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三角書簡「青いにんじん便り」映画『プリズン・サークル』の話:一通目

しのさん、ろびんさんこんにちは。

本日午前0時から開催予定だった『盗めるアート展(Stealable Art Exhibition)』、0時前に人が押し寄せて作品を持って帰ってしまい、予定時刻には何も残っていなかった…というニュースを見ました。

アート展、というからには来場者が作品を鑑賞することが大きな目的になるのかなーと思うのですが、実際にはあっという間に人が雪崩込み、その場にあったものを持ち去ったそうです。

少し前にこの展示のことを知り、コンセプト自体は面白いかも…(stealableなんて単語見たことないぞ)と思いつつ、セキュリティはともかく、開催側の言う「無人営業」でいいのか…?果たして展示空間として一定レベルを保てるか…?なんて考えていたら、まさか開始時刻前に、大混乱のうちに、一瞬で終了するなんて。あまりの混雑に通報までされて。

もう少し事前対策を取ったほうが良かったんじゃないかな…

盗める展示なんて(恐らく)皆が初体験なわけですが、個人的には(密集を避けるという意味でも)事前予約でスタッフ常駐、(小さなギャラリーみたいなので)1組ずつ入場して鑑賞&希望者は作品持ち帰り…くらいの規定があっても十分面白い試みだったと思うんですよね…

昨日の18時~21時まで行われたというオープニングレセプション(作品は盗めない)で、一体何人が作品を鑑賞できたんだろう。盗めない期間を数日間確保してくれていたら、ちょっと観に行きたかったなーというのが感想です。

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すみません、前置きのつもりが長くなってしまいました。

今日の本題は、映画『プリズン・サークル』について。

仮設の映画館で観ました。今日7/10(金)18時まで配信されていて、購入から24時間視聴可能。ということで、昨日購入し、昨夜と今朝の2回観ることができました(有難い…)。

もちろん映画館に行って観るのとは少し違うけど、場内アナウンスもあってちょっと映画館気分を味わえます(そしてまた映画館に行きたくなります)。

この映画は、島根にある官民協働の刑務所が舞台のドキュメンタリーです。全国でも唯一の取り組みである「TC(Therapeutic Community:回復共同体)」を取材しています。

同じ収容棟にいる約40人の受刑者が、週に12時間TCの講座を受講しており、その内容が映画の中心です。

映画を通して感じたのは、それぞれの話を語り合い、耳を傾け合う共同体の力。

民間の支援員の助けを借りて、受刑者がどうして犯罪行動に至ってしまったのか、過去の体験(特に子ども時代の家庭環境やいじめ)や感情を言語化していく作業が繰り返されます。

その際、支援員や他の受刑者は、話に耳を傾け、意見を言い合ったり質問をしたりします。他者との対話を通じて、自分がどうして加害してしまったか、より深く考える機会になっていました。

クローズアップされている4人の受刑者は、共通して、「他人の評価(目)や他人との比較でしか、自分の存在価値を意識することが出来ない」状態だったように思います。

でも、他人の目を気にすることは、客観的な視点を持つこととは違うんですよね。虐待やいじめを経験し、感情を抑えてしまう癖があったり、被害者の気持ちが理解出来なかったり…そんな自分の状態を、少しずつ掘り下げていく必要性を感じました。

ロールプレイのシーンがあって。被害者役と加害者役(自分)になって事件の話をする中で、被害者役の声を聞き、申し訳ないという気持ちが表れて泣き出してしまう受刑者の男性が印象的でした。

刑務作業や規律正しい生活の中で、自由を制限されて暮らすこと…犯した罪に対する「罰」として暮らすことは、被害者の傷に気付くことや、罪を償おうとする気持ちにはなかなか繋がらないと思います。

2019年4月現在、全国の受刑者は4万人強、その中でTCに参加できるのは40人程度…もっと増えたらいいなと思います。

出所後のTC出身者が、定期的に集まって近況報告をし合っていたのも良かったです。支援員の方々も参加していて。先に出所した先輩が、「仕事が続くよう努力しよう」と声掛けしているのを見て、刑務所で過ごす間だけでなく、ずっと続く繋がりとして機能させる大切さを感じました。断絶・分断させない、孤立させない共同体。これは受刑者に限らず、社会の色んな立場の人に必要なことだと思います。

私と、しのさん・ろびんさんが毎週(オンラインで)顔を合わせているのも、一種の共同体ですよね。私は、この繋がりがあって本当に救われています。語り合いの力ってすごいと思うんです。

…最後に、映画について少しだけ気になったところ。ドキュメンタリー映画だけど、ちょっと作為的かなって思う部分が幾つかありました。

印象操作になりかねない、かも…と。坊主頭のアップとか、短く切られたガムテープで補修された透明ビニールバッグとか。落ち着きのない手元や涙が伝う顎をフレーミングしていたりとか。子どもの頃の家庭環境にトラウマ・傷を持っている受刑者ばかりに見えたけど実際にはどうなんだろう、とか。

もちろん、撮影・インタビュー・編集をして出来上がるものなので、多少作為があるのは仕方のないことだとは思うのですが。

でも、だからこそもっと詳しく知りたいな、と感じたし、方法が分かれば支援したいなとも思いました。

映画を観て、それで終わり…ではないですね。すごくいい2時間だったと思います。

ということで、大変、大っ変長くなってしまいました。今回の手紙はこのあたりで。



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