散歩の一枚 5
ん゙ぁっ、ぐあぁ〜。
ちっ!寝起きの第一声が気に入らねぇ。これでも若い頃は、朝ぱっと目が開いたら、
「くあぁ〜、かあぁぁぁ〜」
てな感じで、美声を森じゅうに響き渡らせてたもんだ。歳はとりたくねぇな。
それにしても、この森に住んでずいぶん経つけどよ、このあたりの人間たちは、朝が早ぇ〜。陽がのぼる前から動いてやがる。
せっかくいい気分で木に止まってる時でも、疲れて羽根を休めてる時でも、ぶぉぉーんと音が聞こえてくる。なんだ、まだ暗いじゃねーか。おい、いったい何時なんだよ?
2時か。
すげーだろ?俺、時計が分かるんだぜ。森の近くに公園があってよ、大きな人間や小さい人間たちが、この時計を見て「ほら、もう3時だから、そろそろ帰るわよ!」「え〜!まだすべり台行きたい〜!」「えぇっ・・・あと1回だけよ」「わーい!」なーんて会話を聴いて、時計を見て、ああ、あれが3時っていうのか。てな具合で時計に何が書いてあるか覚えたんだぜ。
ん?じゃあ時計は?ってか?人間たちが「トケートケー」ってうっせーから、何なんだよと思って、指さす方を見たら、それが時計だったってわけだ。すっかり俺の時計自慢が長くなっちまったな。ふっ。
ほら、見てみろよ。この辺りに住んでる人間たちは、この時間から軽トラに何やらでっかいブツを積んで走ってるんだぜ。積んでない時もあるけどよ、小っちぇ箱をいくつも積んでる時は、しばらくして、美味そうなモノ積んでまた走ってるんだよな。へへへっ。
4時ぐらいになると屋根がついてるいろんな色の車がぽつぽつ走ってくるんだぜ。でも、道路には誰もいねーからよ、こいつら飛ばすんだ。すんごいスピードで走っていくんだぜ。いつもどこ行ってんだよ、ったく。あ、バイクもいるな。公園に小さい人間がたくさん来る日は、でっかいバイクが、どや!ぶんぶんぶんぶん!って。どこに行くんだか知らねーけどよ、一緒に走ってみてぇ。
で、5時ぐらいになってくると、今度は歩いたり走ったりする人間たちが現れるんだ。犬と一緒に歩いてる人間もいるな。
走ってる人間はいつもコースが決まってるみたいで、あ、服もだいたいおんなじ服で走ってるぜ。俺、いつも見てるんだけど、あいつ、気づいてねぇんだろうな。ていうか、俺らカラスも、この時間になると、たくさん森から出てくるから、あいつ、今日もカラスがたくさんいるな、ぐらいしか思わねぇんだろうな。でも、俺は一生懸命走ってるお前が好きだぜ。
で、お前さんだ。初めまして、だよな。あ、俺、人間らしい挨拶もできるんだぜ。よーく見て聴いてるだろ?んなこたぁ、どーでもよくて、お前さんはどうしてここに来たんだ?散歩?ああ、あの歩いてる人間たちがやってるのは散歩っていうやつか。もうずいぶん長いのか?なに?始めたばかりだと?あー、この時期よくいるんだよな。朝涼しくなったから、歩き始めよっかなっていうヤツ。今まで何人も見てきたぜ。でもいつの間にか、いなくなるんだぜ。あれ、なんでなんだよ?ってお前さんに聴いても分かんねぇよな。何?そうやって長続きしないのを『三日坊主』って言うのか?ふむふむ、ふむふむ、そっか。じゃあ、お前さんは『三日坊主』とやらになるなよ。だって、せっかく会ったんだから、また会いたいじゃねえかよ。え?じゃあ、せっかく会えたから、写真撮ってもいいかって?おう、いくらでも撮れよ。あ、でも嫌がるカラスもいるからな、それだけは気をつけろよ。
撮った!
カッコよく撮ってくれたか!?ん?撮れたは撮れたけど、ちょっと小さいかなって?なんで、小さいんだよ?そんな小さいカメラで撮ってるから、小さいんじゃねぇのか!?もうちょっと距離を詰めたら、もう少し大きく撮れるかもって?お、俺は、これぐらいの距離でいーんだよ。あ、おい、まさか顔だけじゃねえだろうな?いちおう全身撮れてますって、いちおうってなんだよ!?いや、まあ、いいや。そろそろ行くんだろ?気をつけて歩けよ。明日も来るよな?え?毎日違う道を歩くから、明日は分からねぇのか。じゃあ、今度ここに来た時は、また会おうぜ。
というカラスに出会っているかもしれない散歩の日々です。
あ、今朝は空がピカピカ光っていたので、散歩休みました。
でも、あとでどこか歩いてこようかなぁ・・・。
以上です(`・ω・´)ゞ
記事を書くための栄養源にします(^^;)