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6月家計調査・実質消費支出・前年同月比、減少率は縮小するも2カ月連続の減少か。6月景気動向指数・一致CIは4カ月ぶり前月差下降。基調判断は「下げ止まり」継続か。―日本の主要経済指標予測(2024年7月31日)―

6月家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は▲1.3%程度と5月から減少率は縮小するものの、2カ月連続の減少を予測。(8月6日発表)

 5月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は前年同月比▲1.8%と、2か月ぶりの減少になりました。
 
 前年5月の支出金額が低かったこともあり、自動車購入などの「自動車等関係費」は実質・前年同月比+14.6%増加しました。新型コロナ医療費の全額公費支援から自己負担への変更による影響が出て、医科診療代などの「保健医療サービス」は実質・前年同月比+14.1%増加しました。
 
 一方、前年に比べ北日本で4月の気温が高かった影響で、電気代が実質・前年同月比▲14.0%の減少になりました。低廉な料金プランへ移行した人の増加の影響などで、携帯電話通信料などの通信は実質・前年同月比▲10.5%の減少になりました。前年実施していた全国旅行支援後の需要の落ち着きの影響などで、宿泊料などの教養娯楽サービスは実質・前年同月比▲6.9%減少しました。
 
 実質・季節調整済み前月比は▲0.3%と2か月連続の減少になりました。デフレーターの全国消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の前年同月比は+3.3%になりました。
 
 財・サービス別の前年同月比をみると、財は実質・前年同月比▲2.6%と15か月連続の減少。サービスは、実質・前年同月比▲1.4%と2か月ぶりの減少になりました。
 
 6月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は▲1.3%程度と5月の▲1.8%から減少率は縮小するものの、2カ月連続の減少になると予測します。前月比は+1.0%程度と3カ月ぶりの増加になるとみました。
 
 家計調査で実質化に使うデフレーターである全国消費者物価指数は、日本銀行が2%の目標に使用している「生鮮食品を除く総合」ではなく、「持家の帰属家賃を除く総合」です。「持家の帰属家賃を除く総合」の前年同月比は1月+2.5%、2月+3.3%、3月+3.1%、4月+2.9%、5月+3.3%、6月+3.3%と推移しています。デフレーターは、6月の家計調査・実質消費支出・前年同月比に関しては5月と変わらず中立要因になります。
 
 関連の消費統計をみると、新車新規登録届出台数(乗用車)の前年同月比は5月▲3.9%から6月は▲6.1%へと2.2ポイント減少率が拡大しました。全国百貨店売上高・前年同月比は5月+14.4%から6月+14.0%へと0.4ポイント鈍化しています。一方、商業販売額指数・小売業の前年同月比は、6月速報値+3.7%で、5月+2.8%から増加率が0.9ポイント改善しています。また、日本チェーンストア協会のスーパー売上高の前年同月比は5月+0.1%から6月+4.7%へと3.6ポイント増加率が高まりました。
 
 景気ウォッチャー調査の家計動向関連の現状水準判断DI・季節調整値は、23年10月50.4、11月49.8、12月50.0、24年1月47.9、2月49.3と推移してきましたが、3月48.3、4月46.2、5月43.8と3カ月連続で低下しました。しかし、6月は46.6まで戻しました。
 
 こうした様々なデータを総合的に判断して予測しました。

※24年6月は筆者予測


6月景気動向指数・速報値・一致CIは4カ月ぶり前月差マイナスを予測。3カ月後方移動平均前月差はプラスだが、7カ月後方移動平均前月差はマイナスか。(8月7日発表)

 6月速報値の一致CIは前月差▲2.8程度の下降と予測します。前月差下降は4カ月ぶりです。
 
 一致系列で、速報値からデータが利用可能な8系列では、商業販売額指数・小売業、輸出数量指数の2系列が前月差寄与度プラスになり、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の6系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。
 
 一致CIの第1系列である鉱工業生産指数・6月速報値・前月比は▲3.6%と、2カ月ぶりの下降となりました。全体15業種すべてが低下という結果になりました。
 
 6月の先行CIは前月差▲2.7程度と2カ月ぶりの下降になると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列では、消費者態度指数、東証株価指数の2系列が前月差寄与度プラスに、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、新設住宅着工床面積 、日経商品指数、マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの7系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。

※24年6月は筆者予測

6月の先行DIは55.6%程度、一致DIは43.8%程度を予測。

 6月の一致DIは43.8%程度と景気判断の分岐点50%を下回る数字になると予測します。6月の一致DIでは、データが利用可能な8列中、耐久消費財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業の3系列がプラス符号に、鉱工業生産財出荷指数1系列が保合いになり、生産指数、投資財出荷指数、有効求人倍率、輸出数量指数の4系列がマイナス符号になると予測します。
 
 6月の先行DIは55.6%程度と景気判断の分岐点の50%を上回ると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列中、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新設住宅着工床面積、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの5系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数 、消費者態度指数、マネーストックの4系列がマイナス符号になるとみました。

8月7日公表の6月速報値では景気の基調判断「下げ止まり」継続か。

 景気動向指数の景気の基調判断が「下げ止まり」から直接「改善」に上方修正されることはできず、「上方への局面変化」を通過しなくてはなりません。「7カ月後方移動平均(前月差)の符号がプラスに変化し、プラス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差分以上、かつ、当月の前月差の符号がプラス」になることが条件です。
 
 6月景気動向指数・速報値での景気の基調判断は2カ月連続「下下止まり」の見込みです。
 
 6月一致CIが予測通りだとすると、前月差がマイナスで、また7カ月後方移動平均前月差も▲0.07程度とマイナスになるため、「上方への局面変化」に上方修正される条件を満たさないためです。
 
 また、6月一致CI が景気後退の可能性が高い「悪化」になることもありません。「悪化」の条件は、「原則として3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が下降、かつ当月の前月差の符号がマイナスになること」です。予測通りだと3カ月後方移動平均の前月差は+0.03程度と3カ月連続でプラスになるからです。

9月6日公表の7月速報値で、景気の基調判断が「上方への局面変化」になる可能性は。

 過去の数字が変わらないと仮定し、7月速報値の一致CIが+7.8の大幅なプラスになると、7カ月後方移動平均前月差3カ月累積プラスが1標準偏差の+0.88を上回る+0.89になり、この場合、景気判断が「上方への局面変化」になりますが、可能性はほぼゼロ%と思われます。
 
 鉱工業生産指数の6月速報値と同時に発表された製造工業生産予測指数の7月前月比は+6.5%で、経産省の先行き試算値最頻値は同+4.0%の見込み、90%の確率に収まる範囲は+2.7%~+5.4%と上昇の見込みです。それなりに高い前月比が期待されますが、「上方への局面変化」に判断が上方修正されるほど、一致CI前月差が大幅プラスになることはないとみられます。
 
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。