【ゲーム紹介】『ファイアーエムブレム風花雪月』の面白さとは「多面性」にある。
ここは秋月大河が独断と偏見で面白かったゲームへの愛を語る文です。
ストーリーには大きく触れませんが、一部ネタバレも含みますので、プレイされていない方はご注意ください。
そんなわけで第1回は『ファイアーエムブレム 風花雪月』です。
結論として「『風花雪月』の面白さとは「多面性」にある」という視点でお話をしたいと思います。
■最初はあまりノれなかった
先日『ファイアーエムブレム無双』をプレイしまして、非常に面白くて、その勢いのまま昨年夏に発売された『ファイアーエムブレム風花雪月』を現在42時間ほどプレイしています。
すでに1周目の教団ルートを終えまして、現在2周目青獅子ルートのプレイ中です。
最初はやはり見た目でイケメンよりも美少女ということで、エーデルガルト陛下率いる黒鷲クラスの担任をしました。
最初の数時間をプレイしたときは、正直あまりノれませんでした。これまでの『ファイアーエムブレム』は戦略や戦術シミュレーションの部分が強く、メインストーリーと戦闘が交互に進んでいく形式でした。
しかし、今回は生徒一人一人の育成がある上に、第一部の舞台となる大修道院をあちこち動き回って用事をこなさなければいけないなどやや面倒に感じられる部分が感じられました。
ゲームシステムがよくわかっていなかったので、ただなんとなくメインを進めているだけでは、生徒ひとりひとりの特徴を理解することもなく、授業→戦闘→メインストーリーが進む→授業→戦闘の繰り返しだけでした。
主人公はドラクエやゼルダの伝説の主人公と同じく発話をするタイプではないので、生徒との会話がどうしてもぎこちなく感じられるところもあります。
お茶会システムも会話の選択肢を選ぶだけなので、特にその場で何か面白い会話が聞けるといったこともありません。
■支援会話システムが全てを変えた
『風花雪月』の支援会話システムは、主人公の教え子である生徒一人一人が同じクラスメイトや別のクラスメイトとの会話を見られるものです。
おそらくここが本作の最大のポイントだと思います。
この支援会話をちゃんと見ているかどうかでこのゲームの評価は180度変わるといっても過言ではないかもしれません。
■実はキャラ設定とストーリーが作り込まれている
風花雪月のキャラクターは近年のソシャゲのキャラとは違って、すぐに特徴がわかるようなインパクトの強いキャラクターではありません。
それゆえに、ソシャゲ慣れしている人からしたら最初は「キャラが弱い」と思うかもしれません。
でも、支援会話システムで、あるキャラクターと他のキャラクターとのやりとりを見る中で、そのキャラクターがどんなキャラクターなのか、どういった背景を持っているのかを深く知ることができるのです。
例えば、イングリットというキャラクターがいます。
彼女はぱっと見は委員長タイプの礼儀正しいキャラです。
でも、支援会話を見ていると、幼なじみのシルヴァンに対しては強気に出たり、貴族とはいえ、北方の貧しい地域で育ったためにおいしい食事に目がなかったり、化粧なんて贅沢だからと貴族のお嬢様のはずなのに常にすっぴんでいるなど様々な面を見せてくれます。
そうすると、初めてそこで大修道院内で主人公とイングリットが一緒に料理をつくるアクティビティで、彼女が料理に感動している理由がわかってくるのです。「なるほど。だから、この子はこういう反応をしたのか」ということがわかってくるのです。
主人公の視点だけでは決してキャラの本当の姿が見えてきません。そして、ソシャゲのようにわかりやすいキャラクターでもありません。
でも、支援会話で様々な姿を見ることで、キャラクターが実に多面的な姿を見せてくれます。
余談ですが、最初は似たような髪型のメルセデスとイングリットをよく間違えていました。
でも、二人をよく知った今はもう間違えることはありません。
■外伝もしっかり見るべき
同じように戦闘でも外伝としていくつかのキャラクターストーリーが語られます。自分のクラスメイトやスカウトしたり、おそらく好感度が高かったりするキャラクターのエピソードと戦闘が見られます。
ここでも、キャラクターの掘り下げが見られます。
例えば、シルヴァンというキャラクターがいます。
このシルヴァンはぱっと見は女好きのイケメンでしかありませんが、その背景には家督争いで負けた兄が盗賊に成り下がってしまったことに憤りと責任を感じていたり、父との関係はあまりよくなかったりすることがわかります。
また、イングリットと同じように支援会話を見る中で、ただの女好きではない姿を見せたり、逆に過去には老婆さえも口説こうとした面白エピソードを知ったりすることができます。
■キャラを通して世界観をより深く知ることができる
物語の舞台は基本的には大修道院を中心としており、そのまわりにある3つの国がどうなっているかはわかりません。また、主人公の視点で進むメインストーリーでは謎にされていることも多いので、いまいち世界観を理解できないところもあります。
※最初は教団ルートだったということもあるかもしれませんが……。
でも、支援会話システムの中では、それぞれの国の内政やキャラクターの置かれた政治的な立場なども知ることができます。
そうすると、フォドラという世界や3つの国の政治的な状況や環境などが立体的になるのです。
同時に、メインストーリーだけではいまいちよくわからなかったキャラクターの相関図や状況、セリフの意味などもわかってきます。
■しかも、周回してこそ全ての謎が解ける
『風花雪月』は序盤に3つのクラスから主人公が受け持つクラスを決めます。つまり、3つの陣営のどの立場に立つかを決断しなければいけなくなるわけです。
その1つの立場からしか物語を見ることができないので、謎も多く残されます。例えば、1周目の教団ルートではなぜエーデルガルトが挙兵して教会と敵対したのか理由はよくわかりません。
きっとそれは帝国ルートと呼ばれるルートを進めることでわかることでしょう。また、闇にうごめくものとして暗躍していた連中も何者なのかは、結局教団ルートではよくわかりませんでした。
これも同じように他のルートをクリアしていけばわかることでしょう。
■風花雪月は多面性の物語
このように『ファイアーエムブレム 風花雪月』とは多面性のある物語なのです。決して1つの視点からでは全ての謎がわからないようになっています。主人公がどの立場に立つかでストーリーは大きく変わりますし、キャラクターもまた1つの視点からでは決してその子の本当の姿は見えてこないようになっているのです。
何周もして深く知れば知るほどより風花雪月というゲームとストーリー、そしてキャラクターが好きになっていきます。
創作者の立場で見ると、なかなかこれは挑戦的な試みだと思います。
プレイヤーにもしかしたら途中で投げ出されてしまうかもしれない。
最後までプレイしてもらえなかったら、せっかく熱意を込めて作ったストーリーやキャラクターを好きになってもらえないかもしれない。
そのリスクにあえて挑戦しながらも、熱意を持って作り上げたシナリオライターやディレクター、プランナー、そしてプロデューサーのメンタルと技量は見習いたいところではあります。
以上です。
世界観やストーリーなどについても語っていきたいところではあるのですが、それはまたいずれ……。
それでは、最後までお読みになっていただきありがとうございました。
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