ひとりぼっちの春子

春子には友達も恋人もいない。

人付き合いは苦手な方だと思う。些細なことが気になってしまって、一喜一憂するのに疲れて、いつからか人付き合いを避けるようになってしまった。

そうすると、そういうオーラが出てくるんだろう。自然と遊びに誘われることも、声をかけられることも減っていった。

寂しさを感じる時もあるけど、今更、そんなこと声に出して言えない。どうしたらいいかもわからない。

年末年始は特に現実を思い知らされる。

クリスマスに恋人がいないことを揶揄して「クリぼっち」なんて言葉が流行ったが、春子はとっくのとうにひとりぼっちだった。いつもと変わらず、淡々と仕事をこなすのみ。

お正月はもっとしんどい。友達との忘年会、年越しなんてあったもんじゃないし、親戚同士の集まりで当たり前のように浴びせられる「パートナーはいないの、結婚しないの、子どもは…」のセクハラ。笑って受け流すことができれば、気の利いた一言でも返したら、そう思うけれど言葉が出てこない。楽しい宴に水を差すように、とたんに不機嫌になって相手を攻撃することしかできなかった。



ぜんぶ、ぜんぶ、自分のせいだ。

ちょっと美味しいものを食べるとか、コスメを買うとか、ヘアサロンに行くとか。自分のゴキゲンを取る方法はいくつか持っている。でも、そんなの一瞬の気休めにしかならない。

本当は、わたしだって。

こんなはずじゃなかったと、自分が一番実感している。




春子は今日も鎧をまとう。うん、笑っているように見える。

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