12月家計調査・実質消費支出・前年同月比は10カ月連続減少か。12月景気動向指数・一致CIは前月差プラスに転じると予測、景気の基調判断は9カ月連続「改善」継続に。―日本の主要経済指標予測(2024年1月31日)―
12月家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は11月から減少率が拡大し、10カ月連続減少になると予測(2月6日発表)
11月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は前年同月比で▲2.9%と9か月連続の減少になりました。
外出した人が増加したことや物価上昇などによる内食需要の縮小傾向で飲酒代、和食など「外食」が実質・前年同月比+8.6%、温が低下して冬物衣料が伸びた影響などで、婦人服、男子用上着など「洋服」が実質・前年同月比+13.9%、気温低下による暖房需要増の影響などでエアコンなど「家庭用耐久財」が実質前年同月比+11.6%と増加になりました。
一方、外壁・塀等工事費、修繕材料などの「設備修繕・維持」が実質・前年同月比▲27.6%、自動車購入、自動車等部品などの「自動車等関係費」が実質・前年同月比▲7.5%、低廉な料金プランへ移行した人の増加の影響で減少した携帯電話通信料や、SNSの普及などで年賀はがきの需要が落ち込み減少した郵便料など「通信」が実質・前年同月比▲7.1%の減少となりました。
実質・季節調整済み前月比は▲1.0%と2か月連続の減少になりました。ちなみに名目消費支出の前年同月比は+0.3%で4か月連続の増加です。デフレーターの全国消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)は+3.3%でした。
財・サービス別の前年同月比をみると、財は実質・前年同月比▲1.2%と9か月連続の減少。サービスは、実質・前年同月比▲4.6%と3か月ぶりの減少になりました。
12月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は▲4.3%程度と減少率は10月の▲2.9%から拡大し10カ月連続の減少になると予測します。前月比は▲2.8%程度の減少になるとみました。
家計調査で実質化に使うデフレーターである全国消費者物価指数は、日本銀行が2%の目標に使用している「生鮮食品を除く総合」ではなく、「持家の帰属家賃を除く総合」です。「持家の帰属家賃を除く総合」の前年同月比は11月+3.3%、12月+3.0%と推移しています。デフレーターは、12月の家計調査・実質消費支出・前年同月比に関しては11月から0.3ポイントの増加要因になります。
関連の消費統計をみると、11月新車新規登録届出台数(乗用車)の前年同月比は+6.1%で10月の+11.7%から増加率が5.6ポイント縮小しています。日本チェーンストア協会のスーパー売上高の12月の前年同月比は+2.1%と11月+3.7%から1.6ポイント増加率が縮小しました。また、12月全国百貨店売上高・前年同月比は+5.4%で11月+7.4%から2.0ポイント縮小しています。なお、商業販売額指数・小売業の前年同月比は、12月速報値+2.1%で、11月+5.4%から増加率が3.3ポイント縮小しています。
景気ウォッチャー調査の家計動向関連の現状水準判断DI・季節調整値は、23年1月44.2、2月50.2、3月50.1、4月50.7、5月50.7、6月50.0、7月52.8、8月52.7、9月49.6、10月49.2、11月48.2、12月49.2と、7月をピークに緩やかに低下してきましたが、11月をボトムに上昇に転じました。
こうした様々なデータを総合的に判断して予測しました。
1月の景気動向指数・一致CI前月差+1.6程度で2カ月ぶりに前月比上昇の見込み。(2月7日発表)
景気動向指数の基調判断は、4月改定値で景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」に、それまでの景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す「足踏み」から、上方修正されました。その後5月~11月では速報値、改定値とも「改善」になり8カ月連続「改善」となっています。
景気動向指数では、一致CIを使っての基調判断が機械的に行われています。当月の一致CIの前月差が一時的な要因に左右され安定しないため、3カ月後方移動平均と7カ月後方移動平均の前月差を中心に用い、当月の変化方向(前月差の符号)も加味して行われます。基調判断は「改善」「足踏み」「局面変化(上方へのor下方への)」「悪化」「下げ止まり」の5つがあります。
一致CI前月差・11月速報値は▲1.4の下降でした。下降は4カ月ぶりでした。11月改定値で労働投入量が加わりましたが、前月差寄与度▲0.05とマイナスでした。しかし、生産指数の前月差寄与度が速報値の▲0.15から改定値で▲0.13になるなど多くの系列がかいぜんしたことで、11月改定値で先行CI前月差は▲1.3と速報値の▲1.4から僅かに上方修正になりましたが、下降は変わりませんでした。
12月速報値の一致CIは前月差+1.6程度の上昇と予測します。2カ月ぶりの上昇になるでしょう。一致系列で、速報値からデータが利用可能な8系列では、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の6系列が前月差寄与度プラスに、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の2系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。
一致CIの第1系列である鉱工業生産指数・12月速報値・前月比は+1.8%の上昇となりました。全体15業種のうち、汎用・業務用機械工業、化学工業(除く、無機・有機化学工業、医薬品)など12業種が上昇、その他工業など3業種が低下という結果でした。
12月の先行CIは前月差+2.1程度の上昇と予測します。2カ月ぶりの上昇になるでしょう。速報値からデータが利用可能な9系列では、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストックの6系列が前月差寄与度プラスに、日経商品指数、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの3系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。
12月の先行DIは33.3%程度と2カ月連続50%割れ、一致DIは62.5%程度と2カ月ぶり50%超か。
12月の一致DIは62.5%程度と2カ月ぶりに景気判断の分岐点の50%を上回ると予測します。11月の一致DIでは、データが利用可能な8列中、生産指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、輸出数量指数の5系列がプラス符号に、鉱工業生産財出荷指数、商業販売額指数・小売業、有効求人倍率の3系列がマイナス符号になると予測します。
11月の先行DIは33.3%程度と景気判断の分岐点の50%を2カ月連続で下回ると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数 、消費者態度指数の3系列がプラス符号に、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、新設住宅着工床面積、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの6系列がマイナス符号になるとみました。
12月の景気基調判断は「改善」継続だろうが、1月は?
12月の景気の基調判断は9カ月連続で「改善」になると予測します。景気拡張の動きが足踏み状態になって いる可能性が高いことを示す「足踏み」に下方修正されるための条件は、「当月の前月差の符号がマイナス」かつ、「3カ月後方移動平均(前月差)の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差分(1.16)以上」です。一致CIの前月差は+1.6程度の上昇を予想するので、条件を満たしません。また3カ月後方移動平均の前月差が+0.17程度のプラスになると予測されるため、12月では景気の基調判断は「改善」が維持されると思われます。
一致CI採用第1系列の生産指数(鉱工業)の先行きを製造工業予測指数でみると、1月前月比▲6.2%の低下の見込みです。なお、過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、1月分の前月比は先行き試算値最頻値で ▲10.5%の低下になる見込みです。90%の確率に収まる範囲は ▲12.1%~▲8.8%となっています。1月の生産指数は前月比大幅低下になると予測されます。
生産関連の指数がかなり弱そうなので、3月8日発表予定の1月の景気動向指数の景気の基調判断が「足踏み」に下振れとなる可能性があります。
生産指数からみて、1月の一致CIの前月差はマイナスになる可能性が大きそうです。12月までが予測どおりで過去も不変だとすると、1月の前月差が▲3.5のマイナスになると、一致CIの3カ月後方移動平均(前月差)の3パターンで一番大きなマイナス幅は3カ月累積が▲1.17程度で、マイナス幅が振幅目安の標準偏差▲1.16以上になります。
1月の景気動向指数の景気の基調判断が、景気の基調判断が「足踏み」に下振れとなってしまうか、「改善」が継続されるか、「足踏み」に下方修正となるか、注目されるところです。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。