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お見合い途中下車→「地獄への切符」入手…今週の『虎に翼』

日本初の女性弁護士で、後に裁判官となった女性・猪爪寅子(伊藤沙莉さん)とその仲間たちが、困難な時代に道なき道を切り開き、迷える子供や追い詰められた女性たちを救っていくリーガルエンターテイメント、朝ドラ『虎に翼』の第1週「女賢しくて牛売り損なう?」。

女学校卒業間近の寅子が、母・はる(石田ゆり子さん)から見合いプレッシャーを受け続けていた月曜日。現代的な価値観を持った女性を演じることが多い石田さんが、良妻賢母的なキャラなのが珍しい。

やる気0のお見合い時の何とも言えない表情、対等な関係を望むといわれたお見合い相手への熱弁ぶり、当時の「常識」に疑問を呈する時の「はて?」顔と、多彩な表情を魅せる伊藤さん。初回からエンジン全開です。

なお、第1週サブタイトルは「女賢しくて牛売り損なう?」。「女は利口のようでも大局を見通す力が無く、目先の欲に捉われて、かえって事を仕損じる」という例えで、現在では完全にアウト。第2週が「女三人寄ればかしましい?」ですから、「?=はて?」ということなのでしょう。

寅子の兄・直道(上川周作さん)と寅子の親友・花江(森田望智さん)の結婚の準備が進められていた火曜日。はるの親戚に不幸があったため、香川県丸亀の実家に帰ることに。その間、寅子が家事を任されるのですが…。

夜学に通う書生の佐田優三(仲野太賀さん)のための弁当を忘れていた寅子。慌てて大学に届けようとするのですが、教室から聞こえてきた「女性は無能力者」に思わず反応。そこで寅子は、教授の穂高重親(小林薫さん)と、裁判官の桂場等一郎(松山ケンイチさん)と出会います。

寅子との短いやり取りの中で、その才能を感じた穂高教授が、寅子に「明律大学女子部法科」への入学を勧めた水曜日。寅子も俄然法律に興味を示し、娘を溺愛する父・直言を説得し、鬼(はる)がいない間に願書を出そうとするのですが…。

はるが帰ってきてから家族で話し合った方がいいのでは?と助言した寅子の女学校の先生役を演じていたのは、舞台を中心に活躍する伊勢佳世さん(『地味スゴ』では副編集長役)。『あさイチ』鈴木奈穂子アナが通った、法政大学女子高等学校(現・法政大学国際高等学校)の同級生だそうです。

はるを説得すると豪語していた直言ですが、いざ帰ってくると何も言い出せず。痺れを切らした寅子を察知し、止めたのが花江。結婚までは、はなの機嫌を取るのが大事だと言い、自らが直道と婚約に至るまでの周到な道程を明かし、寅子にもしたたかに行けと助言。寅子「えげつない女」(笑)

寅子が親友・花江のために「したたかに=穏便に」過ごしていた木曜日。ついに結婚式当日を迎え、来賓に酌をして回る寅子ら女性たち。リクエストにより寅子は「モン・パパ」を歌い盛り上げますが、その表情には怒りと我慢。

式後、花江からは「もう我慢しなくていいよ」の言葉。爆発寸前の寅子をよく見ている。そんな時、偶然出会ったのが穂高教授。直言は教え子で、はるとの馴れ初めも知っており。

マズい、と思った寅子でしたが、後の祭り。穂高教授は願書の話をしてきて、合格だと告げ。はるの怖い表情。帰宅後、寅子は謝罪し、穂高教授とのやり取りを話し始めるのですが…。

はるが寅子の進学に反対し、あくまでお見合いを主張した金曜日。その背景には、自分の経験から「頭のいい女が確実に幸せになるためには、頭の悪い女のフリをするしかないの」という持論にありました。

お見合い用の振袖を新たに仕立てるため、甘味処で待ち合わせすることになり、寅子が先に着くと、そこには桂場が今にも団子を食べようとしていて。寅子は母をどう説得するか尋ねるのですが、桂場はそもそも女性が法律を学ぶのは「時期尚早」という考え。

さらに、「母親一人説得できないようじゃ話にならない」「君のように甘やかされて育ったお嬢さんは、土俵に上がるまでもなく、血を見るまでもなく、傷つき泣いて逃げだすのがオチだろう」と、団子タイムを邪魔された腹いせか、散々な言い様。

これを聞いて「お黙んなさい!」と間に入ってきたのがはる。「何が時期尚早ですか、泣いて逃げだすですか。そうやって、女の可能性の芽を摘んできたのはどこの誰?男たちでしょう!」と反論。振袖ではなく、六法全書を買ってもらった寅子は、ようやく「地獄への切符」を手に入れました。

『逃げ恥』における「自分に呪いをかけないで」の石田さん。朝ドラ『おかえりモネ』にける「女性の笑顔はドン引きと表裏一体と覚えといてください」の森田さん。そんなお二人が、テンプレな戦前型の良妻賢母&良家の子女を演じると思わせてのちゃぶ台返しが面白かったです。

本作の脚本家・吉田恵里香さんは、BLドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』が大ヒット。その後、朝ドラ前のテストともいえる『恋せぬふたり』では、他者に恋愛感情も性的欲求も抱かない「アロマンティック・アセクシュアル」の男女を描き、向田邦子賞を受賞した多様性の人。

『虎に翼』の戦前は、男尊女卑が強い風潮の中で、寅子が奮闘するという流れにはなるのでしょうが、今までのようなテンプレ型には嵌めず、男にも女にも様々な人たちがいて、多様な生き方を選択している(あるいは強要されている)という描き方を、吉田さんならするのではないでしょうか。

石田さんや森田さんが演じたキャラクターがまさにそうでしょうし、明律大学女子部法科」で寅子が出会う仲間たちもまた(エキストラなのに意味ありげな女性たちの数々も)。そして、その多様な生き方を知った寅子の経験が、戦後の家庭裁判所での審判に活かされていくのかなと予想しています。


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