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炊飯仙人炊翁 ②

「刹ァッ!」

炒飯神太郎は足を踏み込んで一瞬にして距離を詰めます。視線を炊翁の顔面に留めて右手の掌底を打ち出します。

(殺気はわしに向かっていない、此奴の真の目標は……!)

炒飯神太郎の意図を察知し、炊翁は心を痛めながらも炊き込みご飯を盛った茶碗を炒飯神太郎に投げつけて背後にある鍋を庇います。

「チッ」

炒飯神太郎は舌打ちして、茶碗を叩き落します。茶碗が割り、炊き込みご飯が無残に床に散りました。彼は最初から視線でフェイントをかけて、鍋の破壊を狙う算段でした。

「踏ッ!発ァッ!」

炊翁は馬歩を踏み、防御態勢を取ります。炒飯神太郎は肉薄します。

「ハイッ!ハイッ!ハイッ!ハイッ!」
「ホァッ!ホァッ!ホァッ!ホァッ!」

至近距離の打ち合い、激しい拳脚の応酬です。

「いい加減にせよッ!」

炊飯タキオン粒子を纏って拳、タキオン拳を繰り出します。光速よりも速いタキオン拳は相対性理論や因果律など回りくどい話に関係なく、単純に超速い。だから強い。光速よりも速いため実質対処不可能です。

「ぐわっ!」

タキオン拳を受けて、炒飯神太郎はくの字に曲がって、藁の天井を突き破って外へ飛んでいきます。

「逃がさんぞ!ホァァァァッ!!」

炊翁は軽功で一瞬にして追いついて、炒飯神太郎の胸と腹に連続キック、タキオン無影脚を叩き込みます。こちらもやはり光速よりも速いため実質対処不可能でした。

「んごおぉ!!」

炒飯神太郎はキューに突かれたビリアード玉のように弾かれて、地面に衝突しました。土煙が舞い上がります。

軽功着地を決めた炊翁はしかしすぐさまにしゃがみ込んで踵を揉み始めました。

「アァー……スゥー……」

痛そうな表情をしています。何があったんでしょうか?パチパチパチ、土煙の中から拍手の音が聞こえてきます。

「ブラボー、ブラボー。アッパレ炊飯粒子、速度においてやはりかないそうにないわ」

土煙が散り、地面にめり込んでいる炒飯神太郎は上半身を起こしていました。服は破けてセクシーな胸板と腹筋が露わになっていますが、肉体の方はなんと無傷です。

「手ごたえが違うを思ったら、やはり、硬功か」踵を揉むのやめて立ち上がります。「小賢しい真似を……」
「貴様への仕返しだけを考えて、私はこの一年間に屈辱を耐えて、徹底的に鍛えなおしたのだ」
「無駄だ。如何に防御を固めたところで、天下武功、無堅不破、唯快不破!一発がだめだとしたら、千発を叩き込むまで!貴様とて生物である以上、いつか必ず隙が生まれる!」

ファイティングポーズを構えて、闘志が沸き上がる炊翁。対して炒飯神太郎はゆっくり体を地面から抜け出します。

「貴様は速い、その脅威は身をもって思い知られたからな……だからこちらも色々備えてきた」

炒飯神太郎は右手を掲げて、指を鳴らしました。

炒飯軍団チャー・レギオン、アクティベート!」

(続く)


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