新型コロナウイルスによる台湾マスク炎上騒動の話

中国・武漢発の新型コロナウイルスの報道が日に日に加熱している。筆者は現在台湾に滞在しているのだが、各地厳戒態勢が見受けられる。なぜなら台湾はWHO(世界保健機関)に加入していない(したくても出来ない)ため、国全体の”自衛”が必要だからだ。

中国と同じく旧正月を祝う風習がある台湾は、旧大晦日~年始5日目ぐらいまで、一部の個人商店やコンビニを除き大体の会社や工場が連休に入る。そんな中でコロナウイルスが「やべえ奴」だと報道されると、どういった現象が起こるかお分かりだろうか。マスク工場は稼働していないが、人々はマスクを大量に購入する。そう、深刻なマスク不足が起こるのである。

しらべぇさんに寄稿した記事でも少し触れているが、台湾は現在マスク戦争が勃発中だ。どの薬局にもオタクイベントの初日ぐらい人が並んでいる。当初は何か限定グッズでも発売されたのかなと呑気に構えていたが、民が求めているのはサージカルマスクだ。花粉や粉塵のみならず、ウイルスも防御できる医療スタッフが使用しているタイプの物が現在台湾では飛ぶように売れている。

そんな中、数々の”炎上芸”も沸き起こった。台湾政府が「マスクの輸出を一か月間制限します!」と発表した翌日、まず前台湾総統の馬英九氏がブチ切れる。

「同胞が困っているのに助けないとは何事だ」彼はそう言った。現在中国に散々いじめられている台湾で、中国を「同胞」と呼んでいいのか否かは常に国民の間で議論される話題だ。馬氏は中国国民党所属のどちらかというと親中派なのでこのような発言をしたと見受けられる。彼にも色々あるのだが、この辺の話は長くなるのでまたの機会にするとしよう。

台湾のマスクはそもそも中国からの輸入に頼っている割合が大きい。年間数百万単位のマスクをあちらに輸出しているが、輸入している数は億を超えるという。現在中国が大変な状況であるため、ウイルス感染が収束するまでは台湾国内生産マスクでなんとかするしかない。これが現実だ。

「困ったときは助けなきゃ」という馬氏の主張はごもっともである。しかしそれは平時のみに適応されることだ。自国民を犠牲にしてまで隣国を助けるよりも、まずは自国民を守り、体制を立て直してから救助や支援をするのが一般的な考えだろう。この発言は当然ネットで大炎上。流石に頭の中が疑問でいっぱいになった私も「じゃあ~~~あなたの家にある~~~~マスクを~~~全部寄付したらいいんじゃないですか~~~~!?」と脳内で叫んでしまった。ネットを見たら「お前が今つけてるマスクを送ってやれクソが」と書いている人がいて笑った。そして同意した。

そして、この発言をきっかけに台湾や中国で活躍していたタレントも何人かとんでもない発言をSNSに投稿しはじめる。

女性タレントの范瑋琪は、なんと台湾の行政院長(官房長官的なポジション)に対する罵詈雑言を本名でやっていたFB鍵アカウントに投稿。ドン引きレベルの口と頭の悪さを露呈した。彼女の書き込みは、悪口のレパートリーが他言語に比べて少ない日本語では表すことのできない程下品な言葉のオンパレードだった。そのスクリーンショットが身内によって大公開されたのである。

その後、范氏は「台湾のマスクが足りないことなんて知らなかった」と一応謝罪したが、ネットの怒りは更にヒートアップ。すかさず「そんなに私にキレないでよ!私が不幸になればいいの!?」という旨の逆切れ文章を公開し、火に油を注いでいる状態だ。日本なら今後仕事が無くなるレベルの暴れっぷり。芸能人ってイメージ重視じゃなかったっけ。

その他にも「日本でマスク1万個買った!これを武漢に送る!台湾政府はクソ!」と発言した大S,小Sという姉妹タレントがいた。どちらも台湾ではかなりの知名度を誇る司会者なのだが、タレント生命をここで終わらせたいのだろうか。これには「そもそも日本でマスクを買い占めたと自慢すな」「東京の人は1万個買えるマスクが減ったのか。可哀想…」といった反応が寄せられた。1万個もよく運搬できたなあ。

といった感じで、台湾ではマスク戦争が勃発、日に日に報道が過熱しているのである。

日本の友人たちは、皆マスクが品切れていると口にし始めている。日本の生産ラインなら「全く品がない」ということはないだろうし、ユニ・チャームの担当者も売り上げに期待してます!と言い出す始末だ、在庫には自信があるのだろう(知らんけど)。

しかし、武漢をはじめとする中国からの入国をいち早く制限または禁止している台湾でもこの有り様だ。海外の目線から見ると色々対応が遅い上に甘い日本、発症者が増え続けている日本は、これから一体どうなってしまうのだろうか。

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