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Little free libraryとの出会い

「店、辞めてアメリカ行ってくるわ。」

後輩の中澤の前で僕はいきって言った。

「へー、どうしたんスカ?」

納豆定食にカルピスソーダを飲みながら、チャラい感じで中澤が聞いて来た。

僕は、納豆定食にコーラを飲みながら、ドヤった顔でそれに答えた。

「世界を見てくるわ。」

納豆定食にカルピスソーダを満足そうに飲みながら中澤は、とても軽い返事を返して来た。

「チョースゲー」

納豆定食にカルピスソーダを組み合わせて飲むやつには、もう二度と夢は語らないとその時決めた。


後日、会社に退職届を出してその足で旅行会社に向かいアメリカ行きを決めて来た。

僕は英語はほとんど喋れなかったが、アメリカ人も同じ人間なのでなんとかなるだろうと思った。

さっそくユナイテッド航空の機内の中で英語の実力を試す場面がやってきた。

機内ファーストドリンクをMaryというCAさんに聞かれ、僕は自信満々に答えた。

「ドラフトビアープリーズ」

とびっきりの笑顔で答えてくれたMaryが出して来てくれた飲み物は、ベジタブルジュースだった。

美味しかった。

たぶんMaryは、英語が苦手なんだと思う。

そしてなんだかんだでアメリカに行ったは良いが、何をしたら良いか分からず近所をふらふらしている時に出会ったのがSmithさん宅のLittle free libraryだった。

libraryをのぞいていると、山のように大きなSmithさんが声をかけてきてくれた。

僕は、自分の持っている英語の引き出しを全開にして聞くことにした。

「この本箱は何なんだろうか?」

そんな疑問にはこうだ

指差しながら、

「ワッツ?ワッツワッツプリーズ」

英語なんて簡単だ。

するとSmithさんが答えてくれた。

ライブラリーの単語だけがなんとか聞き取れた。

ライブラリーが図書館だと言うことは、状況からして僕でもなんとなく理解できる。

その他に頭の中で聞き取れた単語を組み立てると、どうやらこのとても可愛らしい素敵な本箱はSmithさんの小さな図書館らしいことがわかってきた。

感動した僕は英語と身振り手振りで、アメリカにあてもなく日本から来たこと。世界を見てみたいと思ったこと。美容の仕事をしていること。を一生懸命に伝えた。

Smithさんは、「Wow」「Oh」言っていたが、伝わっている様子は全然無かった。

たぶんSmithさんも、納豆定食にカルピスソーダを飲むタイプなんだと思う。

そんな僕を不憫に思ったのか、Smithさんが家でランチをご馳走してくれた。

あり得ない量のフライドポテトとマンホールほどの大きさのピザとバケツぐらいの大きさのコーラで胸焼けしながらも、僕は人の優しさと思いやりとカロリーで胸いっぱいになった。

僕は、いつかこのSmithさんから受けた気持ちと恩を少しでも次に渡して(Pay it forward)繋いでいこうと心からそう思ったが、「中澤にだけは絶対渡さない」と心に誓った。

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