見出し画像

4月景気動向指数で景気の基調判断は「足踏み」を維持しよう。 早ければ8月7日発表6月分で「改善」に上方修正という流れに沿った動きに―日本経済の主要経済指標予測(2023年5月31日)―

4月家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は2カ月連続の減少か(6月6日発表)

前回3月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は前年同月比で▲1.9%と2か月ぶりの減少になりました。ちなみに名目消費支出の前年同月比は+1.8%で12か月連続の増加です。デフレーターの全国消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合) 前年同月比が+3.8%と高めの伸び率になったためです。
携帯電話通信料などの「通信」などが減少した一方、全国旅行支援などの効果もあり宿泊料、国内パック旅行費などや、外出増に伴う外食需要の拡大で食事代、飲酒代などが増加しました。財・サービス別の前年同月比をみると、財は、実質▲2.2%と2か月ぶりの減少ですが、サービスは、実質+3.4%で12か月連続の増加になりました。
4月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は▲2.3%程度と3月の▲1.9%に続き、2カ月連続の減少になると予測します。前月比は+0.2%程度とみました。
家計調査で実質化に使うデフレーターである全国消費者物価指数は、日本銀行が2%の目標に使用している「生鮮食品を除く総合」ではなく、「持家の帰属家賃を除く総合」です。「持家の帰属家賃を除く総合」の前年同月比は1月+5.1%、2月+3.9%、3月+3.8%、4月+4.1%と推移しています。2月からは、政府の電気代・ガス代の負担軽減策の影響で鈍化しています。デフレーターは、4月の家計調査・実質消費支出・前年同月比に対しては3月から0.3ポイントの減少要因になります。
関連の消費統計をみると、日本チェーンストア協会のスーパー売上高の4月の前年同月比は+3.4%と3月+1.5%から1.9ポイント増加率が高まりました。また、新車新規登録届出台数(乗用車)の4月前年同月比は+18.5%で3月の+12.1%から増加率が6.4ポイント高まっています。一方、4月の全国百貨店売上高・前年同月比は+8.6%で3月の+9.8%から1.2ポイント増加率が鈍化しています。商業販売額指数・小売業の前年同月比は、4月速報値+5.0%で、3月+6.9%から1.4ポイント伸び率が鈍化しています。
景気ウォッチャー調査の家計動向関連の現状水準判断DI・季節調整値は、1月44.2、2月50.2、3月50.1、4月50.7と推移しています。
こうした様々なデータを総合的に判断して予測しました。

※23年4月は筆者予測

4月景気動向指数・速報値の基調判断は「足踏み」継続だが、一致CIの 3カ月後方移動平均は7カ月ぶりに上昇に転じる見込み(6月7日発表)

景気動向指数では、一致CIを使っての基調判断が機械的に行われています。当月の一致CIの前月差が一時的な要因に左右され安定しないため、3カ月後方移動平均と7カ月後方移動平均の前月差を中心に用い、当月の変化方向(前月差の符号)も踏まえ、行われます。基調判断は「改善」「足踏み」「局面変化(上方へのor下方への)」「悪化」「下げ止まり」の5つがあります。
4月の景気・基調判断は、5カ月連続で、景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」になると予測されます。
最近の一致CIを使った景気の基調判断をみると、21年9月~22年2月速報値では「足踏みを示している」の判断が継続しました。しかし、生産・出荷関連データの年間補正などがあった22年2月改定値で「改善」に戻り、3月分~11月分でも「改善」の判断が継続となりました。22年12月で当時の3カ月後方移動平均・前月差・2カ月の累計が1標準偏差の▲1.00以上のマイナス幅になり、前月差が下降だったため、「3カ月後方移動平均の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差以上、かつ当月の前月差の符号がマイナス」という条件を満たし、「足踏みを示している」に下方修正されました。その後23年3月まで「足踏み」が続いています。
4月の一致CIは前月差+0.2程度の上昇と予測します。7カ月後方移動平均・前月差は4カ月連続マイナスになるとみられますが、そのマイナス幅は3カ月累積でも▲0.46程度で、1標準偏差の▲0.77以上のマイナス幅に届かないとみられます。事後的に判断される景気の山が、それ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示す「下方への局面変化」に下方修正されるための「7カ月後方移動平均の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差以上、かつ当月の前月差の符号がマイナス」という条件は、両方とも満たさないと思われます。
なお、4月の3カ月後方移動平均の前月差は+0.93程度になり、7カ月ぶりにプラスに転じると予測されます。
一致CIの第1系列である鉱工業生産指数・4月速報値・前月比は▲0.4%と事前の予測に反し低下しました。全体15業種のうち、生産用機械工業などを中心に5業種が低下、9業種が上昇、1業種が横這いとなりました。
速報値からデータが利用可能な8系列では、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、有効求人倍率、輸出数量指数の4系列が前月差寄与度プラスに、鉱工業生産財出荷指数が前月差寄与度ゼロに、生産指数、耐久消費財出荷指数の3系列が前月差寄与度マイナスになるとみました。
4月の先行CIは前月差+0.9程度の上昇になると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、消費者態度指数、マネーストック、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列が前月差寄与度プラスに、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新設住宅着工床面積、日経商品指数の3系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。

※23年4月は筆者予測

一致DIは3月が速報値から改定値にかけて大幅上方修正され55.6%になったため、4月と併せ2カ月連続50%超に。

4月の一致DIは68.8%程度と2カ月連続で景気判断の分岐点の50%を上回ると予測します。
なお、3月の一致DIは速報値では31.3%でしたが、改定値で55.6%と50%超に転じました。これだけの大幅上方修正は極めて珍しい現象です。労働投入量指数がプラス符号で新たに加わりましたが、その他に生産指数(鉱工業)と鉱工業用生産財出荷指数の2系列が上方修正され3カ月前と比べ0.1ポイントの差と極めて小幅ですがプラス符号に転じたためです。
4月の一致DIでは、データが利用可能な8系列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、輸出数量指数の5系列がプラス符号に、商業販売額指数・小売業1系列が保合いに、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の2系列がマイナス符号になると予測します。
4月の先行DIは55.6%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列中、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、新設住宅着工床面積、マネーストックの4系列がマイナス符号になるとみました。

次回5月の景気基調判断も何とか「足踏み」継続か

次回5月でも景気の基調判断は「足踏み」になる可能性が大きいと思われます。「下方への局面変化」に下方修正されるためには、一致CIの前月差が▲2.6程度以上の幅での下降になることが必要です。そうではない場合は、7カ月後方移動平均の下落幅の3カ月累計が1標準偏差に届かずに「足踏み」継続になります。一致CI採用第1系列の生産指数(鉱工業)の先行きを製造工業予測指数でみると5月分は前月比+1.9%上昇の見込みです。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、5月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲2.6%の下降になる見込みです。90%の確率に収まる範囲は▲4.4%~▲0.8%になっています。他の系列もあるので、一致CIの大幅な下降は回避される可能性が大きいと思われますが、予断を持つことなく採用系列のデータ発表を待ちたいと思います。
一方、「改善」に戻るとしてもその時期は23年後半になります。4月にはプラスになることがほぼ確実な3カ月後方移動平均の前月差は、5月も一致CIが前月差▲0.2程度以上になれば2カ月連続してプラスになる可能性が大きいですが、3カ月連続でプラスになることが必要なため、早くても「改善」に戻る時期は6月の景気動向指数が発表される8月7日になってしまいます。

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。