嫉妬からの暴言

小さい頃、レスリーという女の子の友達がいた。

本名は覚えていない。彼女の両親を含めてみんな彼女をレスリーと呼んでいる。俺の国では意識の高いペアレンツが子供が幼少期から子供にイングリッシュネーム付けたり、家のなかでは英語でしか話さなかったりする。俺の両親も一時はそうしていた。しかし息子は英語どころか日本語も危ういという様だ。HAHAHA。ちなみに俺のイングリッシュネームはHankだという。

レスリーは明るくて聡明で、外見も印象がある限りではかわいらしい女の子だった。彼女の両親は母の同僚で、一緒に旅行に出かける仲だった。俺もたまにつて連れって行ってもらい、その度レスリーと遊んだりしてた。最後に彼女を見たのは小学生2年の時だった。それ以来一度も会うことなく、記憶が薄くなっていく。

そして中学3年、卒業直前のある日、家に帰ったら母が興奮気味で俺に言った。

「ねぇねぇ聞いて!レスリーって覚えてる?あの子はね、なんと○○高に受かったって!」

正確に覚えていないが、とにかく結構いい高校だった。多分全国の高校ランキングのTOP3のどれかだ。入ってしまえば輝かしい未来が保証されるやつ。

「おぅ、そう……」

対して俺は勉強が不得手で、中学3年をダラダラ少して試験二ヵ月まえ急に目が覚めて猛勉強しても所詮は焼き付け刃。別県遠い全寮制私立高校に入ることとなった。レスリーと比べて、俺はゴミカス。

「電話してお祝いしてあげなよ!お友達なんだろ?」
「いや、別に……」

中坊の俺はほんとうにシャバ僧の具現化のようなダサいガキだった。腕が細くて、腹がぶよぶよ。服のセンスなし。髪の毛が脂っこい。話しも上手くできない。そんな奴はBULLYの餌食なるに決まっている。実際BULLYに遭ったので自己肯定感がとてつもなく低い。そんな精神状態でこれから虹色の人生に歩む顔も覚えていない女子にお祝いの言葉を送ると?新手の拷問かな?

「はい」

無理やりに電話機を持たされた。ダイアルはもう済んでいるもよう。俺は母からの圧に耐えれず、電話機を耳に当てた。ドゥルルルー、ドゥルルルー、ドゥルルッ

『はーいもしもし?』

繋がってしまった。大人っぽい女性の声だった。多分レスリーのお母さんだと思う。

『もしもし?どなた?』
「あ、その、レスリーは……」
『レスリーに?あっはいちょっと待ってくださいねー。レスリー!』

やべえ、緊張してきた、いやさっきから緊張しまくってたけどさっきの緊張レベルが10なら今は128になっている。ドッドッドッド、受話器から足音が聞こえた。

『もしもーし』

若い女性、というか少女らしい声。レスリーだ。クソ、成長してなお可愛らしい声しやがって。俺は年齢に不釣り合いのクソキモい低音だっていのに!

『もしもーし?ハロー?聞こえますかー?』
「……」

いい学校に受かっておめでとうございます。と言えばミッションクリアのはずだが、言葉が出なかった。出せなかった。

『なんか言ってよもう~もしかして○○ちゃん?』

向こうから知らない名前が出た。そうだな。こっちが名前を出さない限り、当てるしかないよな。お前の昔の友達のアクズメさんだぜ。もう覚えていないかもな。大丈夫、俺もお前の顔思い出せないから。しかし随分と嬉しいそうな声してますな。流石に未来の勝ち組確定さん、余裕を感じさせますね。でしたら俺も底辺なりに気持ちを伝わないとな。

「Fuck you、クソッタレが」

BULLYどもにも言えなかった言葉を滞ることなく言い放って、俺は電話を切って母に渡した。母はなんか言いたげな顔していたが、俺の顔色はそうさせなかった凄みがあったらしく後で咎められることがなかった。レスリーのことあれ以来聞くことがなかった。

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