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社会主義3.0と民主主義2.0とついでにおいしいラーメンの話。

ミャオ将軍に学ぶ新時代の社会主義国家

もりちか画・まつだこうた構成『あゝ我らがミャオ将軍』が死ぬほど面白い。ベトナムと北朝鮮とソビエトを足して割ったような社会主義国家である「コルドナ」を舞台に、父親の後をついで将軍になったミャオが国際舞台で、あるいは国内政治や日常のほのぼのを過ごすという社会主義ギャグコメディ。ミャオは9歳なのだが、まずその9歳の体の描き方の完成度が高い。胴体が太いイカ型とよく言うけれど、それが完璧に描けている。

内容もいい。ミャオ将軍が超かわいいし、周りのキャラも立ってる。あと国民も実に〈社会主義国家〉的というか、ほのぼのしている。社会主義の「ノリ」をイカしつつ、さらに資本主義にも返り血を浴びせる批判性もある。もし、ミャオ将軍のような指導者がいたら、社会主義も悪くなかったかもな、と思わせるぐらいにいい。というより、この『ミャオ将軍』は要するに社会主義国家に対するゆがんだ〈アコガレ〉抜きには成立しない作品なのだ。

シャカイシュギはやる気を調整できる

それは80年代を通じて経済成長に失敗し戦争続きで疲弊し人民はやる気を失い政治が腐敗した「シャカイシュギ」が、中国の台頭で最適化次第ではもっと腐敗しやすい「シホンシュギ」よりも優れた政治形態なのではないか、といった西側陣営(ニッポンのことです)の恐怖心がある。これはたぶん社会主義国家VS資本主義国家の経済戦争がどうたら、というよりも、複雑化した社会の中では意思決定プロセスがたくさんあるより、やる/やらないで解決する中央集権システムと、やる気や元気や配給を調整するテクノロジーの相乗効果がすごい、ってことだ。

コロナウイルスの病院をやる気で作っている途中

武漢ではコロナウイルスで死者が100名単位で出るほど切迫しており、ある統計ではすでに疑似患者数は1万を超えた(問題化からやく一週間で、だ)ことになった。それで武漢の病院を今一生懸命作っているのだけれど(そろそろ一部が稼働する)、それをオンラインで生放送し、よい動きをする重機に「いいね」が付けられるようになっている。

こちらは過去ログがわりに。これでみんな「いいね」をもらえるように必死で頑張り、さらに病院建設もはかどるって訳。こうした「いいね」の配分は本来「神(ユーザー)の見えざる手」によるものだったけど、それを相乗的に使いつつ都市封鎖や封じ込めでウイルスの拡散を防ごうとしている。

神の見えざる手を操る2.0

それがいいかどうかって話はしない。でも、ここにあるのは「神の手」と「人の壁」の合わせ技で、これは社会主義3.0の目標でもあると同時に民主主義2.0が目指した地点でもあった、つまり「見えざる神の手を操ること」。多くが腐敗や金や暴力で操ろうとしてきた神を、自発的に、人が肉の手によって操ろうとする。現代はそれに成功しつつあるってことだ。

ラーメン屋でラーメン喰いたい。

ところが、社会主義国家VS資本主義国家の構図で操れないものがある。それが「うまいラーメン屋」をめぐる戦いだ。たしかに「売れるラーメン屋」を広告などで作り出すことは可能だけれど、「うまいラーメン屋」を作るのは並大抵のことではない。ラーメン屋に「いいね」はなく、うまいラーメンとは舌の上にしかないから、操りようがないのだった。

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