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【感想・書籍】「サピエンス全史(上)」第2部 農業革命 第7章 書記体系の発明

今日は「サピエンス全史(上)」第2部 第7章についての感想を書きます^^
この章から、サピエンスは自分の脳の外に記憶を残し、それを管理し、編集し、共有する技術を発明し、新たな歴史を作っていきます。

農業革命に伴う大きな環境変化に、徐々に適応しながら生きる人類の強かさを感じる章でした。
困難な課題を解決していくための「発明」を次々と(実際には数千年を挟むこともありますが)生み出し,急速に変化する環境に適応していく人類の強かさです。

「不可能は可能になる」
「思いは実現する」
という人類の創造力の強烈さを感じるとともに,その代償についても思いを馳せる章でした。

そうして様々な「発明」を経て発展してきた現代。
人類は,自らが作り出したものとどのように「共生」していくのでしょうか。
その答えはここでは書かれていませんが,様々なことに思いを巡らせる章でした。

それでは以下、本文の詳細に触れておりますので、
まだ御覧になってない方はご注意くださいませ。

第7章 概要

狩猟採集民の集団生活や小さな村落で人々が協力するためにはルールが必要でしたが、それは比較的単純で簡単なもので十分でした。

しかし農耕社会への移行に伴う人口増加で社会は複雑になり、所有物や収穫物などが増え,かつては必要がなかった「数」という種類の情報が不可欠になってきました。

これまでの進化の中で、人類の脳は「数」のデータを扱うようには適応してきませんでした。そのため集団の数が増えすぎると適応できずに体制が崩壊してしまいます。農業革命以後の数千年間は,比較的小さく単純な集団のままでした。

この問題を最初に克服したのは、紀元前3000年頃のメソポタミア南部に住んでいた古代シュメール人でした。シュメール人は「脳の外で情報を保存して処理するシステム」を発明します。

それが「書記体系」です。

この発明により,シュメール人はどんな人間の脳が記憶できるよりもはるかに多くのデータを保存できるようになりました。

そうして増えていく記録を保管し、目録を作り、検索し適切に引き出すという管理のための技術も開発し,筆写者や整理係、文書管理責任者、会計士などのための学校にも投資をしました。

このような管理方法は、物事を分けて保管し、必要なときに必要な情報だけを取り出すことを求められますが、人類の「脳」はすべてのデータが自由に結びつき連携しあっており、文書管理システムのような思考法をするようにできていません。
そのため、整理係や会計士は、管理のためのプログラムを受け,普通の人とは違う思考法を採るように訓練されてきました。

こうして書記体系は官僚制のもとに発達し、「人類の、世の中の見方」を徐々に変えていきました。

やがて何世紀も過ぎる中で、前代未聞の効率性を持って数理的データを保存したり処理できる新しい体系、「数学」が発明されました。

数学は「不完全な(つまり話し言葉などは記録できない)書記体系」です。
厖大なデータを信じられないような速さと効率で処理することができ、今やあらゆる所で利用されています。今では「幸福」などの概念でさえも数字に翻訳しようという動きがあり、物理学や工学などは、人間の話し言葉からはほとんど切り離された「数理的」な体系だけで維持されています。

その後、さらに革命的な書記体系を生み出しました。「コンピューターの二進法」です。「人間の下働き」として生まれた書記は、次第に「人間の意識の主人」になりつつあります。

そして今、人類はコンピューターの二進法の書記体系だけに基づいた、新しい種類の知能を生み出そうとしています。
サイエンス・フィクション映画ではこのようなストーリーが描かれています。
「二進法の書記体系が人類に反乱を起こす。人類はその書記体系を再び手懐けようとするが、書記体系はそれに反発し、人類を一掃しようと試みる・・・」

***

以上が第7章の概要です。

「脳の外で情報を処理する」

「人類の脳は数を保存して処理するようには適応しなかった。」(P157)
「脳の外で情報を保存して処理するシステムを発明した」(P158)

社会の拡大に伴って,サピエンスは生物学的な進化が追い付かない問題に直面するようになります。しかし脳が適応できていない種類の問題を,「脳の外で処理を行なう」ことで対処したというのですね。

人類はこうして,徐々に徐々に人類を超えるものを作り出してきたのかなと思うと,「画期的な発明」への鮮やかな感動と,「この先に待ち受ける何か」への不透明な霞が入り混じった,不思議な感覚を覚えます。

とても画期的だと感じると同時に,その当時の只中にいる人々にとっては,「ただ目の前で起こる課題を解決するため」の行動,試行錯誤による結果の一つなのかもしれません。

「ことば」の力

「脳の外で処理を行なう」という表現もとっても面白いと思いました。
こういう表現って,よく使われるのでしょうか?

個人的にメンタルケアのための書き出しを行うときも,「頭(心)の外に,物理的に文字として具現化する」というようなことを意識して行っています。
「なんかモヤモヤする」という形にならない感情を「具体的な言葉」という形にして表現することで,心が整うことを実感するからです。

これは個人的な考えですが,「脳の情報を脳の外に保存する」という行動の発明は,精神面にも大きな影響を与えているのではないかと感じました。(どこかに書かれてあるのに見落としているだけかもしれませんが・・・)

(ただ、筆記に限らず感情を言語化して、発言することでも同様な効果があると感じています。)

例えば,運動性言語中枢が前頭葉にあることから、文字を書く行為(や発言)は感情のコントロールにも関わりがあるのでは・・・と考えるのは安直でしょうか。

事実は定かではありませんが,そういう効果を感じながら、自身のメンタルコントロールによく使っています^
そういう意味でも興味深さを感じた章でした。

「人間の脳」と「書記体系」

「人間の脳に保存されている情報は簡単に引き出せる。私の脳は厖大な量のデータを保存しているが,私はたちまち(ほとんど瞬間的に)イタリアの首都の名前を思い出し,・・・それからエルサレムの自宅からヘブライ大学までの道順を頭の中で辿ることができる。・・・脳の検索システムが驚くほど効率的であることは誰もが知っている」(P163)
「古代の筆写者は・・・脳のやり方とは非常に異なる,目録作りや検索,処理の技術を勉強し,身につけた。脳の中ではすべてのデータが自由に結びついている」(P166)
「このような引き出しのシステムを運営する人は,正常に機能するためには,普通の人間として考えるのをやめて,整理係や会計士として考えるように,頭をプログラムし直さなければならない。」(P167)

私は数学や,ここでいう「整理係や会計士」としての思考法が苦手です。
この章を読むと、そもそも人類の脳がそういった思考法に適応できるようにできていないのであれば、仕方のないことなのかなと思えます。

今、心の問題は多く取り上げられていますね。
それも、人類の本来のシステムと、外的環境との「ズレ」があまりに大きすぎる結果なのだとしたら・・・。

もしそうなら、この問題の解消のために、以下のことが実現できたらいいなと思います。
・自身が環境に適応する訓練をすること。
・環境を、人類が本来持つシステムと調和できるように変化させること。

「自身が環境に適応する訓練」はまた別の機会に書けたらと思いますが、実行することによる効果は実感しています。
「環境を変化させる」というのはかなり難しい課題だと思いますが、試行錯誤は続けたいなと思っています。

人類の創造力を、人類と地球全体にとって良い方向に向けることができたら・・・と思っています^^

おわりに

今回も読んでいただいてありがとうございました^^
いつも本当に感謝しています。

この記事を書くのに4日かかってしまいました・・・。
まだまだ章は続きますし、他の本などの感想も書きたいので、徐々にスキルアップできたらと思います。

参考図書

ユヴァル・ノア・ハラリ「サピエンス全史(上)」第2部 農業革命, 第7章 書記体系の発明、(P154-169),河出書房新社


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