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水たまりの中の空に、彩雲が現れた。それはものすごくきらめいて、ピンクからブルーのきれいなグラデーションを描いていた。強いきらめきに目を奪われた、その一瞬のあとも、ずっと光って映っていたけれど、最初に目に入った完璧な美しさは、もう訪れなかった。

知り合いの絵の個展に行ったのだった。館内は飲食禁止だから、外の簡易休憩スペースで、みんなでお昼を食べた。太陽と真向かいに座っていたので、おでこに日が当たって熱くて痛い。時折空に彩雲が見えた。小さな範囲にピンクとグリーンが光っていた。少し風があって紙コップが飛ばされた。あたたかくて、ピクニックみたいだねとみんなで言い合った。自転車で、この前にも見に来てくれたという男性がやってきて、一緒にお茶を飲みながら昔ドイツにいた頃の話をしてくれた。長テーブルの向こうに、ずっと水たまりはあったのだけれど、その時急に目に入ったのは、太陽がそこに映るようになったからだ。さっきまで空と雲しか映っていなかったのに、水面には太陽がきらきらと輝いていた。そして一瞬強烈に光って、美しい彩雲が見えたのだった。写真を撮りたい、と思ったけれど、ドイツの話は続いていて、わたしはただ水たまりを見つめ続けた。色を変えて、形を変えて、色彩と光が踊っていた。空には彩雲は見えなかった。

個展の会場は、レンガ壁の蔵で、天井が高く広々としていて、とても気持ちのいい空間だった。深いロイヤルブルーとマゼンダがかったピンクが、明るいグリーンの環の中に描かれている絵が、とても好きだと思った。ときめき、と題された絵だった。

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