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灰汁詰めのナヴォー

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小説っぽいなにかがあります
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2020年8月の記事一覧

あの味を、もう一度

あの味を、もう一度

 シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム 10500円

 その一行を目にして、紫サリィが目を細めた。20年前、フロバンスのナメクジというレストランで食べたっきりで、驚きの味だった。しかし翌年にナメクジの廃業と共に、消えたと思われたシュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタムが、まさか東洋の祖国で再びまみえるとは。サリィは手を翳すと、後ろに控えていたオーナーの井伏は動いた。

「ご注文は決ま

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