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ここが真西、と目とこころに刻む、春分の日。
公園の大きな柳の木は、強い風の中、ゆうらりゆうらりと枝をしならせていた。まるでそよ風に吹かれているような優雅さだった。そのゆったりとした、浮遊感さえ感じさせる枝の動きに見とれた。しだれた細い枝は長い髪の毛のように空中で舞った。枝についた葉っぱはまだ小さく、あたらしい黄緑色で、風にたなびくとさざ波のようにふるえていた。柳ぜんたいがこんなに動いているのに、音がしない。とても不思議だ。静かで、現実離れしている。しばらく、その奇妙な静謐のなかにいた。胸の前にぽっかりと空間ができて、それがどんどん拡がっていくように感じた。ふうわりとしなやかに。
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