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 「戦場のピアニスト」シュピルマン

三度目の戦場のピアニスト

最初に観たのは20年ほど前、封切りされた時。
前回はNHKBSで数年前に放送した時。
この度、再び観る機会に恵まれて、友人と誘い合って出かけた。


ナチスの侵攻

この映画は第二次世界大戦下、ポーランドに侵攻したナチスドイツによるユダヤ人迫害の歴史の事実をユダヤ人ピアニスト、シュピルマンの体験、視線から描かれている。
シュピルマンはワルシャワの放送局でピアノを弾いていた。
その日、ナチスドイツが侵攻。
それまで両親と兄妹と穏やかな日々を送っていたが、
その日から恐怖と、制限される暮らしの日々が始まる。
やがて、ナチスドイツはユダヤ人たちを強制的に収容所に送り込み始める。
親、兄妹と一緒に強制収容所に送られる日、列車に乗り込む直前に彼だけが友人に助けられる。
しかし、ユダヤ人居住区「ゲットー」に入れられ、強制労働を強いられる。

ピアノを生業としている彼には重労働は厳しく食べ物も少なく、過酷で惨めな日々を送る。

逃亡

ピアニストをしていた頃の知り合いや友人に協力してもらい脱走する。
そのあと、住処を変えながら、飢えと恐怖の日々を過ごす。
食料を調達するお金も持ち逃げされる。
信頼している者からの裏切り。

飢え

食べ物を奪い合うシーンがあった。
スープが器と一緒に道路にたたきつけられ、飛び散る。
飢えた男が地面に顔を擦り付けて、動物の様に食いあさる。
ピアニストはそれを悲し気に見つめる。

いよいよ戦争も終わりに近づき、ナチスによるユダヤ人狩りが始まる。
彼は病院の廃墟へ逃げ込む。
飢えている。
食べ物はないかと探す。
そしてようやく袋戸棚のなかに1個の缶詰めを見つける。
飢えをしのげると歓喜するのだが、開缶するのに苦労する。
開けるためにいろんなことを試みているうちに、ドイツ軍の将校に見つかる。
恐怖におびえるが、缶詰は手放さない。
悲しいくらい、食べることへの極限の執着を感じた。
飢えるとはそういうことなんだろう。


ピアノを弾く


ドイツ軍の将校は彼に名前を聞く。
ピアニストのシュピルマンだと答える。
すると将校はピアニストならば演奏をするようにと迫る。
廃墟の中にあった、埃だらけのピアノに向かい彼はベートーベンの「月光」を弾く。
ドイツの将校は彼の演奏を聞きながら、故国の家族のことを思い出す。
時間が流れる。
将校は彼にパンや肉を与え、廃墟をあとにする。

そのあと、ポーランドにロシアの軍隊が入り、ナチスドイツは崩壊に向かう。
廃墟に再び、ドイツ軍の将校がやってきて別れを告げる。
そして、シュピルマンに、「寒かろう」と自分の来ていた暖かいコートを渡そうとする。
シュピルマンは「あなたが寒かろう」と遠慮をするが、将校「私たちはもう終わる」と言って彼に羽織らせる。
戦争を抜きにした人間愛を感じる。

やがて、戦争は終わり、ドイツ軍の兵は大きな鉄条網の塀の中に収容される。
シュピルマンは戦いで家族や多くの友人を失ったが、放送局に戻るとかつての仕事仲間が待っていた。

世界では今も戦争が起きている。
悲惨さを幾度繰り返したら戦いがなくなるのだろう。
ウクライナでもガザでも同じことが今、起きている。
大切な人を失い、家を失い、飢え、恐怖におののき、明日に希望を見いだせないでいる人々が幾十万いることだろうか。

ユダヤ人ピアニスト シュピルマン(1911~2000)

我々は戦後生まれなので戦争は経験していない。
子供の頃は豊かではなかったけれど、戦火で追われたり、飢えで苦しむことはなかった。
幸せな時代だったと言えばそうかもしれない。

でも、今も戦火の中で逃げ惑い、傷つき、涙している人がいる。
早く戦争が終わるのを祈るしかない。













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