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ふたりはPre-cure

Pre-cure! ふたりはPre-cure! 
未然を防ぎ、ハッピーなフューチャー
ふたりはPre-cure!
サミー・ザ・サイコロジスト、未来を覗き、現世のマジション(Pre-cure!)
クレイトン、マスター・オフ・マーシャルアーツ、舐めたやつは痛い目に遭うぞ(Pre-cure!)
Pre-cure! Two guys are Pre-cure(Pre-cure!)
Pre-cure! Two guys are Pre-cure(Pre-cure!)

「ふ〜ん、ふふ〜ん♪」

 今日は久しぶりに休暇を取った。朝食のパンケーキを食べ終え、外出の衣服を整えるべく鏡の前に立っている。今日はちょっとキザっぽく黒シャツにストライプスーツ、そして首周りにシュマグを巻いた。オーダーメイドのシーツは鍛えた俺のボディにフィットし、紳士的だが厳粛すぎない雰囲気を醸し出した。完璧。財布とスマホをポケットに差し込んで、コンヴァースシューズを履き、家を出た。

 今日は天気がいい、適度に涼しい風を肌で感じたおれは更にテンションがあげた。絶好のデート日和だ。先月の高校の同窓会で、ずっど好きだった鈴さんと再開でき、勇気を出して話しかけた。ナードでフリークだった俺の豹変ぶり驚いた鈴さんと話しが盛り上がって、別の日また一緒に食事と約束した。

 横浜行きの電車の中で、思春期の少年みたいに心を躍らせた俺は鈴さんとの会話ログを何度も読み返して、思わず口元が緩んで「ンフフ」と声を出して笑った。向こう席から訝しむ視線が刺さったが、俺の心は今その気まずさをかき消すほど、ポジティブだ。

『We are now at Sakuraki-chou. Pleases remember your pacakeges.....』

 電車を降り、俺は踊るような軽快なステップで改札に出た。午前10時、約束の時間まであと1時間半ぐらいある、どこで時間を潰そうか……と思っている俺は、二人の男を目にした。

 一人は格子シャツとジーンズ、ふさふさの茶髪と口ひげ、黒縁のメガネ。テンプレのナード姿だ。もう一人は黒の半袖Tシャツと軍風の迷彩パンツ、はげ頭に対し、顎にアブラハム・リンカーンみたく立派なひげが整っている。身体は逞しく、レスラーみたいな風貌だ。二人とも白人。

 流石は観光都市横浜、外人も結構いる。しかし寒さに強いな、11月なのによく半袖で外を歩き回るもんだ。あっ、でもなんかこっちを見ている?赤毛が俺に指さし、近づいてくる。

「きみ、ちょっと!」

うわっ、日本語で話しかけてきた。踵返して場からさろうとしたが、振り向いた途端はげ頭が腕を組んで俺の前に仁王立ちしていた。馬鹿な、さっきまで赤毛の隣にいたぞ!

「怖がらなくていい、ちょっと話を聞いてほしいんだ!」と赤毛が言った。いや、白人男性二人に挟まれて、ビビるわ普通。

「僕はサミー、彼はクレイトン。僕たちはPre-cureという自警活動をしている」

「へ、へえー。そうなんすかぁ」サミーの話を聞き流しながら、助けを求めるべく目を泳がせて、駅員と目が会ったが、彼は僅かに微笑んで、頷いただけだった。助けろって!

「無駄だ。おれたちは地元と良い関係を築いてある。支持を得ている。大人しくし最後まで聞いてもらうぞ」クレイトンが厳しい面でそう告げた。おれは緊張で背中から汗が吹き出た。

「じゃ、続くね。実は僕、未来のヴィションがが見えて、この力を用いて事前に人々を不幸から遠ざける、いわば予防接種みたいなもの。それがPre-cureの由来です」

「はぁ……」

「三年前、僕は能力が目覚めた。最初に見たのは飲み会が終え、家に帰ったOLだった。小腹が空いたか、彼女はお餅を二枚オーブンに入れて焼いた。数分後、酔いで判断力が落ちたせいか、彼女は膨らんだ餅を一気に半分口に入れてしまった。焼き立てのお餅の熱さは半端ではなく、彼女の口内を蹂躙した。すぐ吐き出そうとしたものの、舌と上顎の皮膚が既にやけどした。やけにリアルな夢だと思った僕は、会社で顰めた顔でストローでポカリを啜る彼女を見た。彼女は僕の部下だった。そして次は……」

「それって」俺は熱心に語っているサミーを遮った。「俺を呼び止めたことに関係ありますかね……?」

「そうだ、要キュア者は必ずおまえの物語に興味あるとは限らないんだ、サミー。その説明癖は直したほうがいい」

 要キュア者ってなんだよ。あと興味ないところかいますぐこの状況から脱したくて仕方ないだよ。

「すまない、つい。とにかく僕はこの力で役に立ちたいと思って、Pre-cureを始めたんだ」サミーは落ちかけるメガネをグイッと押し戻した。「本題に入ろう。二日前、僕はまたヴィジョンを見たんだ。中華街の路地裏に倒れ、バットを持った男に踏みつけられる、きみを」

「あのさぁ、これって新手の勧誘ですかぁ?新宿の駅前でアンケート取るおばさんでももっと上手く話をリードできたよ?」

「いや、サミーのヴィジョンは嘘ではなく、現実かつ事実。元レンジャーのおれが保証する。彼が居なければ、おれは沖縄のバーで死んでいた」

「へぇー」元レンジャーだってよ。次は何が出るんだ?元コマンドー?

「きみは今日中、中華街踏みに入れない方がいい。そうすれば未来は変えられる」

 サミーは真摯に言った。いや、それは困る。今日は午後鈴さんと二週間前から予約した北京ダック食べる予定だ。

「いや、俺、そういうの信じないし……」

「あんた、その身なり、デートだな?」とクレイトン。

「ああ、そうだけど」

「なら仕方ない。ならプランBで行こう」

 クレイトンは腰の後ろに手をまわし、あれを取り出した。テイザー銃だ。俺は訝しんで身を構えた。

「これを貸してやる。一時間八千円でいい」

「えっ?」

Pre-cure! Two guys are Pre-cure(Pre-cure!)
Pre-cure! Two guys are Pre-cure(Pre-cure!)

(続く)


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