目を覚ませ僕らの大賞が何者かに狙われているぞ!7

『立つのだ、スーパーヒューマンサムライスクワッドの諸君』

新たに現れたグリッドマンは両手を広げ、煌びやかな光線を放った。それを照射を浴びたグリッドマンとスカイヴィッターは見る見るうちに傷が消え、エネルギーランプの点滅が止んだ。

『これはフィクサービーム!』グリッドマンは不思議そうに言った。『自分で受けるのは初めてだよ!』
「あったけぇ……助かったぜ、兄弟!」

グリッドマンは立ち上がり、スカイヴィッターはホバーリングして浮き上がる。チーム・サムライ作戦室では新しいグリッドマンでシドとタンカーが大興奮!

「ワッザ!?グリッドマンがもうひとり!?」
「配色がレッドとグレーがメインのに対して彼はブルーが多めね!肩パッドやヘルメットの形より鋭利な感じで素敵だわ!」
「DADASSで強そうだ!」

対して暗い部屋ではマルコムはガチギレしていた。

「うわああああああああ!!!!ふざけんなよぉぉおおおお!!!!うぬわあああああああああ!!!!」

ヒステリックを起こし、自分のゲーミングチェアを蹴り飛ばす!

「ご都合主義にもほどがあるだろうおおおお!!?ファックファックファーーーック!!!!」

カメラがデジ・ワールドに戻る。電子空間の中、2体のグリッドマンが会話を交わしていた。

『助けてくれてありがとう、えっと……』
『ボクの名はシグマ、グリッドマンシグマだ。理由あって現時点は名前しか開示できないが、キミたちの味方だ』
『そうなんだ。じゃよろしく、グリッドマンシグマ!』
「シグマか、かっこいい名前だぜ。ヴィッターとカラーが近いし親近感が湧くな!」
『シグマはどこから来たの?グリッドマンと似ているけどもしかして親戚とか?他にもグリッドマンがいたりするの?』
『まあ待て。聞きたいことがたくさんあるだろうが、メタウイルスモンスターはまた健在だろ?』
『あっ』
「そいえば」

三人の視線がメヒコマシェットⅡに集まる。

『グ、グリンゴォ!?』

注目されているメタウイルスモンスターが慌てだした。グリッドマンシグマに対してメタウイルスAIの処理速度が追いつかず、反応に窮しているのだ。

『ちゃっちゃと片付けしまおう』
『そうだな』

合意したグリッドマンとグリッドマンシグマは同時に両手を胴の前に交差しエネルギーを集中させる。

『『グリッドオオオッ……』』

両手で輪を描き、腰を落として発射姿勢を取る。グリッドマンは左手の甲、シグマは右手の甲にエネルギーが輝き出す。両者の動きはまるで鏡写しのようであった。

『『ビィィィィィムッ!!!』』

グリッドマンたちの手の甲から光が迸る!

「おれにも撃たせろッ!」

アンプも負けじとスカイヴィッターのビーム砲を発射!四本のビームがメヒコマシェットⅡに注がれる!

『ぷたあああああああ!!!!!』

メヒコマシェットⅡは断末魔をあげて爆発四散!暴虐の限りをつくし、数多くの逆噴射小説大賞参加者を葬り去った凶悪のメタウイルスモンスター、メヒコマシェットⅡ。彼自身もまたメキシコの荒野のルールに抗えず、デジ・ワールドに漂うキロバイトの素粒子に還った。END OF MEXCICO……

『ほんとうにありがとう、シグマ。もしきみが来なかったらどうなっていたものか……』
『気にするな、当然のことしたまでだ』

デジ・ワールドで、グリッドマンはもう一度グリッドマンに丁重に礼をした。

『それと、また聞きたいことがあるけど』
『先も言った通り、ボクが開示できる情報はかなり限られている。余計なことを言ってしまうとマルチバース秩序の乱れに及ぼす可能性がある』
「へー、つまりマルチバースから来たってこと?外星人としてますます親近感が湧くぜ!」
『あっ、しまっ......これ以上の会話が危険そうだ。とにかく近いうちにまた逢うことになるだろう。それまではお達者で!トォーッ!』

グリッドマンはジャンプし、電子の空に飛び立った。

『行っちまった』
「なんか格好つけてるけど、ドジっ子だなあいつ」
『また会えるといいよね』

グリッドマンとアンプがシグマが飛んでいく方向をしばらく眺めていた。

『んじゃ、フィクサービールを撒いて、帰るか』
「そうだな」

かくしてスーパーヒューマンサムライスクワッドの奮闘とグリットマンシグマの助力によりメタウイルスモンスターを撃破し、破壊されたデジ・ワールドも元に戻ったが、亡くなった逆噴射小説大賞参加者の命は帰ることがなかった。デジタル情報と違い、亡くした生物の命は簡単に再構築できないのだ。

しかしアンプはそれを楽観的に解釈した。

「どうせあいつらは日頃に暴力と不道徳しか頭にない犯罪者予備軍のような連中だ。死んでくれてむしろ社会的にメリットでしかない。おれ的にはむしろライバルが一気に減って大いに助かる。もう来年の逆噴射チャンピオンはおれで確定だぜクックックッ……」

などと言い、サムたちを引かせた。

そしてマルコムと言えば、グリットマンシグマの出現に煮え湯を飲まされ以来の彼は自信をなくし、学校を休んで何もせず暗い部屋で泣き喚いていた。

「もぉなんなんだよぉ……あのタイミング追加戦士なんて聞いていないよぉ……うぇぇぇ……」
『やかましいぞ卑しい肉袋め!』
「あっ、キロカーン様!どこ行ってたんですか!?」

突如にモニターで顕現するキロカーンに、マルコムは顔を寄せる。

「今まで何をしていたんですか!?あなたが居ない間、グリットマンがふたりも出てきて大変なことになりましたよ!あと一歩でグリットマンをやっつけるところだったのに!」
『ちょっと野暮用だ。それと、お前が書いた小説は読ませてもらった』
「!?」

マルコムは鳥肌が立った。人類の芸術を悉く下等生物の卑しき営みとして蔑んでいるキロカーンが自分の作品に目を通した。それだけで事態である。

「それでその……ど、どうでしたか?」
『いじめられ、世のすべてに怒りを覚える少年がハッキングで仕返しする話だったな。ルーザーどもが共感しそうだが、逆に言うとルーザー性を拗らせるのが不味かった。勝つために書いたんだろ?ルーザー性を強調してどうする』
「くっ」

言い返す言葉がない、マルコムは完全に打ちのめされる気分になった。

「すんませぇん……怪獣製作も小説も、なにをやっても上手くいかない僕で、ほんとにすいませぇん……」
『まあ、そんなに気を落とすことはないよ、マルコム君』
「えっ」

マルコムは慌てて振り返った。いつの間にか、背後は雰囲気がキロカーンとよく似ている暗い甲冑を纏った魔王じみた人物が立っており、肩を掴まれていた。

「えっと、どちらさまです?」
『私か?私はアレクシス・ケリヴ、君がよく知っているキロカーンと同じ立ち位置であり異なる世界から来たといったところかね?』

アレクシス・ケリヴと名乗った人物、その口調は穏やかで優しさがあって、マルコムは好感を覚えた。

「つまり……別次元におけるキロカーン様と同等の存在というところですか!?」
『鋭いねぇ、さすがキロカーンが手先をとして君を選んだわけか』
『ふん、こいつは妙なところに鋭いからのう。そろそろ説明してやれ』
『そうだね。マルコム君、きみはおかしくと思わないか?パーフェクトの作戦、完璧に仕上がるモンスター、すべてが上手く行けるように思ったにも、都合よく現れるグリットマンと彼に連なるおもちゃどもに邪魔され、毎回毎回敗北を喫することに疑いを抱いたりしないかい?』
「はい!それはもう、すごく抱いておりますとも!」

アレクシス・ケリヴの言葉に対し、マルコムは激しく同意した。

『君は正しい』アレクシス・ケリヴは頷いた。『グリットマン=必勝、その様式を覆るために、私はアンチグリットマン連盟に招集をかけた』
「アンチグリットマン連盟!?それはもしかして……」
『そう、君のようなグリットマンに悔恨のある者の集まりだ。連盟は君の怪獣を創り出す能力を必要としている。手助けする気はあるかね?』
「もちろんですとも!」マルコムは迷いもなく答えた。「憎きグリットマンに仕返しできるなら、微力ながら尽くしますとも!」
『合意ってことね』笑っているかのように、アレクシス・ケリヴのヘルメットは妖しく光った。『それでは参ろう、ユニバースへ!』

ひとつの事件が終わり、また別の事件が起きる。しかし今回は極めてヤバいにおいがするぜ!頑張れグリットマン、頑張れスーパーヒューマンサムライスクワッド!現実とデジ・ワールドの平和が君たちにかかっている!

(終わり)


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