8月景気動向指数・一致CIは2カ月ぶり前月差下降。基調判断は「下げ止まり」継続か。8月家計調査・実質消費支出・前年同月比は2カ月ぶりの減少か。―日本の主要経済指標予測(2024年10月1日)―
8月景気動向指数・速報値・先行CIとも一致CIは、ともに2カ月ぶり前月差下降を予測。(10月7日発表)
8月速報値の一致CIは前月差▲3.5程度の下降と予測します。前月差下降は2カ月ぶりです。
一致系列で、速報値からデータが利用可能な8系列では、商業販売額指数・小売業の1系列が前月差寄与度プラスになり、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の7系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。
一致CIの第1系列である鉱工業生産指数・8月速報値・前月比は▲3.8%と、2カ月ぶりの低下となりました。全体15業種のうち、自動車工業など3業種が低下した一方、輸送機械工業(除.自動車工業)、電子部品・デバイス工業など12業種は上昇という結果になりました。
8月の先行CIは前月差▲2.6程度と2カ月ぶりの下降になると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列では、新規求人数1系列が前月差寄与度プラスに、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新設住宅着工床面積、消費者態度指数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの8系列が前月差寄与度マイナスになると予測します。
8月景気動向指数、先行DIは22.2%程度、一致DIは18.8%程度を予測。
8月の一致DIは18.8%程度と景気判断の分岐点の50.0%を下回ると予測します。7月の一致DIでは、データが利用可能な8列中、輸出数量指数1系列がプラス符号に、商業販売額指数・小売業1系列が保合いに、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の6系列がマイナス符号になると予測します。
8月の先行DIは22.2%程度と景気判断の分岐点の50%を下回ると予測します。速報値からデータが利用可能な9系列中、新規求人数、東証株価指数の2系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル) 、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新設住宅着工床面積、日経商品指数、消費者態度指数、マネーストック、中小企業売上げ見通しDIの7系列がマイナス符号になるとみました。
10月7日公表の8月速報値では景気の基調判断「下げ止まり」継続か。
景気動向指数の景気の基調判断が「下げ止まり」から直接「改善」に上方修正されることはできず、「上方への局面変化」を通過しなくてはなりません。「上方への局面変化」は「7カ月後方移動平均(前月差)の符号がプラスに変化し、プラス幅(1カ月、2カ月または3カ月の累積)が1標準偏差分以上、かつ、当月の前月差の符号がプラス」になることが条件です。
8月景気動向指数・速報値での景気の基調判断は4カ月連続「下げ止まり」の見込みです。
8月一致CIが予測通り▲3.5だとすると、前月差はマイナスで、かつ7カ月後方移動平均前月差も0.11程度と2カ月連続プラスにはなりますが2カ月の累積が0.30程度にとどまり、「上方への局面変化」に上方修正される条件を満たしません。
また、8月一致CI が景気後退の可能性が高い「悪化」になることもありません。「悪化」の条件は、「原則として3カ月以上連続して3カ月後方移動平均が下降、かつ当月の前月差の符号がマイナスになること」です。予測通りだと前月差の符号がマイナスになり、3カ月後方移動平均の前月差は▲1.27程度とマイナスになりますが、7月の3カ月後方移動平均の前月差がプラスだったので、3カ月以上連続してマイナスという条件を満たさないからです。
11月8日公表の9月速報値で、景気の基調判断が「上方への局面変化」になる条件は。
過去の数字が変わらないと仮定し、9月速報値の一致CIの前月差が+2.8のプラスになると、7カ月後方移動平均前月差3カ月累積プラスが1標準偏差の+0.88を上回り、この場合に景気判断が「上方への局面変化」になります。
なお、鉱工業生産指数の8月速報値と同時に発表された製造工業生産予測指数の9月前月比は+2.0%で、経産省の先行き試算値最頻値は同+0.3%の見込み、90%の確率に収まる範囲は▲0.9%~+1.4%の見込みです。これらをみると、「上方への局面変化」に判断が上方修正される条件である一致CI前月差が+2.8以上になることは微妙な状況です。
一方、「悪化」になる可能性ですが、一致CI前月差がマイナスになっても、3カ月後方移動平均の前月差が7月でプラスに戻っているので3カ月以上連続してマイナスという条件を、まだ満たさないからです。9月で景気判断が、景気後退の可能性が高い「悪化」になる可能性はないと思われます。
8月家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は▲1.3%程度と7月の増加から減少に転じると予測。(10月8日発表)
7月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は前年同月比+0.1%と3か月ぶりの増加になりました。
設備器具、外壁・塀等工事費などの「設備修繕・維持」は実質・前年同月比+34.6%増加しました。テレビ需要の増加などで、テレビ、パソコンなど「教養娯楽用耐久財」は実質・前年同月比+64.4%増加しました。また、国内パック旅行費などの「教養娯楽サービス」は実質・前年同月比+4.5%増加しました。
一方、今年以降、自動二輪車の国内需要の減少傾向の影響などで、自動車以外の輸送機器購入、自動車等部品などの「自動車等関係費」が実質・前年同月比▲7.2%の減少になりました。電気・ガス価格激変緩和対策事業の終了の影響などで、「電気代」は実質・前年同月比▲6.2%の減少になりました。コロナ禍を機に、葬儀や結婚式などが簡素化している影響などで、贈与金などの「交際費」は実質・前年同月比▲5.7%減少しました。
実質・季節調整済み前月比は▲1.7%と2か月ぶりの減少になりました。デフレーターの全国消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)の前年同月比は+3.2%になりました。
財・サービス別の前年同月比をみると、財は実質・前年同月比▲2.0%と17カ月連続の減少。サービスは、実質・前年同月比+3.3%と3カ月ぶりの増加になりました。
8月の家計調査・二人以上世帯・実質消費支出の前年同月比は▲1.3%程度と7月の+0.1%の増加から減少に転じると予測します。前月比は+1.9%程度と2カ月ぶりの増加になるとみました。
家計調査で実質化に使うデフレーターである全国消費者物価指数は、日本銀行が2%の目標に使用している「生鮮食品を除く総合」ではなく、「持家の帰属家賃を除く総合」です。「持家の帰属家賃を除く総合」の前年同月比は1月+2.5%、2月+3.3%、3月+3.1%、4月+2.9%、5月+3.3%、6月+3.3%、7月+3.2%、8月+3.5%と推移しています。デフレーターは、8月の家計調査・実質消費支出・前年同月比に関しては7月から減少要因になります。
関連の消費統計をみると、新車新規登録届出台数(乗用車)の前年同月比は7月+5.5%から8月は▲3.2%へと8.7ポイント悪化しました。前月比は▲2.7%です。また、全国百貨店売上高・前年同月比は7月+5.5%から8月+3.9%へと1.6ポイント鈍化しています。一方、日本チェーンストア協会のスーパー売上高の前年同月比は7月▲1.0%の減少から8月+3.8%の増加に転じ、4.8ポイント改善しました。商業販売額指数・小売業の前年同月比は、8月速報値+2.8%で、7月+2.7%から増加率が0.1ポイント改善しています。
景気ウォッチャー調査の家計動向関連の現状水準判断DI・季節調整値は、23年10月50.4、11月49.8、12月50.0、24年1月47.9、2月49.3と推移してきましたが、3月48.3、4月46.2、5月43.8と3カ月連続で低下したあと、6月46.6、7月は45.9、8月47.5と一進一退で推移しています。
こうした様々なデータを総合的に判断して予測しました。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。