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炊飯仙人炊翁 ③

炒飯軍団チャー・レギオン、ACTIVATE]

炊翁の小屋周囲の林の中、チャーネットに通じて炒飯神太郎を指令を受信し、炒飯軍団の男女老若が一斉に立ち上りました。ある者は素手、ある者は棍棒、斧、鉈など得物を手に持っていいます。彼らは陸上選手のような完璧なフォルムの走り出します、主である炒飯神太郎の元へ。

「……何が起きている?」

不穏な雰囲気に気づき、炊翁は警戒を強めます。

「さぁて、私はちょっと見物としようかね!」

炒飯神太郎は軽快ステップを踏んで飛び下がり距離を取る。林を抜けて、殺到したのは犬の四人。

「炒飯神太郎様ッ!」
「馳せ参じましたッ!」
「ワンワンワンワン!」
「炊き込みご飯など犬も食わんッ!」

炊翁は驚いて目を見開きました。

「きみたちは下流の村の少年たち!なぜここに!?」
「炊き込みご飯を滅ぼしに来たさッ!」

先頭の犬が棍棒を振り下ろします。炊翁のスピードでは棍棒を掴んで止めますが、その隙に犬の二人が横に回って炊翁の腕にホールドをかけます。

「ワァーウ!」

もう一人の犬がチャーハンカロリーでブーストされた脚力で炊翁の頭上を飛び越え、すかさずチョークホールドをかけた。少年たちが腕に力を込めて炊翁を縛りあげる、あたかも冥界の番犬ケルベウスに噛みつかれたかのように!

「しっかり掴めよ!ドリャーッ!」

棍棒犬が身動き取れない炊翁にふたたび棍棒で殴りつけました。頭から血が溢れますが、炊翁は体より心が痛かった。かつて布教活動で下流の村に行った時、碌に仕事を手伝いもせず遊んでばかりで飯抜きにされた四人と出会ったことがありました。炊翁が彼らに炊き込みご飯の握り飯を分けたあげると、少年たちは涙目ながらそれをを貪り、これからはちゃんと家の手伝いをすると言いました。

(決して悪い子供たちではなかった。なのに今は炒飯神太郎の手下となって私を攻撃している。一体なにがあったんだ?)

「もう一発いくぜ!ダリャーッ!」

水牛の頭をも砕けるスイングに対し、炊翁はタイミングを合わせて頭突きを繰り出します。すると、パァーン!棍棒が折れて、前半部分が飛んで棍棒犬の顔面に直撃します。「ぎゃっ!」昏倒!

炊翁は次に背後と左右にホールドをかけている犬の足を順番に踏みつけました。「ぎゃ」「わっ」「ぃだっ」激痛で拘束を解いてしまう三犬に、炊翁は風のように身を翻して胸に掌打ちを叩き込みます。

「「「ぐわーっ!」」」

吹き飛ぶ三犬。間髪いれず、上空から何かが来ます。

「関心の外から失礼しまーーーッス!」

屠韋汰天狗のダイビング爪攻撃!炊翁は咄嗟に上半身を逸らすが回避しきれず、顔に浅い切り傷が残りました。

「流石に速いねぇ!心臓えぐれるつもりだったのに!」
「屠韋汰天狗!?お前はまで!?」
「炊き込みご飯に死を!ハーハハッ!」

屠韋汰天狗は笑いながら羽ばたいて昇っていきます。

(屠韋汰天狗……たまにこちらにちょっかい出すが根は悪い奴ではないはず……なんか妙だ)

思考している炊翁に石が飛来します。それをキャッチした炊翁が石が飛んでくる方向に目を向けると、また目を見開きました。今日の3回目です

「なっ、サルベージ村の人々が!?」
「「「「炊き込みご飯に死を」」」」

四方から炒飯軍団となった村人が次々と現れて炊翁を包囲します。

「皆、どうしてしまったんだ!?」
「我々は名もなき米粒だった」

棒を持った村人が下段に薙ぎ払い、炊翁がジャンプして回避。

「やめてくれ!私がわからないのか!?」
「「「炒飯神太郎様が現れて、チャーハンを振舞った」」」

滞空している炊翁を村人三人が襲い掛かります。四人が空中で激しい打ち合いを交わします。

「村に炊き出しに行ったことを忘れたのか!」
「我々がチャーハンを口にし、新生を得た」

着地した瞬間に横から迫ってくる斧を、炊翁が手刀で柄を折りました。

「米はひと粒では取るに足らないとも」
「うぐっ」

投石が側頭部に当たって、炊翁がよろめきます。

「たくさん有れば」
「具を入れ」
「油で炒めれば」
「強くなる」
「チャーハンとなる」

村人が次々と押し寄せます。

(続く)


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