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たくさんの白鷺が、曇り空の中を大きく飛び回っていた。白っぽい灰色の空に、空の色とは違う白灰色が舞い散り、空の色を切り裂いて目の前を渡っていく。

白鳥はかなしからずや空の青海のあをにも染まずただよふ

という歌を思い出して、でも白鳥も白鷺もただ生きて飛んでいるだけだと思った。鳥は飛ぶ意味を考えたりしない。意味を与えるのは、いつも人間だ。

ほっそりとした翼がたおやかにひろがって、白鷺は一度の羽ばたきで長く遠くへ飛ぶ。ヒバリが羽根を小刻みにぱたぱたと動かして飛んでいるのを、つい昨日か一昨日に見たばかりで、どちらがいいというわけではなくて、そのどちらもがそのままで美しいのだった。

意味を考えたりせずに、ありのままであるだけで、鳥たちは己れの真実を生きている。人であるわたしも、そうであれたらいい。



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