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あつ森の夏、日本の夏

 無人島での暮らしを楽しむゲーム『あつまれどうぶつの森』(以下『あつ森』)にも夏がやってきた。

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 空には入道雲が現れ、昆虫もセミやクワガタ、カブトムシ、さらにはセミの抜け殻(写真下、手に持っている)まで現れるなど、島の中が一気に夏の風物詩で埋めつくされた。

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 そんな夏アイテム目白押しの8月だが、もう一つ、忘れてはいけないイベントがある。毎週日曜日19時から23時59分のあいだ、島で花火大会が開催されるのだ。事前情報では、花火大会中に開かれるいなり商店(たまに島にやってくる本物・贋物混じりの美術品を売るキャラクター、つねきちがやってるお店)の出店でくじが引ける。景品は風船やうちわ、今年はさらにわたあめにタピオカドリンクまで追加されるとのこと。昨年も開催されているイベントなのだが、今年の1月から移住したので初参加になる。どんなふうになるのか、とにかく楽しみである。花火大会ならやはり浴衣を着て参加したい、ということで、エイブルシスターズ(島の洋服屋)で浴衣やゲタ、あとはまとめ髪に合いそうな髪飾りを見かけるたびに購入してその日を待つことにした。現実で花火大会に行くとなっても、着付けができないので、浴衣は自分にとってはハードルの高いものになっている。ここでは簡単に着ることができて雰囲気を味わえるのがとてもうれしい。

 花火大会当日、開始から少し経ってログインしたので、専用のBGMが流れ、既にドーンという迫力のある打ち上げの音が島中に響いていた。まだ浴衣に着替えていなかったので、いったん家の中に入って、浴衣に着替えてから再度外に出た。あらためて打ち上げられている花火を見ると、そのリアルさに驚く。ドーンと響く打ち上げの音、パッと開く光の花。さまざまな種類の花火が交互に打ち上げられて消えていくさまは現実の花火大会そのものだ(むしろ予算という枷がないぶん豪華かもしれない)。しばし自宅近くで鑑賞したあと、島の広場に向かう。カラコロカラというゲタの足音が耳に心地よい。ふだん全く着ることがない格好でも、軽快に歩けるのはゲームならではのよさだろう。

 広場に到着すると、すでに住民(どうぶつ)たちが集まって花火を見ており、思い思いに過ごしていた。案内所のしずえさんに話しかけて、記念品(カチューシャに光るボールや星がついている)をもらい、広場で花火を見る。しかし、広場には案内所というけっこう大きな建物が建っているため、花火が一部しか見えない。

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せっかくの花火、全体がきれいに見える場所はどこだろうと、島の中を探すことにした。高台からなら全体が見えるのではないかと思い、島の高台から花火を見たが、残念ながら、花火を下から見下ろすような形になってしまい、花火の下部分が高台より下になり、見えない部分ができてしまっていた。それならばと東西にある海岸にそれぞれ行ってみたが、花火が左右に打ち上がった場合、どちらかの花火が崖や家で隠れてしまい、こちらもやはりきれいに見ることができなかった。「ゲームの花火だから、島のどこからでもきれいに打ち上がった姿を見られるのでは?」と安直に考えていたが、ことあつ森に関してはそんなことはまったくなく、島の中を良い場所を求めて探し回るはめになった。これが現実の花火大会だったら、人ごみをかきわけて移動するのも大変だし、移動先が今よりよく見えるという保証もないので、「まあ、これぐらい見えるならいいか」で妥協するが、ここは自分の島。移動にコストもかからないし、誰に迷惑をかけるわけでもない。まだあと花火大会は3回あるのだから、ちゃんといい場所を見つけておかないともったいない―――。そんな思いで島をうろうろして、ふと思い出したのが北の海岸。その名の通り島の北にあり、海岸とはいうものの小さな砂浜で、月に数回、今日広場に出店を出しているつねきちの船がやってくる場所。「あそこなら目の前は海で開けているから、きれいに見えるかも」そう思い、北の海岸へと向かう。

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予想は的中。小さな砂浜の先には海しかないので、打ち上げられた花火がほぼそのまま見えた。しかも広場からはるばるここまでやってくる住民たちもいないので、ここでの景色は一人占めである。しばらく色とりどりの花火を見て、次のお楽しみ、くじ引きへと向かうことにした。

 ハズレなしで引けるいなりくじ。景品も増えて全部で23種類ある。風船やシャボン玉といった縁日にありそうなグッズや、今年新たに追加されたわたあめやアイスキャンディー、タピオカドリンク(見出し画像で飲んでいるのはタピオカマンゴーミルク。よく見るとタピオカが底にある)などの食べ物もある。食べ物は手に持つことができ、ゲーム内のキャラが食べることができる(3回食べるとなくなり、食べるとフルーツパワー(※)3回分が溜まる)。1回500ベル(ゲーム内のお金の単位)なので、けっこういい値段なのだが、事前情報で全種類揃うまでは景品はかぶらないときくと、やはり揃えたくなってしまう。現実の縁日ではこんな風に手あたりしだい買うこともできないのでついつい引いてしまう。

 そうこうしているうちに第一回の花火大会も終わりの時間が近づいてきた。気になるのは現実の花火大会のようにフィナーレはあるのだろうかということだ。広場前で住民たちの花火イベント特有の会話を聞きながら、終了時間を待っていると、残り時間1分のところで、花火がバンバンと、速いペースで上がり始めた。赤、黄、緑、白、色とりどりの花火が矢継ぎ早に打ち上げられては消えていく。「フィナーレだ!」リアルの花火大会と同じようにテンポよく上がっていく花火を、いつまでも見ていたいと思いながら眺めていた。が、無情にも0時の時報の鐘が鳴るとともに打ち上げも終了となった。始まる前、5時間は長いと思っていたが、終わってみればあっという間だった。花火の光に照らされた島はいつもと違う表情を見ることができ、いつも以上の非日常感を感じた。

 そして緊急事態宣言が続いたこの夏で唯一、夏らしさを感じられるイベントであった。


※フルーツパワー:果物を1個食べると、島に生えている木を1本、スコップで掘り起こすことができる。木を移植したいときに必須の力。

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