これは私たちの物語…最終週の『カムカムエヴリバディ』
3人のヒロイン(上白石萌音さん・深津絵里さん・川栄李奈さん)が織りなす、ラジオ英語講座と共に歩んだ家族100年の物語、朝ドラ『カムカムエヴリバディ』の第23週(最終週)「2003-2025」。
るい(深津さん)と錠一郎(オダギリジョーさん)が老いメイクで、リアルタイムな2022年からスタートした月曜日。岡山の喫茶店で「おいしゅうなれ」とコーヒーを入れるるい。電話してきたひなた(川栄さん)はマスク姿で、例の感染症を作品に入れてくるのは『おかえりモネ』に引き続き。
主題歌明け、時代は2003年に遡り。クリスマスフェスティバル直前、緊張のるいにサプライズで“大阪の母”の和子(濱田マリさん)が招待されていて。さらに、ジョーにはトミー(早乙女太一さん)から木暮(近藤芳正さん)が招待され。るいもジョーも号泣。
再び現代から始まった火曜日。ひなたはキャスティングディレクターになっていて、NHKの小川未来(紺野まひるさん)からラジオ英会話講座のオファーを受けることに。小川との話から、彼女が安子を助けてくれた主婦の孫と判明。一人二役キャスト多用の妙。
過去に戻り、クリスマスフェスティバル直前。ラジオ出演しているアニー(森山良子さん)が突然日本語を話し始め。稔(松村北斗さん)との思い出の映画で感情が堰を切ったように、結婚や出産、出征と戦死、そして娘の傷のことを語りだす展開。
最初はまさか、いやいやそんなはずはと動揺しながらも聞き入るるいでしたが、アニー(安子)の「るい」の言葉で確信、そして涙。ほぼ深津さんの表情の変化だけで見せる演技と演出が素晴しい。
三度、現代からスタートした水曜日。ラジオ英会話講座の講師話を思案するひなたは映画村に。そこで再会した虚無蔵(松重豊さん)からは「そなたが鍛錬し培い身につけたものはそなたのもの。一生の宝となるもの。されどその宝は分かち与えるほどに、輝きが増すものと心得よ」と再びひなたを後押しする名言。虚無蔵さんがお元気で何より。にしても、何歳設定?
過去に戻り、クリスマスフェスティバルがついに開幕。トミーとジョーの演奏に感涙する小暮さん。一方、アニーが行ってしまったと報告を受け落ち込むるいのもとに一子(市川実日子)が現れ、歌う意味を問うるいに「意味があんのかないんか、分からんことをやる。誰かのことを思てやる。それだけでええんとちゃう?」とこれまた名言でるいを元気づけました。
そして終盤、米国に帰ったはずのアニーがクリスマスフェスティバル会場前に佇む姿を見つけたひなたが声をかけるも、アニーが激走(笑)。ついに例の神社で倒れ込み終了。『あさイチ』川栄さん回で、走る指示が脚本にあったとは聞いていましたが、まさかこれほどとは。
ひなたがラジオ英会話講座の講師を始めた近未来の木曜日。傍らには語り担当の城田優さん(ウィリアム・ローレンス=ビリー役)。過去では、ついにひなたがアニーを確保。その頃、るいもステージに立ち、ジョーの東京時代の音源を取り寄せたトミーの粋な計らいの中、歌がスタート。
と、そこに飛び込んできたアニーとひなた。驚くるいは歌い続けるも、途中でステージを降りアニー(安子)と涙の抱擁。そして、るいの口から「I love you」。こうなるとは思いましたが、いいシーンでした。
安子が米国に行ってからのロバート(村雨辰剛さん)との暮らしぶりや、安子とるいの和解を、イメージ的に幼少期のるい役の古川凛さんと上白石さんとで描いたシーンもよかったですね。
2025年3月までが描かれた金曜日。人々はマスクをしていない未来線。「たちばな」を巡る伏線回収をはじめ、桃太郎(青木柚さん)の結婚や甲子園出場など、多くの登場人物たちの「その後」が描かれ、怒涛の情報量の海の中、ハッピーエンドな最終回となりました。
「これは、すべての『私』の物語」と謳っていた『カムカム』。祖父母や曾祖父世代まで遡れば、日本人はかつてみな戦争を体験したわけで。三世代、四世代の間には、様々なドラマがあったことでしょう。
「これは私たちの物語」そんな風に思えた作品でした。半年間ありがとうございました。そして、しばらくは余韻に浸りながらも、同時進行で次の朝ドラ『ちむどんどん』にも目を向けたいと思います。『ちゅらさん』ファンとしては、沖縄が舞台のこの作品にも期待しています。
余談:ヒロインの中で、ひなただけが五十嵐(本郷奏多さん)と結ばれず、初恋のビリーと人生のパートナーになりそうな気配で終了。敢えて、ひなただけ子供を産まないであろう生き方にしたのは、現代的な多様性を示していたでしょうし、その意味でも弟・桃太郎という存在がいたのかなと。