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Ask Again, Yes by Mary Beth Keane


あらすじ

Francis Glesson と Brian Stanhope はアイルランド出身でニューヨーク警察の同僚だった。Brian はすでに結婚していて妻 Anne のお腹には赤ちゃんがいる。その後、Francis は Lena と出会い、結婚すると、ニューヨーク郊外 Gilliam に家を買う。そして二人の女の子が生まれた。Francis が Gilliamに住んでいることを知った Brian は Francis の隣に家を買い、引っ越してくる。Lena は仲良くなりたいと思い、隣人宅に挨拶にいくが、Anne に冷たくあしらわれてしまう。Anne の最初の子どもは死産で、二人の間にまだ子供はいなかった。やがて、Anne は Peter を産み、Lena も時期を同じくして Kate を産んだので、Peter と Kate は何でも話せる仲の良い幼馴染になった。ティーンになると、二人の気持ちは友情から恋に移っていった。そんな矢先に、事件が起こった。Anne に隠れて Peter が Kate と会っていたことを知り、Anne は半狂乱になって夫のピストルを振りかざしたのだ。Francis は Anne をなだめようと隣人宅を訪れるが、Anne に顔面を撃たれてしまう。Francis は一命をとりとめたものの、顔にひどいけがを負ってしまう。Anne は精神病院に収容され、Peter は父親と一緒に叔父 George の家に移り住むが、しばらくすると父親はニューヨークを離れたため、一家はバラバラになってしまった。一方、Lena は Francis を手厚く介護したが、以前のような夫婦関係を取り戻すことができない。

読みどころと感想

「この悲劇によって二つの家族は永久に別れるかと思われた。だが、Kate と Peter は大人になってから再会し、過去の暴力を乗り越える。二人の愛の力によって」と裏表紙に書いてあるのですが、まさにそのとおりで、それ以上のこともそれ以下のことも起きないので、いっけん退屈そうな話なのですが、これが面白いんです。登場人物の行動や心理がすごくリアルで、気持ちの変化が説得力のある形で提示されるんですよね。

Peter の母 Anne は精神病院から退院した後、探偵を雇って Peter と Kate の住む家を突きとめます。そして車の中から、何年もわたって二人の生活を観察します。結婚した二人の間には子供が生まれ、仲良く暮らしているように見えます。かつて勇気を出して Anne を見舞いにやってきた Peter を会わずに追い返してしまったこともあって、Anne は Peter に会う勇気がないのです。しかしついに Kate が Anne の存在に気づき、声をかけます。その時の第一声が「私はあなたを赦しません」なぜなら幸せそうに見えていた家族は崩壊寸前だったからです。気づかないうちに Peter はアルコール中毒に陥ってしまって、Kate は助けようにも助けられない状態。Peter がこんなふうになってしまったのは、14歳のときの殺人未遂事件が原因=母親のせい、と思っているわけです。Kate にとって、Anne は Peter の母親ではなく、自分の父親を殺そうとした女でした。

こういった心理描写がつぶさに書かれていて、しかも三人称で書かれているので、それぞれの登場人物ごとにそれぞれの心情があるわけです。
裏表紙に書かれているように、Peter と Kate を中心にして二つの家族はまたつながりはじめます。事件が起きるまでが展開が遅いかなと思ったけど、静かであたたかな、よい小説でした。

この本について

タイトル:Ask Again, Yes
著者:Mary Beth Keane
出版年:2019
出版社:Penguin, UK
ページ数:388

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