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つばめがやって来た。伸びた麦の穂の先をかすめるように素早く飛んでいく、鋭角の翼。あんなに低く飛ぶのはつばめに違いない、と二日前に思ったのだったが、確認できなかったのだった。小麦畑をまた黒い影がよぎって、少しの間待っていたら、一羽がひゅうっと飛んできて、アパートの外灯に降り立ち、すぐに回れ右してまた飛んで行った。短い挨拶だったけれど伝わった。つばめがやって来た。この近くに巣があるのだ。残念ながらわたしの家ではないのだけれど。

今日も空は白と銀色を混ぜたような水色。また藤の花に会いに行った。平安時代の貴族みたいだと思った。ちょうど藤の木に着いたら、ぱらぱらと天気雨が降った。そんなことはおかまいなしに、真っ黒で大きいハチは藤の花に顔を埋めていた。二日前より葉が茂っていて、うすいきみどりがつるのような枝を縁取っていた。陽の光に透かされた葉は、実物よりもごく薄く見えて、透明で華奢なガラス細工みたいだった。まだ芽生えたばかりの糸みたいに細い、葉の赤ちゃんに触れてみたら、思ったよりもかたくてびっくりした。これから固まったしわを伸ばして開いて、そうしてやはらかな葉になるのだと知った。

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