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引っ越すことを決めたら、いつもの見慣れた風景がとても愛おしく大切に思えて、時々泣きたくなる。稲刈りが終わった田んぼに夕日の淡い光が落ちていくのも、セキレイの鳴く声も、もう二度と見聞きできなくなるわけではないけれど、普段の日常で経験することはなくなるのだと思うと、ありがたくて胸がいっぱいになる。この場所から眺めていた山々の姿かたちは、引っ越したら違う見え方の大きさも異なるものになる。親しんでよく話しかけていた木々も草花も、引っ越したらそばにはいなくなる。よく見かけた白鷺も、鳴いていたコオロギも、ベランダにやって来ていたカエルも、みんなここの住人で、引っ越し先には連れていけない。何気なくそこにあったものは、かけがえのないことだった。豊かでのどかで、やさしいところ。ここを気に入っていたのだと、いまになって気づく。わたしはここが好きで、そしてこの場所に守られていたのだなと思った。感謝の気持ちがあふれて、また泣いてしまう。大好きな場所や植物たちに、ひとつずつ感謝を伝えに行かなくちゃ。当たり前にそこにいてくれてありがとうって。


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