見出し画像

私は人の顔を描くのが好きだ。

私は人の顔を描くのが好きだ。心から大好きだ。

人の顔を描いている間は、その人のことをずーっと考えている。知っている人だろうがなかろうがだ。その人が生まれた日のことを想像し、ここに至るまでにあったことだろうことを思ったり、これから先のことを祈るように願ったり。

描きながら、しょっちゅう泣く。バカじゃないかと思う。どうしても感極まってしまうのだ。私にしか見えないこの人の美しさを表したい、といつも思う。どうすればそうできるのか、毎回チャレンジしている。

今日描いたこの子は私にとって、スペシャルな子だ。彼女は今年で二十歳になる。彼女が16・7歳の時から、お絵かきの個人レッスンを毎週してきた。彼女はとてもクレバーで、私とある特定の好みが似ている。気が合う。彼女はスペクトラム自閉症を持っていて、レッスンを始めた頃は時々発作も起きて、私も彼女との接し方を学ぶのに苦労した。

そして、わかった。彼女には絵の描き方を教えてはいけない、ということ。
「こうして、ああして」と指示を出すと。OCD(強迫性障害)が出る。
彼女が描きたいものを選ばせて、一緒に描く。彼女は私が描いているの横目で見て、自分で学ぶ。今日は自画像を描こうと彼女から言った。それで、彼女が自分の写真を選んだ。
「この私の変な顔がいいと思うの、これ描きたい」と。
そう、私と彼女は「変なもの」が好きなのだ。伊藤潤二の漫画も好きなのだ。

今年の初めに家族旅行で日本に行った時に、寒くて雨が降ってて、母親がカメラ向けて「笑らって」と言ったら、半泣きみたいな顔で写っていた。それが面白いと思って描きたくなるのが、彼女の素晴らしいところ。

私はいつもより2倍くらい泣きながら、この絵を描いた。よくぞここまで成長してくれた。嬉しい。

無印良品ノートB5にえんぴつ画

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?