炒飯神太郎④

「ちょっとおばあさん!?ダメだってベイビーをこんなに乱暴に扱っちゃ!」
「鈍くなちまったかおじいさん脳に違和感がなかったかい?このガキはさっき思考操作系の術を展開しようとしていたぜ」
「ななっ、なんだってー!? リンゴ飴じみた愛らしい赤子は実際その心に邪悪な思惑を秘めていたとは!さてはもものけの類か!純朴な生活を過ごしている老人を騙すだなんて言語道断!」

そう言っておじいさんはスプーンを捨てて飛び上がりました。その右手は既に溶鉄じみた光と熱を発しています。

「赤子よ!せめて私の火雲掌をもって貴様を苦痛なく葬ってやろう!刹ァーッ!」
⦅⦅待て!⦆⦆

燃ゆる指先を赤子に突き刺そうとする途端、強力のテレパシーがおじいさんとおばあさんに脳に響きました。

⦅⦅待ちたまえ、善良なる老夫婦。誤解しないでくれ。先ほどChar-Fiテザリングを展開したのは、また言葉を発せない私が意思疎通を図るための手段に過ぎない。あなた達の自由意識を干涉するつもりは微塵もないと分かっていただきたい⦆⦆
「……」

赤熱しているおじいさんの指先は赤子の額に届くまで1インチのところで留まりました。

「じゃあお前は一体何者で、なんの目的をもってチャーハンに埋まって川に流れていたか、全部説明してもうらおうじゃないか」
⦅⦅分った。ではまずこの体勢から解放していただき......⦆⦆
「だめだ。またお前が無害だと決まったわけじゃない」
⦅⦅むっ。まあ良かろう。では、私の歴史が今から辿って二千六百年、また地上に混沌が蔓延し、魑魅魍魎が跋扈する時代……⦆⦆
「遡りすぎ。ダイジェストで言え」

宙吊り状態でのうのうと語りだす赤ん坊を、おばあさんは指に力を込めて脅しました。

⦅⦅つまり私はチャーハンの神的な存在で、数日の前敵との戦いで深手を負い川に落ちたところで最後の力を絞って鍋とチャーハンを生成した。私はその時のフィードバックでこのような無力の姿になってしまったが、このまま川を下っていくときっと誰かチャーハンのにおいに釣られて鍋を拾って私を救助するはず、それがあなた方である。助けてくれることに感謝する。願わくばもうしばらく私をここに匿って頂きたい⦆⦆
「匿う?お前さっき誰かに負けたと言ったよな?つまりあやつらがまたお前を捜し回っている可能性が十分にある。そんな奴を、純朴な生活を過ごしている老夫婦のうちらが保護する義理がないだろ……」
⦅⦅そうか……返礼として私が毎日手に平から白米200gを生成しそれをチャーハンにしてあげようと思ったのだが、非常に残念だ。そのまま私を鍋ごと川に戻し……⦆⦆
「いや気が変わった。気が済むまでうちに居てくれて構わない」
⦅⦅なんと!感謝するぞ心優しいマダム!⦆⦆
「おばあさん!それはちょっと早計ではないか!?」
「黙れじじい。もうアンタの虫プロテインにうんざりなんだ」
「おばあさん……やはり米に飢えていたのね……くっ!夫だというのに、なんで私はこんなに情けないんだ……!」

おじいさんの男のプライドがちょっと傷つきました。

「これからは共同生活だ。よろしくなボウズ。えっと名前は……」
⦅⦅名前なら私には炒飯神炒漢という格好いい名が⦆⦆
「はぁ?そんなキラキラネーム使っての?駄目だ恥ずかしすぎて言えそうにない。こうしよう。チャーハンから出たから、この国の命名法則に因んで、炒飯神太郎に名付けよう」
⦅⦅……元と比べてキラキラ度合が減るところか増している気がするが⦆⦆
「はい決まりィ!今日からお前を炒飯神太郎と呼ぶ。よろしくな炒飯神太郎!」

こうして、おばあさん、おじいさん、そして炒飯神太郎三人の生活が始まりました。

(続く)

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