招き獅子

ワー……ワー……

何処から聞こえる喧騒。私は眠りから覚めた。夢の中で見ていた脂が焙られて、脂が泡立っているベーコンが日差しを受けた朝霧のように散っていく。もう少しでかぶりつけるところだった。

唾液で濡れたあご髭を袖で拭く。今着ている服は一ヶ月も洗濯しておらず、カビと土と汗が複合した形容しがたい臭いが鼻孔に衝く。

だるい。腹が減りすぎて結局あまり眠れなかった。己に鞭を入れて立ち上がらせる。耳を澄ませる。

ワー……ワー……

男の、罵声、怒号、馬の鳴き声、金属音、衝突音。近くに戦闘が起きているそうだ。この窮地を脱するチャンスかもしれない。

「ぷふんっ」

我が四足の友人も興味を示しているようだ。彼女は私と違って草と露で十分生きられるが、そろそろ燕麦粥が恋しいか?

行ってみよう。そう決まれば善は急げだ。私は彼女の背中に乗って、林道をは走らせた。飢えに苦しんでいる私と違って、その辺の草を食していた四足の友人の足取りはまた軽やかだった。

「汚らしいケダモノ共!神の赦しのもとに貴様ら全員斬殺してくれるわ!」

先の三叉路から威勢のいい叫び声が聞こえた。鎧を着た騎士が追いはぎ達に囲まれいてた。

「かかってこい!神に授かれた我が剣に恐れをなしたか!」

確かに騎士が持っている鋼剣は賊が持っているなまくらよりずっと立派だが、多勢に無勢。今もまさに背後に回されている。

四足の友人の腹に蹴りを入れて加速させる。鞍に付けていた手斧を手に取る。賊の一人は接近してくる私に気づいて仲間に警告する。間合いは十分。斧を投げる。

馬の速度を乗せた斧は回転し、騎士の背後の賊の頭を割った。そのままの速度で集団に割り込み、鞍から飛び降りて騎士の隣に着地。我が賢い友人はそのまま走り去っていった。さて。

「助太刀致す、騎士様」

と言ってベルトにつけた二本のダガーを抜く。目を見開いていた騎士は顔が綻びた。

「感謝する!我が名はリチャード、共に切り拓こうぞ!」

(続かない)

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