて、バンザイの姿勢を取ると、頭上に特大光球を生成!終わりの予感がする!

『フッハーーッ!』

 そして乾いたオアシスの池にめかけて投げた!KABOOOM!光の爆散と共に土が飛び散る!そして!

 プシャー……

 乾いていた泉がイェローストーンのオールド・フェイスフル・ガイザー間欠泉のごとく勢いよく噴出!周囲にナツメヤシとシュロは瞬時に生え茂た。まるでキャシズムが起こした奇跡を称えるように、虹が……

 キャシズムは残りのクレジットを確認し、頷いた。

『これで十分』

 着た時と同じ、彼は静止から一瞬で音速に達し、飛んでいった。

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「戻ってきたぞ」「早っ!」

 エルフ聴力でキャシズムの帰還に気づいた王子がアクズメの肩を叩いた。

『任務は果たせた。私の好みで少々アレンジを加えた。気にしなくてよい』

「あっはい、ありがとうございます……」

『近い将来、また合うことになるだろう』

「それはどういう意味だ」エルフの王子が問うた。

『彼に聞け。ではさらばだ!』

 キャシズムの輪郭がぼやけて、全身から緑、黒、青、ピンク、金の光が発し、五人が持っているそれぞれのカードに戻っていく。

「えっ、もう世界が救われたんすか?」

「そのようだね。さっきまでと違って、空気と大地に力が満ちている」レディが手を翳して言った。魔法で変化を感じ取っただろう。そして彼女は地平線に向かって指を差した「あれを見なさい」

 地平線に現れたのは……キャラバン!新しい住民が自動生成されたのだ。

「これで一安心だな」

「ああ、でもキャシズムが消えた直前の言葉が気になる。アクズメよ、カードもう一度よく見てみろ」

「ああん?カードに問題なんてある筈が……ん?」

 おかしなことが確かにあった。クレジットカードの使用期限が09/18と表示している。

「……来月じゃねんぐぅー!」「シーシッシ」

 エルフは素早くアクズメの口を塞いだ。

「必要のない不安を起こすんじゃない」

 キャラバンの先頭にいるトラックが5人の側で停止し、運転席から禿頭の屈強な男が降りた。

「ごきげんよう。あんたたちがこの領域を仕切ってんのかい?」

「コホン、そうです」エルフの手をほどき、挨拶を返した。「一応、僕がここの創造主のアクズメです」

「俺はザルフキン、元レンジャーだ。ここの町に入居させてていただきたい」

「もちろん大歓迎ですよ。貴方のような方が居てくれれば百人力です!」彼はできる限り大人しい対応をした。

「ハハハ!失望させぬよう頑張るわ!ではのちほど、町でな!」

 ザルフキンはトラックに戻り、西の方向にある町に進んだ。キャリバンが彼の後ろに続く。

「クレジット期限のことは自動生成住民に内緒にしておこう。来たばかりの領域が一ヶ月後また崩壊の危機に遭うとわかったら何をすれかわからない」とエルフの王子。

「そうだな、なんといっても元レンジャーだよ?勝てるわけない!すぐに銀行に連絡を……」

「それならおれに任せろ」

「ダーヴィ!でもイベントで忙しいはずじゃ……」

「Dude、これ以上は止めないでくれ。アース・バンクは舐めた真似してくれた。お前の恥はおれの恥だ」

「ダーヴィ……」

「妥協はせぬ!」

 ダーヴィはそう言い、グラップルガンを上に向かって発射した。ワイヤーが捲かれてダーヴィを引きずって往く。周囲にはグラップルを付けるブルなどないというのに、不思議!

「私も行かなければならない。触手生物がイオンを襲撃したとの知らせが入った。行かなければ」とレディ・ドゥーム。ここのイオンというのはどこかの植民衛星でありショッピングモールのことではない。「一度作られた領域がたとえ創造主が気がなくても勝手に進んじゃうわけだ」

「はい、すいません……」

「あなたを責めるつもりはない」レディは優しくアクズメの頭を撫でた、彼は子ども扱かわれるのが嫌いなはずだったが、なぜか腹が立たなかった。「気が向いたらまた何か書きなさい」

「はい……!」

 レディ・ドゥームは微笑みながら、その体が蒼い魔法陣と共に消えた。残ったのはアクズメ、エルフの王子、コンビニ店員となった、

「……で、どうする?せっかく集めたし、新しくなった酒場に行ってみない?ビールとオニオンリング奢るよ」

「いいですよ。どうせ有休使ったからこれから暇だし」コンビニ店員は胴着を折り畳みながら言った。

「そうか!では僕と一緒にサイドカーに乗ろ!」

「ええ?二人でサイドカーに入るのはちょっと……」

「下心丸出しだぞ!」エルフの王子は指摘した。「仕方ない。不本意ではあるがわたしの後ろを座らせよ。我が背筋にすべてを委ねるがよい」

「ええ……お前の後ろに乗るのか……なんか嫌だな」

 でも徒歩では町にたどり着くまで半日が掛かる。アクズメは渋々エルフの後ろに腰を掛けた。

「皆しっかり座ったか?ではいくぞ!」「うおっ!?」「わっ!?」

 ブルン!ブルルーン!エルフの王子は急にハンドルを回した後急にブレーキがをかけ、また回した。急激の加速で後ろのアクズメは翻筋斗をうってひっくり返りバイクから落ちた!でもバイクは走り続ける!サイドカーにいるコンビニ店員は無事。

「あっごめーん!手は滑ってしまった!町で落ち合おうぞぉぉぉ……」エルフの王子はわざとらしく振り返って叫んだ。

「おいおいおいおい……まじかよ?」

 アクズメは立ち尽くし、二人がどんどん離れていくさまを見るしかできなかった。

 ここはズガウムランド、彼の想像力によって築かれた心の王国である。

 でもすべてが彼の思い通りなわけにはいかない。

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