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あっきー★の源氏名に自我は宿るか?

 アデイの水曜日担当を任され、「あっきー」と呼ばれるようになり、三年経ちました。実はこの名前、まだ馴染めていないと思うことがあります。

 アデイで「あっきーさん」と声がすれば、間違いなく僕を呼んでいます。しかし一瞬、「それって、僕のことでしたよね?」が、頭の片隅を通り過ぎます。「まだそこ?」と言われそうですけど、閉店後の余韻にぼけっと放心している時など、ここまで戻るのです。

 三年前にアデイに入る時、伏見グランマは言いました。「源氏名、つけなきゃねー」と。ほう、源氏名ですか! いわゆる昭和脳でいう源氏名とは、「ヒカル、龍、ケンヤ、翔……」などが思い浮かびます。それって、ホストにあるやつじゃん! そう思って今、ホストの名前を検索してみるのですが、定番の名の他に、「黒シャンデリアロゼ将軍さん、神成ミカエル夜羽さん」などが出てきました。さすが、いろいろな趣向の方が活躍されているんですね。

 歌舞伎町など夜の街は、キャラを立ててなんぼの世界です。例えば、コスプレをして店に立つタイプの営業の場合、名前によってマインドも切り替わることも、きっとあるはずです。武将の格好で「黒シャンデリアロゼ将軍でござい!」と名を発すれば、中身も武将様の仕様と変わるのでしょう。

 ここで、ある問いが生じます。本名に宿る自分を自我Aとするならば、源氏名に対しては、自我Bが宿るのでしょうか? 仕事に、芸名やペンネームを使う方もいます。別名を名乗ることで多様な内面や仕事にアクセスできるようになることは、あると思います。

 仮に、「源氏名には別の自我が宿る」としてみます。全くの別人格になることはないでしょうけど、ゲイバー営業に適したキャラを召喚することは、不自然ではないはずです。二丁目にふさわしいキャラにもいろいろあるでしょうが、共通する要素はあります。その点で、自分には備わっていないモノもあります。それ故に、「ビジネスオネエを学ぶ、eラーニング」(どんなだよ?)があれば、重宝したい。少なくとも、会話を円滑にするテクニックくらいは、身に着けたいところです。これは、自我Bの僕として。

 二丁目におけるキャラといえば、ドラァグクイーンの方々が思い浮かびます。例に出して恐縮なのですが、「エスムラルダです!」と登場する際には、頭の中もメイクをしているイメージなのでしょうか? 逆に、別名義にてお仕事中に「エスムラルダが降臨して困る〜」ということは、ないのでしょうか? 女装の皆さまは、名前も絢爛でありますが、ビジュアルにも大きな比重を持っていらっしゃいます。源氏名だけでなく、衣装や化粧によって、自我Aと自我Bが切り替わるということは、あるのかもしれません。

 こう考えてみて、僕は源氏名により、店子スイッチを入れるということを意識していることに気づきました。どの名で呼ばれるかと、アイデンティティの結びつきが、強いのかもしれません。一方で、中身は同一の自己の人間です。名前によって個をカテゴライズし、それを時と場合で入れ替えながら生きることも、難儀なことのようにも思えます。

 さらに、考えます。素の自分に自我A、営業用の自分に自我Bとして分けることには、どんな意味はあるのでしょうか? 何をどう演じ分けようとしてるのでしょうか? そんな堂々巡りを繰り返すある折に、グランマは言いました。

「あんたは、そのままでいいのよ!」

 まあ、明解! 器用に生きれないことは、見抜かれおります。ビジネスオネエ検定5級(そんなのないけど)でも、永久に不合格を自覚しています。なんだか長々と考えましたけど、「あっきー」(そもそも源氏名か、これ?)は、限りなく素の自我に近いグラデーションの上にある、ということでした。そして、以上のことは「あっきー」が本名のアキヒコの一部を使っていたことにより、自明だったのでした。

A Day In The Life
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