電撃!ピカチュウと仏教

私が通っていた小学校は昔、就学区内にお寺があって、そこで修行している小坊主、あるいは沙弥が何人いました。

出家したとはいえ、義務教育を受けなければなりません。僧衣を着て学校を通い、世俗の子供たちと同じ教室で授業を受けました。なんか学園ファンタジー漫画っぽい光景ですが、彼らとはクラスが違うし、住む世界が違う雰囲気があるたので、自分からコミュニケーションを取ろうと思いませんでした。

我が校は一年に一回、フリーマーケットが開かれます。生徒が要らなくなった漫画、おもちゃ、ゲームソフトなどを学校に持ってきて、自分で値段をつけて売買するイベントです。学生に商業を体験させてビジネスセンスを養うという大義名分があるばかりの闇市です。

私はその年のフリーマーケットに漫画本を数本出しました。その中に電撃!ピカチュウの1、2巻が含まれていました。ポケモンのコミカライズの中でもけっこう有名な作品です。特に2巻でカスミが胸を大きくしたいがために乳房を持ち上げて温泉に打たせるシーンは幼かった私のこころに多大な刺激を与えました。Game Freakと任天堂がよくGOサインを出したものですよ。後日に作者のおのとしひろと上連雀三平が同一人物だと知った時は納得しかありませんでした。

カスミの乳房は素晴らしいけれど、純真なポケモンファンとして、この漫画はどこかイケないと常々思っていました。この漫画を持っている限り、いずれ私は平常心でポケモンを見れなくなってしまう……!そう思った私は今回のフリーマーケットで電撃!ピカチュウにおさらばすることにしました。

そして私の店に思わぬ客人が来ました。沙弥です。灰色の僧衣を纏って、私が机に並んでいる漫画本を物色しています。僧侶なのに世俗のものに興味あるのか!?と当初は驚きました。沙弥は電撃!ピカチュウの2冊に指を差し、尋ねてきました。

「これ、いくつですか?」
「あっはい、1冊40元です」
「40元か……」
「2冊まとめて買うと70円にしときますよ」
「じゃ、買います」

金を頂いて、沙弥が本を持って立ち去ったあとに、私は猛然と思い出しました。電撃!ピカチュウ特に2巻は修行者の心を乱すに十分な内容だったってことを。しかし『お待ちなさい!きみにはその本が邪淫すぎます!』と叫んで追いかける勇気と積極性は当時の私にはなかった。ま、いっか。私は店に戻りました。そのあとも度々このことを思い出し、あの沙弥はお寺に戻って漫画をこっそり読んだかな?カスミの乳房を見てなにを思ったかな?バレて住持さんに反省棒で叩かれたりしないかな?と思い馳せます。


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