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0810 朝の公園

朝日に向かって歩いていたら、白っぽく靄がかったようなひかりの中に、蓮畑を見た。その場所だけまるで後光が射しているみたいに、神々しかった。すうっと伸びた茎の先の花びらが、ひかりを受けて透き通っている。侵してはならない気がして、距離を置いて写真を撮った。

静かだけれどにぎやかだった。赤トンボが飛んで、蝶々もいた。時々、翅が蓮の葉に当たる音がする。水色のトンボもいた。懐かしいと思った。ようやくその場になじんだかんじになって、わたしは蓮に鼻を近づけた。ミントのような清涼な香りに、へえと思って、そうかと思って、もう一度嗅いだ。蓮の香りを初めて知って、世界への足場が一つ増える。ぱたぱたっと音がして、何だろうと見やると蓮の花びらが葉の中に落ちていた。それを聞くことができたのは、きっとすごく幸運だ。

蓮の葉の向こうの水面は、風もないのに、いくつもいくつも波紋ができていて、よく見ればアメンボがすいすいと歩いているのだった。池べりにしゃがんでたくさんのアメンボを見ていた。正面から太陽に照らされて、まぶしかったし暑かったけれど、しばらく夢中になっていた。アメンボの足の動き、波紋の生まれる様子、その重なり方。見ていて飽きない。

池の向こうの木立から、ミンミンゼミの声が聞こえていた。鳥も鳴いていた。暑さと湿気で、音が遠く聞こえる。サルスベリの木が見えていたから、立ちあがって、向こう側へと渡った。手の届くところにあった花の匂いを嗅いで、わたしはまた一つ世界を知った。沈丁花に似た香り。花の色が、むらさきというだけでは言い表せないむらさき色だった。

帰り際に水色のトンボの検索をした。シオカラトンボ。そうだった、シオカラトンボ。幼い頃に目の前を何匹も飛んでいた記憶が、ぱあっとよみがえった。


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