帽子はケーキに、傘はりんご箱に
いまもっともハマって遊んでいるのがNintendo Switch用ゲームソフト『あつまれどうぶつの森』(以下あつ森)である。以前の記事では、現実と同じような天候の変化や季節の移り変わりの繊細さを書いたが、今回は島クリについて書こうと思う。島クリとは島クリエイターというゲーム内アプリの機能(道を作ったり、川の流れを変えたりといった大規模な土木作業が可能)を使ったり、木や花を植えたり、家具やアイテムを置いたりすることで、自宅だけではなく島全体を自分好みに作り変えることである。
他のプレイヤーはどんな風に島クリをしているのだろう――そう思ってyoutubeで島クリの動画を見始めた。それまでもあつ森関連の動画はよく見ていたが、ゲームを進めるための情報をまとめた動画ばかり見ていて、島クリの動画はまったくチェックしていなかった。数本の動画を見て、すぐに気づいたのが、島クリをする時になにかしらテーマを決めて作っていることだ。なにを当たり前のことを言っているんだと思うかもしれないが、手持ちの家具や覚えているレシピが少ないと、とりあえず持っているもので作ってしまおうとしていたのだ。そのため、できあがった場所は統一感という言葉からほど遠いものになっていた。「このアイテムを飾りたい」「こんな雰囲気の場所にしたい」そんなふうにテーマやストーリーを決めて、それに合うような家具や小物を配置していく。自分の中で「こんな感じのものが作りたい」というものがなければ、どんな家具を置いても納得のいくものにはならない。島クリで崖や川を作って、適当に家具を配置しても、やはり気に入らず結局壊してしまっていたのは自分の中に「こういうものを作りたい」というテーマがなかったからだ。それがわかってからは、自分が島クリをするときに優先することを決めた。
それは、
1.元の島の地形をなるべく残す。自然も多めに残す。
2.島の中を道具を使わずに自由に行き来できるようにする。
の2つである。2.について少し説明すると、無人島生活の初期は崖を登るためにははしごが、川を渡るには高跳び棒が必要なのだ。崖を登ったり、川を渡るたびに道具を取り出すのは面倒なので、移動が簡単にできるような島クリを心がけるようにした。
そしてプレイして初めて知ったのが屋外ではプレイヤーの視点がほぼ固定されていることだ。
西の浜辺で夕焼けを見ているが、ベンチに座っている自キャラを操作して、波打ち際まで動かすことはできる。しかし視点を変えて、左端に少しだけ見えている夕日をプレイヤー自身の正面に持ってくるという操作はできない。なんて不便なんだとゲーム当初は思っていた(沈む夕日が見られないというのも不満だった)。しかし、島クリ動画のなかには、この視点が固定されていることを逆手にとって、木や草花と前後に並べることによって家具やアイテムの一部だけを見せ、周りの景色に馴染ませているものもあった。姿かたちをまるまる見せると圧迫感やごちゃごちゃした感じを受ける家具も、木陰から一部だけ見せるならアクセントになり、空間に厚みが増して見える。どの家具も重ならないよう均等に見えるように配置していた自分にとって、こういった家具の見せかたはとても新鮮に感じた。そしてこの視点が固定されていることで、違うものに見立てられているアイテムがあることを知った。
上の写真はぱっと見ると店先に美味しそうなケーキが飾られているように見えるが、実はマイデザイン(*1)で帽子にケーキの絵(*2)を貼り付けて飾ったものである。絵の緻密さもあって、どう見てもケーキにしか見えない(種類は向かって左からレモンケーキ、ガレット・デ・ロワ)。形の丸い食べ物ならなんでも応用が効くので、ラーメンを飾っている島主さんを動画で見たこともある。そしてこの春、マイデザインproにアップデートしてマイデザインが貼って使えるアイテムが増えた。さっそくyoutubeでチェックしてみると、思いもよらないアイテムの使い方が紹介されていた。
木の前にりんご箱(*)が置いてあるが、これは先ほどのケーキと同じようにマイデザインで作った絵をあるアイテムに貼り付け、木の前に置いて飾っているのである。そのアイテムとは「傘」である。開いた傘に、箱を斜めから見たマイデザインを貼っている。果物以外にも花やパンやお菓子、犬小屋を描いたマイデザインを見かけたが、傘の置き方とマイデザインの構図で箱のように見えてしまうのが、人間の目がハックされているようでおもしろいと感じた。
自分の島は島クリに手をつけ始めたばかりだが、動画だけでは飽き足らず、インスタでもあつ森タグをフォローするようになった。凝りに凝った島の写真は見ているだけでも楽しい。ただ素直にすごいと感心してしまう。また、島クリの影響で「これをあつ森世界で再現するには何のアイテムを使えばいいのかな」と思うことも増えた。特に通勤途中にある白を基調としたフルーツ専門店のカフェは、あつ森で再現できそうだと勝手に思いながら、毎日店の前を通っている。フルーツバスケットのレシピとキーになる家具が手に入ったら、必ず挑戦しようと思っている。
*1 自作のドット絵を作れる機能。有料サービスのニンテンドーオンラインに加入すれば自分が描いたデザインをネット経由で公開し配布もできる(マイデザイン・ショーケース)。
*2 youさんのマイデザインをお借りしてます。
*3 マイデザイン・ショーケースからダウンロードしたのですが、作者様のお名前を控えておらず…申し訳ありません。
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