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0711 織り始めはいつも

織り始めはいつも新しいはじまりであって、
それでいてまったくのはじまりではないと思う。

最初の緯糸(よこいと)をわたすまでに、
膨大な作業を続けてきたからだ。
機(はた)に経糸(たていと)をかける
綜絖(そうこう)に経糸を通す
筬(おさ)に経糸を通す
経糸をデザイン通りの順番で長さを揃える(整経 せいけい)
糸の糊付け
糸の染色
座繰り(ざぐり)
作業をさかのぼると、繭から糸を挽く座繰りに行き当たる。

けれど。
どんなものを織りたいかイメージして糸を挽いて、
とわたしの習う先生はおっしゃる。
糸をつくる段階から、織りあがる布を意識するように言われるのだ。
それは、糸が繭から挽き出されるその前の、
イメージするという行為こそが、
布づくりのはじまりということに他ならない。

まったくのはじまりはいつも無から、
インスピレーションを通してうまれるもの。

それを具現化するために、
糸を挽き、染めて、経糸を揃え、機にかけて、
形とする最終段階のはじまりが、
緯糸を通して織り始めること。

目に見える形で、現存するものとして、
それを生み出すための、新しいはじまり。


そしてそのはじまりは、
自分が積みあげてきたいくつもの作業の上に成り立っていることを、
忘れずにいよう。
織り始められることは、よろこびであり誇り。
これまでの作業の到達点であり、これからの出発点。

織り上げるまでの新たな旅を存分に楽しむつもりだ。





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