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1月家計調査・実質消費支出・前年同月比は11カ月連続減少か。 1月景気動向指数では先行CI・一致CIとも前月差マイナスを予測。 ―日本の主要経済指標予測(2024年3月1日)―

1月家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は12月から減少率が拡大し、11カ月連続減少になると予測(3月8日発表)

 12月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は前年同月比で▲2.5%と10か月連続の減少になりました。   

 外出した人が増加したことや物価上昇などによる内食需要の縮小傾向の中、飲酒代・喫茶代などの「外食」が実質・前年同月比+8.9%増加しました。インフルエンザ患者の増加の影響などで、他の入院料、医科診療代など「保健医療サービス」が実質前年同月比+13.0%の増加になりました。また、半導体不足の緩和による自動車の販売増加したため、自動車等関係費が実質+2.8%の増加となりました。 

 一方、家族葬の増加など、簡素化の影響で葬儀関係費などの「諸雑費」が実質・前年同月比▲9.7%減少、気温が高く、暖房需要が伸びなかった影響でエアコン、ストーブ・温風ヒーターなどの家庭用耐久財は実質▲18.5%減少した。携帯電話通信料は一部の利用者が相対的に低廉な料金プランへ移行した影響など、郵便料はSNSの普及などで年賀はがきの需要が落ち込んでいる影響で「通信」が実質・前年同月比▲6.6%の減少となりました。

 実質・季節調整済み前月比は▲0.9%と3か月連続の減少になりました。ちなみに名目消費支出の前年同月比は+0.4%で5か月連続の増加です。デフレーターの全国消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は+3.0%でした。 

 財・サービス別の前年同月比をみると、財は実質・前年同月比▲2.3%と10か月連続の減少。サービスは、実質・前年同月比▲3.0%と2カ月連続の減少になりました。 

 1月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は▲4.0%程度と減少率は12月の▲2.5%から拡大し11カ月連続の減少になると予測します。前月比は▲0.8%程度の減少になるとみました。 

 家計調査で実質化に使うデフレーターである全国消費者物価指数は、日本銀行が2%の目標に使用している「生鮮食品を除く総合」ではなく、「持家の帰属家賃を除く総合」です。「持家の帰属家賃を除く総合」の前年同月比は12月+3.0%、1月+2.5%と推移しています。デフレーターは、1月の家計調査・実質消費支出・前年同月比に関しては12月から0.5ポイントの増加要因になります。 

 関連の消費統計をみると、新車新規登録届出台数(乗用車)の前年同月比は12月+6.1%の増加から1月は▲10.8%の減少に転じました。日本チェーンストア協会のスーパー売上高の1月の前年同月比は+1.9%と12月+2.1%から0.2ポイント増加率が縮小しました。一方、1月全国百貨店売上高・前年同月比は+7.1%で12月+5.4%から1.7ポイント拡大しています。なお、商業販売額指数・小売業の前年同月比は、1月速報値+2.3%で、12月+2.4%から増加率が0.1ポイント縮小しています。 

 景気ウォッチャー調査の家計動向関連の現状水準判断DI・季節調整値は24年1月分発表時に季節調整替えが行われました。その結果、23年は1月44.8、2月49.3、3月49.3、4月49.9、5月51.8、6月52.3、7月51.8、8月52.3、9月50.3、10月50.4、11月49.8、12月50.0と推移してきたことになりました。そして、24年1月は47.9まで低下しました。 

 こうした様々なデータを総合的に判断して予測しました。

※24年1月は筆者予測

1月の景気動向指数・一致CI前月差▲3.4程度、先行CI は前月差▲0.7程度でともに2カ月ぶりに下降を予測(3月8日発表)

 1月速報値の一致CIは前月差▲3.4程度の下降と予測します。3月4日に発表される営業利益の影響で11月と12月の前月差が0.1ポイントずつ改善すると仮定しました。前月差は2カ月ぶりの下降になるでしょう。一致系列で、速報値からデータが利用可能な8系列では、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の3系列が前月差寄与度プラスに、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、輸出数量指数の5系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。
 
 一致CIの第1系列である鉱工業生産指数・1月速報値・前月比は▲7.5%の低下となりました。全体15業種のうち、工場稼働停止などの影響による自動車工業の低下に加えて、汎用・業務用機械工業など14業種が低下、輸送機械工業(除く自動車工業)1業種が上昇という結果でした。
 
 1月の先行CIは前月差▲0.7程度の下降と予測します。2カ月ぶりの下降になるでしょう。速報値からデータが利用可能な9系列では、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列が前月差寄与度プラスに、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、新設住宅着工床面積の4系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。

※24年1月は筆者予測

1月の一致DIは20年5月以来の0.0%程度か。先行DIは50.0%程度と景気判断に分岐点の水準に。

 1月の一致DIは20年5月以来の0.0%程度になり、大幅に景気判断の分岐点の50%を下回ると予測します。1月の一致DIでは、データが利用可能な8列中、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の全8系列がマイナス符号になると予測します。0.0%程度はコロナ禍の影響が大きかった20年5月以来である
 
 1月の先行DIは50.0%程度と景気判断の分岐点の50%になると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列中、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、消費者態度指数、日経商品指数、東証株価指数の4系列がプラス符号に、マネーストック1系列が保合いに、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数 、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列がマイナス符号になるとみました。

注目される1月の景気基調判断。10カ月ぶりに「足踏み」に下方修正も。

 3月8日発表予定の1月の景気動向指数の景気の基調判断が「足踏み」に下振れと思われます。1月の一致CIが前月差下降で、一致CIの3カ月後方移動平均の前月差の3カ月累計が▲1.17程度で、ぎりぎり1標準偏差の▲1.16を上回るマイナス幅になると予測します。景気の基調判断は、「足踏み」に下方修正されるための条件、「当月の前月差の符号がマイナス」かつ、「3カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差分(1.16)以上」という条件を満たします。
 
 但し、3月4日に10~12月期の法人企業統計が発表され、10月から12月の営業利益が1月速報値の段階で加わることが、3カ月移動平均の前月差3カ月累計にかなりの好影響を及ぼした場合には、景気の基調判断が「改善」に留まる可能性がある点には留意する必要があります。
 
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。