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いざという時潔く死ねることになった

また生きているし、死ぬつもりはさらさらないが、タイトル通りのことになった。

3年前父が心筋梗塞で入院してそのまま亡くなってから支配者(お母さんのことだ)は生と死について考え始め、父が入院中に受けた延命処置で無駄に長く苦しんだとずっと悔やんでいたようで、親戚が集まる度この話を口にする。「もし私が逝ってしまったら……」毎回毎回、死後に何をしてほしいかとかで盛り上げてよぉ。全く辛気くさくてしかたねえわ。僕大きくなったらあんな大人になりたくないや。もっと生を謳歌しようぜ生をよ~と言いたいところだが、死に方は往々にして気分を決められないのも事実。

自分が死について考えてなかったわけじゃない。俺の想像では、60代か70代のアクズメさん、独身の一人暮らし。昼飯の辛い麵を食べながらNETFLIXを漠然と眺めていた。そしたら急に心臓が痙攣した!「ウッ」アクズメさんは急に動きが止まり、顔に苦痛の表情が浮かぶ。身体から力が抜けて、上半身が前に倒れて顔が麵碗に埋まってしまい、そのまま麻辣スープに溺れて死んでしまった。そして2ヶ月経過。死体の腐敗が進んで、ようやく腐乱臭と羽虫に気づいた隣人が通報し、ドアを破れた救急隊員がリビングでひでえ様になったアクズメさんを発見する。これがたぶん一番あり得る。診断で遺伝性心臓病のリスクがあると言われたもんね。

しかし万が一の場合、アクズメさんの家族や同居人がその場いて、即時に通報した上に救急車にCPRを行い、救急科に運ばれて処置した結果一命を取りとめたが、重篤な昏睡状態あるいは不可逆な脳損傷を受けて介抱なしでは生きられない状況になってしまった。想像するだけでぞっとする。

なので今回は支配者の意図に沿って、患者自主権利法に基づいた予立医療決定書なる契約にサインした。日本だと生前契約というらしい。俺が病気や怪我でもう救いようがない時にどうしてほしいか予め医療機関のデータベースに登録することだ。安楽死と自殺幇助はまた合法ではない俺の国では、自分の最期を左右できるのはこれが最大限だ。

主に以下の条件を満たした場合で契約に沿って医療機関が働きかける。俺は全部の延命処置を放棄することにした。リサーベーション・セプクだぜ。俺はまさにサムライ。

1.末期患者
「あなたは○○末期です」と宣告されても、死ぬまでは一月、半年、数年がかかったりする。その間のつらい治療が免れる。奇跡が起こって全快の例はなくもないがほぼフィクションに近いのですべての望みを捨てよう。アクズメさんは死ぬまでの日記を書いたりして同情心稼ぎまくってバズリまくってnote運営に勧められて本を出すよ。

2.回復が望めない昏睡状態
アクズメさんが襲って来たアサシンと格闘の末に頭を打たれて、病院の処置で一命取りとめたが、昏睡状態陥って目覚めることがなかった。賢明なアクズメさんは予めに延命治療は不要と署名したので看護師さんがチューブで糊状の食事を注いだりおむつ替えたりする辛い仕事から解放される。

3.植物人間
アクズメさんが襲って来たアサシンと格闘の末に頭を打たれて、病院の処置で一命取りとめたが、昏睡状態と違って、意識は保っているものの、身体を自主で動かせない状態になってしまった。賢明なアクズメさんは予めに延命治療は不要と署名したので看護師さんがチューブで糊状の食事を注いだりおむつ替えたりする辛い仕事から解放される。

4.重篤の認知症 
アクズメさんは年を取って、ボケた。ボケにボケたが最後、脳が退化して自分で食事やトイレすらできなくなった。賢明なアクズメさんは予めに延命治療は不要と署名したので看護師さんがチューブで糊状の食事を注いだりおむつ替えたりする辛い仕事から解放された。

5.対処方法が確立していない病気に罹った
幸いアクズメさんは現在この手の病気に罹っていないが、未来に罹らない保証がない。賢明なアクズメさんは予めに延命治療は不要と署名したので、アクズメさんは死ぬまでの日記を書いたりして同情心稼ぎまくってバズリまくってnote運営に勧められて本を出す。

そのほかに葬式はどのように行うか、土葬にするか火葬にするか、遺灰はどう処理するかも決めておいた。これじゃいつおっちんでも安心だ。そいえばSNSのアカウントはどう処理すべきかの欄に「俺が死んだとメッセージを残して、放置」と書いたので、多分ある日一言もなくインターネットから消えることはないと思う。その際はたくさんいいねとRTで拡散して頼む。

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