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第158講 冷戦後の東南アジア・東アジア

158-1 冷戦後の東南アジア

Keyword 
1:ASEAN自由貿易圏 
2:アジア=ヨーロッパ会合(ASEM) 
3:カンボジアのASEAN加盟 
4:アジア通貨危機 
5:スハルトが退陣 
6:東ティモール独立 
7:マハティール 
8:小泉純一郎 
9:ASEAN+3 
10:自由で開かれたインド・太平洋 
11:環太平洋パートナーシップ協定(TPP) 
12:域内包括的経済連携
13:ミャンマーの民主化 
14:アウンサンスーチー 
15:国民民主連盟 
16:ロヒンギャ


冷戦後の東南アジア


 東南アジア諸国は冷戦後、アジア通貨危機による打撃を乗り越え、10カ国体制となったASEAN諸国が連携を強め、経済発展を続けている。

 当初反共組織として結成された東南アジア諸国連(ASEAN)は、ヴェトナム戦争と冷戦の終結後は、経済協力をすすめる組織へと性格を変えた。

 域内経済協力をすすめ1993年1:ASEAN自由貿易圏を結成し域内関税の引き下げなどを行った。

 1996年、ASEANとEUの協力をすすめるための会議として2:アジア=ヨーロッパ会合(ASEM)がはじまり、2年ごとに開催されている。

 1999年 3:カンボジアのASEAN加盟によりASEANは現在の10カ国体制となった。

ASEAN加盟国 
1967年 (①インドネシア)(②マレーシア)(③フィリピン)(④シンガポール )(⑤タイ)
1984年(⑥ブルネイ)  
1995年(⑦ヴェトナム)
1997年(⑧ラオス)(⑨ミャンマー) 
1999年(⑩カンボジア)

 1997年、タイの通貨バーツの急落をきっかけに東南アジア諸国や韓国の通貨が暴落し経済が大混乱に陥る4:アジア通貨危機が発生。これを受けて、IMF(国際通貨基金)が各国に資金援助を行い、経済改革を要求した。アジア通貨危機によりタイでは政権が交代し、インドネシアでは5:スハルトが退陣した。

 スハルトの退陣により、インドネシアが譲歩し、2002年6:東ティモール独立が実現した。*1975年にポルトガルから独立を宣言したが、スハルト政権がインドネシア領と主張し占領・支配していた。


 21世紀に入るとマレーシアの7:マハティール首相や日本の8:小泉純一郎首相によってASEAN諸国と日本・中国・韓国で構成された地域協力の枠組み9:ASEAN+3が提案された。


 今日ASEAN諸国は、日本などが提唱している「10:自由で開かれたインド・太平洋」の中心に位置し、経済発展を続けている。


 ブルネイ・ヴェトナム・シンガポール・マレーシアは、日本などとともに11:環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に参加し、2016年12カ国体制で合意文書に署名がなされた。

 2017年にアメリカ合衆国(トランプ政権)が離脱したが、2021年に英国(ジョンソン政権)が加盟を申請し、2023年に英国の加盟が承認された。

TPP参加国  
オセアニア(オーストラリア、ニュージーランド) 
南米(チリ、ペルー、メキシコ) 
北米(カナダ、アメリカ→2017年離脱)
東南アジア(ブルネイ、ヴェトナム、シンガポール、マレーシア) 
東アジア(日本)


 ASEAN諸国・日・中・韓・オーストラリア・ニュージーランドは2020年、域内の自由貿易を推進する12:域内包括的経済連携(RCEP)に調印した。


 2011年、軍事政権が続いた13:ミャンマーの民主化が実現し、2015年の選挙で14:アウンサンスーチー率いる15:国民民主連盟(NLD)が政権についた。

 イスラーム教徒が多くを占める少数民族16:ロヒンギャの弾圧などの問題を抱えて、国際的な非難を浴びた。

 2021年のクーデタで再び軍事政権が成立した。


158-2 冷戦後の東アジア

台湾

 台湾では、独立を志向する1:民主進歩党(民進党)と、中華人民共和国との関係を重視する2:国民党の二大政党による政権交代が定着した。

 民主化をすすめた国民党の3:李登輝総統(任1988~2000)退陣後、2000年に就任した民進党の4:陳水扁総統(任2000~2008)は本土との対立をまねいたが、2008年に就任した国民党の5:馬英九総統(任2008~2016)は胡錦濤政権、習近平政権との関係改善につとめた。2016年の総統選挙では台湾初の女性総統となる民進党の6:蔡英文(任2016~)総統が就任し、2020年の選挙でも再選された。

大韓民国

 1997年タイの通貨バーツの暴落からはじまった7:アジア通貨危機では、韓国ウォンも暴落し大きな打撃を受けたが、その後は経済発展を続け2008年以降8:G20サミットに参加するようになった。

 民主化後初の文民出身大統領となった9:金泳三大統領(任1993~1998)に続いて就任した10:金大中大統領(任1998~2003)は、アジア通貨危機後の混乱を収拾し、北朝鮮との対話を重視した11:太陽政策をかかげ、2000年、韓国大統領として初めて平壌を訪問し12:金正日総書記と13:南北首脳会談を行った。*同年シドニー五輪では南北統一選手団が入場行進した。

 続いて、左派の14:盧武鉉大統領(任2003~2008)、右派の15:李明博大統領(ハンナラ党、任2008~2013)、朴正煕の娘で女性初の16:朴槿恵大統領(任2013~2017)が就任した。

 2017年、朴槿恵が任期途中で辞任し、左派の17:文在寅大統領(任2017~)が就任した。

 2022年、右派の尹錫悦(ユン・ソンニョル)が大統領選挙で勝利し、大統領に就任した。


朝鮮民主主義人民共和国



 1994年に18:金日成が死去し、息子の19:金正日が後継者となり、金正日の死後、息子の20:金正恩が指導者となった。

 2000年韓国の21:金大中大統領を平壌に招いて22:南北首脳会談を行った。

 2002年日本の23:小泉純一郎首相が訪朝し平壌で行われた日朝首脳会談で、24:日本人拉致の事実を認め、拉致被害者5名の帰国が実現した。*横田めぐみさんら多くの被害者が現在も帰国できず。

 2005年に25:核拡散防止条約(NPT)からの脱退を宣言し、2006年に核実験を行い26:北朝鮮の核実験が成功したことを内外に印象付けた。



158-3 中華人民共和国の発展


Keyword 
1:南巡講話 
2:趙紫陽 
3:江沢民 
4:アジア通貨危機 
5:香港返還 
6:マカオ返還 
7:一国二制度 
8:中華人民共和国のWTO加盟 
9:上海協力機構 
10:胡錦濤 
11:温家宝 
12:北朝鮮の核実験 
13:六カ国協議 
14:国際金融危機 
15:G20サミット 
16:チベット反中国運動 
17:ウイグル反中国運動 
18:習近平 
19:李克強 
20:一帯一路 
21:香港国家安全維持法 


江沢民の時代


 1989年の第二次天安門事件後、政治的な混乱がみられたが、鄧小平の「1:南巡講話」にもとづいて92年に改革・開放政策が再開され、年率10%前後の経済成長をつづけた。

 1989年2:趙紫陽総書記にかわった3:江沢民総書記(任1989~2002)は、「三つの代表」政策などで共産党の基盤を拡大して一党独裁を維持した。

 1997年に起きた4:アジア通貨危機で、韓国やインドネシアなどアジアNIESとASEAN諸国の経済が低迷するなか、中国は廉価な労働力とインフラを提供する世界の生産拠点となり(「世界の工場」)、国民の購買力がしだいに上昇して「世界の市場」ともなった。

 1997年には英国から5:香港返還が、99年にはポルトガルから6:マカオ返還が実現し、これらの地域には「7:一国二制度」が適用された。

 2001年、8:中華人民共和国のWTO加盟が実現した。

 ロシア、中華人民共和国、カザフスタン、キルギス、タジキスタンが1996年創設した上海ファイブにウズベキスタンが加わり、2001年9:上海協力機構が創設された。*2017年インドとパキスタンが加盟、2023年イランが加盟。

上海協力機構加盟国 
1996年(①ロシア)(②中華人民共和国)(③カザフスタン)(④キルギス)(⑤タジキスタン)
2001年(⑥ウズベキスタン)  
2017年(⑦インド)(⑧パキスタン)
2023年(⑨イラン)


胡錦濤の時代


 3:江沢民ののち、10:胡錦濤総書記(任2002~2012)が就任し、2003年国家主席を兼ね、11:温家宝を国務院総理(首相)とした。任期中中華人民共和国はGDP世界第二位に成長した。2008年には北京オリンピックを成功させた。

 2006年12:北朝鮮の核実験が成功すると、米・露・日・南北朝鮮の代表を北京に招き13:六カ国協議を開催したが、成果は上がらなかった。*核問題だけでなく、拉致問題も進展せず。

 2008年14:国際金融危機(米国投資銀行リーマン=ブラザーズの倒産に端を発しリーマン=ショックとよばれる)をきっかけにはじまった15:G20サミット(20カ国地域首脳会合)に参加し、合衆国に次ぐ経済大国として国際経済における発言権を強めた。

G20参加国
G20は、G7(後述)の7か国に、BRI アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、欧州連合・欧州中央銀行を加えた20か国・地域のことです。

G7 ・・・ 日本、アメリカ合衆国、ドイツ、イタリア、グレートブリテン、フランス、カナダ
BRICS  ・・・ ブラジル、ロシア、インド、中華人民共和国、南アフリカ
その他 → インドネシア、トルコ、アルゼンチン、サウジアラビア、韓国、メキシコ、オーストラリア、欧州連合

 チベット自治区で2008年、独立を求める大規模な 16:チベット反中国運動がおこ

 新疆ウイグル自治区では、急増した漢族の経済的優位に対する反発が広がり、2009年、広東省でおきたウイグル人暴行殺害事件をきっかけにウルムチなどで大規模な17:ウイグル反中国運動がおこり、治安当局との衝突で多数の死傷者を出した。

習近平の時代 

 2012年18:習近平総書記(任2012~)が就任し、2013年国家主席を兼ね、19:李克強を国務院総理(首相)とした。

 習近平政権は、「20:一帯一路」をかかげ、アフロユーラシア諸地域への影響力拡大をはかっている。

 2019年香港で民主制維持を求める大規模なデモが起こると、2020年21:香港国家安全維持法を制定し、香港に対する統制を強めた。


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